- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- インフォマートは反発の動き、21年12月期減益予想だが保守的
インフォマートは反発の動き、21年12月期減益予想だが保守的
- 2021/3/19 08:13
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)は国内最大級の企業間電子商取引プラットフォームを運営している。利用企業数は増加基調で、電子契約やDXの流れも追い風となる。21年12月期は先行投資負担で減益予想としているが保守的だろう。上振れを期待したい。なお3月18日に三井物産との協業で中国のフードテック企業と資本業務提携したと発表している。成長市場である中国外食産業での事業展開を推進する方針だ。中期的にも収益拡大を期待したい。株価は反発の動きを強めている。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォームを運営
企業間の商行為を電子化するBtoBプラットフォームとして、受発注(従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム)、規格書(食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール)、請求書(請求書発行・受取業務を電子化したシステム)、商談(全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト)、契約書(契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステム)を運営している。
20年12月期の売上構成比はBtoB-PF FOOD事業(受発注、規格書)が76%、BtoB-PF ES事業(商談、請求書、契約書)が24%、その他が1%、営業利益構成比はBtoB-PF FOOD事業が183%、BtoB-PF ES事業が▲83%、その他が▲0%だった。
飲食店と食材卸・メーカー間のBtoB受発注を主力として、全業界を対象とするBtoB請求書も拡大している。新サービスとして、19年10月に食材自動発注、20年1月に電子請求書早払い、20年3月に他業界向け受発注をリリースした。
なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年7月には飲食店向け発注予測クラウドサービスのGoalsに出資している。
■利用企業数は増加基調
売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数の増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調であり、継続利用率も高い。20年12月末の全体の利用企業数は52万2576社、事業所数は103万2672事業所、流通金額(20年1月~12月)は12兆7295億円だった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
20年12月には、BtoBプラットフォーム請求書の利用企業数が、サービス開始(15年1月)から5年で50万社を突破した。23年から導入される適格請求書保存方式(インボイス制度)も背景として電子請求書のニーズが拡大基調である。
■営業利益率30%以上目標
中期業績目標には売上高100億円突破、営業利益30億円超、営業利益率30%以上を掲げている。BtoBプラットフォームの徹底的拡充・価値増大に取り組む。
さらに将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組む方針だ。
■アライアンスを推進
20年8月には電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始すると発表した。23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。
20年9月にはGINKANと協業開始した。飲食業界のマーケティング支援から業務管理までのDXを目指す。20年10月には全国の地方銀行21行とのビジネスマッチング契約を拡大した。20年12月には、SCSK<9719>と経理部門の請求書電子データ化やテレワーク導入支援を目的として販売代理店契約を締結した。またブラザー販売とシステム連携した。食品表示ラベル作成で外食産業や中食産業の新たな販路開拓(デリバリー、テイクアウト、通信販売等)を支援する。
21年1月にはダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を締結した。BtoBプラットフォーム請求書を全国規模で展開する。21年2月には、食品卸企業向け受発注・販促サービスを提供するタノムと資本業務提携した。食品卸・飲食業界の受発注業務のDXを推進する。また自治体向けクラウドシステムを手掛けるGcomホールディングスと協業開始した。
3月18日には、三井物産との協業で共同出資の特別目的会社I&Mを設立して、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携したと発表している。成長市場である中国外食産業での事業展開を推進する方針だ。
■21年12月期減益予想だが保守的
21年12月期連結業績予想は売上高が20年12月期比8.7%増の95億40百万円、営業利益が52.4%減の7億円、経常利益が57.1%減の6億25百万円、当期純利益が58.1%減の4億25百万円としている。配当予想は2円77銭減配の94銭(第2四半期末47銭、期末47銭)としている。
売上面では、BtoB-PF ES事業(計画28.8%増収)がDXの流れも背景として大幅伸長見込みだが、BtoB-PF FOOD事業(計画1.4%増収)は新型コロナウイルスによるマイナス影響が当面続くと想定している。コスト面では先行投資でデータセンター費や人件費が増加するため、各利益とも減益見込みとしている。
ただし保守的だろう。売上が回復基調であり、上振れを期待したい。さらに電子契約やDXの流れも追い風として中期的にも収益拡大を期待したい。
■株価は反発の動き
株価は戻り高値圏から反落したが素早く反発の動きを強めている。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。3月18日の終値は984円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS1円86銭で算出)は約529倍、今期予想配当利回り(会社予想の94銭で算出)は約0.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円41銭で算出)は約20倍、時価総額は約2553億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)