- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- JSPは上値試す、需要回復基調で22年3月期収益拡大期待
JSPは上値試す、需要回復基調で22年3月期収益拡大期待
- 2021/3/31 08:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなど高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響で減収減益予想だが、自動車部品用ピーブロックを中心に需要回復基調であり、22年3月期の収益拡大を期待したい。株価は戻り一服の形だが、低PBRも見直し材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■発泡プラスチック製品の大手
発泡プラスチック製品の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業35%、ビーズ事業60%、その他5%、営業利益構成比(連結調整前)は押出事業37%、ビーズ事業61%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
なお20年11月に、欧州のグループ会社における資金流出事案(発生時期20年10月下旬から11月上旬)を発表した。流出した資金の保全・回収手続に全力を尽くすが、損失見込額は最大約10億円としている。また20年12月には、米国子会社JSP International Groupの電子線架橋ポリエチレンシート事業について、需要拡大が見込めず生産効率改善も進展しないため、撤退して会社清算(21年6月末予定)すると発表した。
■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進
長期ビジョン「VISION2027」で、目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げ、成長戦略を推進している。
基本方針は、差異化戦略(押出事業のスチレンペーパー、ミラボード、FPD関連保護材ミラマットエース、高断熱材ミラフォーム、ビーズ事業のピーブロック、エレンボールNEOなど)の推進、成長戦略(4つの成長エンジン=自動車部品、建築住宅断熱材、FPD関連保護材、新たな事業領域)の推進、人材育成やコーポレートガバナンス強化など経営基盤の強化としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのシートコア材などへの採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
新製品ではミラフォーム畳(衝撃緩和型畳床)「ふわり」を発売し、デンカ<4061>と共同開発した建築構造物向け軽量・不燃ボード「スチロセメン」の早期製品化を目指している。
また道路擁壁として多くの実績を積み上げている「J-ウォールブロック」は、NETIS(新技術情報提供システム)に登録された。サステナビリティ経営では、欧州の自動車メーカーからリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。
■21年3月期営業利益は4回目の上振れの可能性
21年3月期の連結業績予想(7月31日に売上高を下方修正、営業利益を上方修正、12月14日に売上高を据え置き、営業・経常利益を上方修正、純利益を特別損失計上で下方修正、1月29日に売上高・利益とも上方修正)は、売上高が20年3月期比10.7%減の1013億円、営業利益が9.5%減の46億円、経常利益が9.8%減の47億円、当期純利益が67.0%減の12億円としている。配当予想は20年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)である。
第3四半期累計は売上高が前年同期比11.0%減の761億45百万円、営業利益が6.3%減の40億38百万円、経常利益が4.9%減の41億52百万円、四半期純利益が7.5%減の30億58百万円だった。
累計ベースでは全体として減収減益だった。新型コロナウイルスによる世界経済収縮の影響で、ビーズ事業の自動車分野を中心に需要が減少した。押出事業は産業資材の汎用製品などの需要減少で4.4%減収だが、生産合理化による固定費削減効果で21.6%増益だった。ビーズ事業は自動車メーカーにおける工場稼働停止などの影響で14.4%減収、21.0%減益だった。
ただし四半期別に見ると、第1四半期は売上高248億15百万円で営業利益9億16百万円、第2四半期は売上高232億65百万円で営業利益3億68百万円だったが、第3四半期は売上高280億65百万円で営業利益27億54百万円だった。第3四半期に、欧州や中国の自動車向けピーブロックの需要が想定以上に拡大し、国内でもFPD保護材用途などが好調に推移した。
修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.2%、営業利益が87.8%、経常利益が88.3%、純利益が254.8%である。第4四半期に特別損失(欧州のグループ会社における資金流出事案に関する最大損失見込額10億円、米国子会社の電子線架橋ポリエチレンシート事業撤退・会社清算に伴う子会社整理損の概算見積額13億50百万円)を計上する見込みだが、上振れ余地がありそうだ。さらに自動車部品用ピーブロックを中心に需要回復基調であり、22年3月期の収益拡大を期待したい。
なお韓国のグループ会社KOSPAの陰城工場において、3月23日に火災が発生したが、人的被害は無かった。業績への影響は調査中としている。
■株価は上値試す
株価は戻り一服の形となったが、低PBRも見直し材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。3月30日の終値は1921円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円26銭で算出)は約48倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2729円87銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約603億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)