【株式評論家の視点】トクヤマは底打ち確認から反発歩調、無配だが低PER、中期計画発表に注目

株式評論家の視点

トクヤマ<4043>(東1)は、1918年、山口県徳山町(現在の周南市)で、当時輸入品に依存していたソーダ灰の国産化を目指して設立。日本の化学工業の発展と共に、さまざまな化学製品を製品群に加え、現在では半導体関連製品の情報・電子分野、メガネ関連材料や歯科材料など生活・医療分野、太陽電池用途の多結晶シリコンや資源環境事業の環境・エネルギー分野を主なフィールドとして事業を展開している。

前の期に引き続き「多結晶シリコン事業の再構築」「既存・新規事業 の収益向上」「全社の収益改善」に取り組んだものの、連結子会社である、Tokuyama Malaysia Sdn. Bhd.が営業を開始したことに伴う減価償却費の増加等により、前期は売上高が増加した一方で営業利益と経常利益は減少。 また、Tokuyama Malaysia Sdn. Bhd.に関して、特別損失を計上したことから最終損益は大きく悪化。今期は収益改善計画を着実に遂行することで利益体質へ転換し、更に収益力の強化を図る方針。

前2015年3月期業績実績は、売上高3020億8500万円(前年同期比5.1%増)、営業利益195億3000万円(同3.7%減)、経常利益129億2000万円(同13.7%減)、最終損益653億4900万円の赤字(同102億1800万円の黒字)と赤字に転落。当期純損失計上による純資産の毀損に鑑み、事業リスクを考慮した健全な財務体質への回復を優先すべきと判断し、年間配当は無配(同6円)転落。

今16年3月期予想は、売上高3120億円(前期比3.3%増)、営業利益210億円(同7.5%増)、経常利益140億円(同8.4%増)、最終損益80億円の黒字(同653億4900万円の赤字)と回復を見込む。年間配当については前期と同様の理由から中間、期末とも無配を予定している。

株価は、4月8日につけた年初来の高値303円から5月1日安値262円、5月27日安値263円と売り直されて下値を確認し、上昇している。

5月12日に。ソーダ灰と粒状塩化カルシウムを8月1日出荷分からの値上げ、今月4日には半導体用研磨やシリコーン樹脂補強材などに使われる乾式シリカの価格を7月1日出荷分から値上げすると発表しており、採算改善が見込まれる状況となっている。7月31日前後に予定される第1四半期決算の発表時には中期経営計画が打ち出される見通し。無配予想ながら今期予想PER12倍台・PBR0.60倍と割安感があり、期待先行ながら水準訂正が続きそうだ。(株式評論家・信濃川)

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