【鈴木雅光の投信Now】日本に投資する外貨コースのファンドは買いか?

近頃、この手の投資信託が増えてきています。投資対象は日本株、日本のリートなど国内市場なのに、なぜか米ドルなど外貨建てのコースが設けられており、それが結構な人気を博しているのです。

たとえば、5月に新規設定された投資信託のなかで最も設定額が大きかったのは、野村アセットマネジメントが設定・運用している「野村日本企業価値向上オープン(米ドル投資型)」の778億6000万円でした。

この他にも、三菱UFJ投信が設定・運用している「三菱UFJ Jリート不動産株ファンド<米ドル投資型>」(設定額は55億4100万円)、前出の野村アセットマネジメントが設定・運用している「野村サービス関連株ファンド(米ドル)」(設定額は16億2200万円)などもあります。

いずれも日本株、あるいは日本の不動産投資信託を組み入れて運用する投資信託であるにも関わらず、為替デリバティブ取引を噛ませることにより、米ドルの値動きなどを収益化しようというものです。この仕組みによって、米ドルの短期金利が日本の短期金利よりも高い場合、金利差相当分がプレミアムとして収益に加算され、かつ為替が円安に進んだ場合、為替差益が得られます。

一件、有利な運用が期待できるように見えるのですが、これは錯覚といっても良いでしょう。

まず、国内金利が海外金利よりも低い場合、外貨に投資すれば金利差が得られるという説明がなされますが、この金利差は原則、為替の値動きによって相殺されるのが普通です。つまり米ドルの金利が、円金利に比べて1%高かったとしても、どこかの時点でドル円レートは、1%分円高になり、金利差は為替変動によって調整されるのです。もちろん、短期的に見れば、別の要因でドルが買われ、為替差益が実現することもありますが、それはたまたまの話です。

つまり、この手の外貨コースで日本株に投資するというのは、極めてナンセンスといっても良いでしょう。日本のマーケットに投資するのであれば、下手な小細工のない、あくまでも円建ての投資信託を活用するべきなのです。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る