ヤマシタヘルスケアホールディングスは20年1月高値を目指す、21年5月期大幅増益・増配予想

 ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東1)は、九州を地盤とする医療機器専門商社を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。21年5月期は第3四半期累計が大幅増益となり、通期も従来の大幅減益予想から一転して大幅増益予想とした。配当予想も大幅増配予想とした。通期利益予想に再上振れの可能性があり、22年5月期も収益拡大を期待したい。株価は上方修正を好感して急伸している。目先的には過熱感だが、自律調整を交えながら20年1月の上場来高値を目指す展開を期待したい。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 山下医科器械が17年12月1日付で純粋持株会社ヤマシタヘルスケアホールディングスを新設した。九州を地盤とする医療機器専門商社を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。

 グループの事業会社は4社で構成されている。山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、および医療モールを展開している。トムスは透析分野を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、イーピーメディックは整形外科用インプラントの製造販売、アシスト・メディコ(19年12月設立)は医療機関の経営コンサルティングを展開している。なお山下医科器械は経済産業省から2020年度地域未来牽引企業(長崎県)の選定を受けた。

 20年5月期のセグメント別売上構成比は医療機器販売業が99%、医療機器製造・販売業が1%、医療モール事業が0%、営業利益構成比(調整前)は医療機器販売業が95%、医療機器製造・販売業が4%、医療モール事業が1%だった。医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い特性がある。

 なお17年9月に光通信<9435>と資本業務提携し、光通信の九州地区における医科向け「EPARK」事業を共同展開している。

■ヘルスケア領域でのグループ収益力向上を推進

 中期経営計画では、基本方針を「継続的な収益構造の確立に向けた事業会社の構造改革、および企業買収等によるヘルスケア領域でのグループ力向上を図る」として、目標値に21年5月期売上高605億円、営業利益5億30百万円、経常利益6億円を掲げている。

 医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。

 また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始した。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始した。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。

 財務面では株主資本利益率(ROE)10%、自己資本比率30%以上維持、配当性向30%を目標として掲げている。

■21年5月期は一転して大幅増益・増配予想、さらに再上振れの可能性

 21年5月期の連結業績予想は3月30日に上方修正して、売上高が20年5月期比1.0%増の653億06百万円、営業利益が30.4%増の7億31百万円、経常利益が22.9%増の7億89百万円、当期純利益が10.3%増の5億06百万円とした。配当予想も3月30日に期末27円上方修正して、20年5月期比14円増配の68円(期末一括=普通配当58円+創業95周年記念配当10円)とした。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比3.8%増の497億83百万円、営業利益が48.6%増の6億76百万円、経常利益が38.7%増の7億24百万円、四半期純利益が24.7%増の4億96百万円だった。期前半は新型コロナウイルスの影響(取引先医療機関における外来患者数の減少、手術・検査・処置症例の減少、商談遅延・見送り)を受けたが、後半に入って需要が回復基調となり、広告宣伝費や旅費交通費の減少なども寄与して大幅増益に転じた。

 医療機器販売業は3.8%増収(一般機器分野が8.3%増収、一般消耗品分野が3.9%増収、低侵襲治療分野が1.8%減収、専門分野が4.6%増収、情報・サービス分野が10.0%増収だった。低侵襲治療分野は内視鏡備品やサージカル備品が減少したが、一般機器分野は手術室関連機器や超音波診断装置などが増加した。医療機器製造・販売業(整形外科用インプラント)は18.7%増収、医療モール事業(賃貸収入)は5.6%減収だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高155億28百万円で営業利益66百万円、第2四半期は売上高169億74百万円で営業利益3億61百万円、第3四半期は売上高172億81百万円で営業利益2億49百万円だった。医療機関の設備投資関連のため、第2四半期および第4四半期の構成比が高い特性がある。

 期後半に入って需要が回復基調となり、第3四半期累計が大幅増益となったため、通期予想を上方修正し、従来の大幅減益予想から一転して大幅増益予想とした。なお修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が76.2%、営業利益が92.5%、経常利益が91.8%、純利益が98.0%となる。第4四半期の構成比が高い特性も考慮すれば、通期利益予想に再上振れの可能性がありそうだ。さらに22年5月期も収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は5月末の株主対象

 株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は20年1月高値を目指す

 株価は上方修正を好感して急伸している。目先的には過熱感だが、指標面は依然として割安感の強い水準であり、自律調整を交えながら20年1月の上場来高値を目指す展開を期待したい。4月7日の終値は2195円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS198円59銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の68円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2717円81銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約56億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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