シナネンホールディングスは調整一巡、22年3月期収益拡大期待

 シナネンホールディングス<8132>(東1)は脱炭素社会を見据えて、グローバル総合エネルギーサービス企業グループを目指している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響などを考慮して減益予想としているが、エネルギー事業の原価改善などで通期上振れ余地がありそうだ。さらに22年3月期の収益拡大を期待したい。株価は戻り高値圏から反落して高値圏ボックスレンジを形成する形となったが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。なお5月14日に21年3月期決算発表を予定している。

■グローバル総合エネルギーサービス企業グループ

 脱炭素社会の実現を見据えて、グローバル総合エネルギーサービス企業グループを目指している。事業区分は、エネルギー関連のエネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)を主力として、非エネルギーおよび海外事業も展開している。

 20年3月期セグメント別(調整前)売上構成比はBtoC事業が29%、BtoB事業が65%、非エネルギーおよび海外事業が6%、営業利益構成比はBtoC事業が50%、BtoB事業が53%、非エネルギーおよび海外事業が▲3%だった。

 BtoC事業は、家庭向け・小売事業者向けLPガスなど各種燃料販売事業、リフォーム・ガス器具販売などの家庭向けエネルギー周辺事業、家庭向け電力販売事業、都市ガス供給事業、LPガス保安および配送事業を行っている。

 BtoB事業は、大口需要家向け石油製品など各種燃料販売事業、ガソリンスタンド運営事業、電源開発および法人向け電力販売事業、太陽光発電システム販売および周辺サービス事業、省エネソリューション事業、住宅関連設備事業、国内外での再生可能エネルギー事業を行っている。

 4月5日には再生可能エネルギー導入・調達ソリューションのクリーンエナジーコネクトと提携し、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)に依存しない非FITの太陽光発電所を活用したバーチャルコーポレートPPA(電力購入契約)による新たなビジネスモデル展開を共同構築すると発表した。PPAは企業が太陽光や風力などの電力を発電事業者から直接、長期に購入する契約で、次の再生可能エネルギー調達手段として注目されている。

 非エネルギーおよび海外事業は、抗菌事業(抗菌性ゼオライトなどの製造・販売)、環境・リサイクル事業(木質系チップなどの製造・販売)、自転車の自社小売店舗「ダイシャリン」事業、シェアサイクル「ダイチャリ」事業、コンピュータシステムのサービス事業、建物維持管理事業、バイオマス事業を行っている。韓国での大型風力発電事業は21年度下期中の商業運転開始を目指している。

 シェアサイクル「ダイチャリ」事業は首都圏を中心に展開し、21年3月期第3四半期末時点でステーション数が1500ヶ所、電動アシスト自転車数が7,300台を超えて国内有数の規模となっている。また21年3月期第3四半期の利用ユーザー数が前年同期比2.0倍の22.4万人、利用回数が94.2%増の90.9万回と大幅伸長し、第3の交通インフラとして定着傾向を強めている。

 20年10月には小田急グループの取り組みとして、世田谷エリアの駅周辺にMaaSの実現に向けた実証実験を開始した。またOMGホールディングスのグループ会社Opus.netと連携した。ヘルスケア・ビューティケア関連店舗へのシェアサイクル導入を推進する。20年12月にはUR都市機構との連携地域を拡大し、東京都板橋区および荒川区のUR賃貸住宅にステーションを設置した。21年2月には埼玉県新座市でシェアリサイクル実証実験を開始した。

 4月13日には、埼玉県ふじみ野市と「シェアサイクル事業の実証実験に関する基本協定」を締結し、5月中旬からシェアサイクル事業の実証実験を開始すると発表した。

■資本効率改善を推進

 第2次中期経営計画(20年度~22年度)は、第3次中期経営計画(23年度~25年度)の躍進に向けた基盤整備と位置付けて、定性目標に資本効率の改善、持続的成長を実現する投資の実行、社員の考え方・慣習・行動様式の変革を掲げている。

 資本効率・財務体質の改善では、既存事業の効率化と利益率向上、遊休・低稼働資産の有効活用または売却、資本効率の低い事業の撤退・売却と資本効率の高い事業への集中を推進する。なお21年3月期第4四半期に低稼働資産の売却を実行(特別利益に固定資産売却益および交換益21億円を計上予定)する。譲渡会社によるオフィス棟・マンション棟の建築後に当該オフィス棟を譲渡会社から譲り受ける予定だ。

 持続的成長を実現する投資の実行では、既存事業の収益基盤強化のためのM&Aおよび建物維持管理事業におけるM&Aの実行、シェアサイクル事業・再生可能エネルギー事業・新規事業への戦略投資の実行、事業多様化や環境変化に値旺した基幹システムの整備・高度化およびDX(デジタルトランスフォーメーション)のためのIT投資を推進する。20年10月にはDX推進に向けて、インターネットイニシアティブ(IIJ)のデジタルワークプレース(DWP)を実現する各種サービスを採用して次世代IT基盤を構築した。

 定量目標「持続的にROE6.0%以上」を生み出す事業構造確立を目指し、エネルギー関連事業ではM&Aによる顧客基盤とシェアの拡大、新規商材による顧客層の拡大と深耕などで経営基盤を強化し、非エネルギーおよび海外事業では個々の事業環境や特性に対応した成長戦略を推進する。そして既存事業の安定的成長と新規事業開発による高収益化を図る方針だ。なお株主還元は配当を基本として、配当性向30%以上を目安に安定的に配当する方針としている。

■21年3月期減益予想だが上振れ余地、22年3月期収益拡大期待

 21年3月期の連結業績予想は、売上高が20年3月期比4.7%減の2260億円、営業利益が10.4%減の22億円、経常利益が18.3%減の18億円、親会社株主帰属当期純利益が49.8%減の15億円としている。配当予想は20年3月期と同額の75円(期末一括)である。

 市況影響で減収、新規事業に係る先行投資(国内外の再生エネルギー事業、シェアサイクル事業など)や、IT関連投資の影響などで減益予想としている。なお第4四半期の特別利益に固定資産売却益および交換益21億円を計上予定である。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比11.8%減の1389億69百万円、営業利益が4.7倍の16億15百万円、経常利益が2.5倍の16億86百万円、四半期純利益が前期計上の事業譲渡益および段階取得に係る差益の剥落で1.7%減の7億54百万円だった。

 売上面ではBtoC事業が15.5%減収、BtoB事業が13.2%減収、非エネルギーおよび海外事業が16.4%増収だった。原油価格・プロパンCP価格下落による販売価格下落でBtoC事業とBtoB事業は減収だったが、非エネルギー事業でシェアサイクル事業がシェアサイクルサービス「ダイチャリ」の拠店拡大、抗菌事業が北米マスク向け抗菌剤の受注拡大で、いずれも大幅伸長した。

 営業利益は、BtoC事業の赤字幅が縮小(前年同期は2億17百万円の赤字、今期は24百万円の赤字)した。東日本エリアを中心に差益改善した。BtoB事業は4.8倍の7億67百万円だった。原油市況変動に対応した仕入施策による石油類の差益確保、電源構成最適化による電力事業の差益確保を推進した。非エネルギーおよび海外事業は黒字転換(前年同期は1億71百万円の赤字、今期は2億36百万円の黒字)した。抗菌事業の大幅増益に加えて、自転車事業、システム事業なども堅調だった。その他(調整額)では東京都港区の旧本社ビル賃貸開始が寄与した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高392億67百万円で営業利益8億09百万円、第2四半期は売上高405億22百万円で営業利益1億59百万円、第3四半期は売上高591億80百万円で営業利益6億47百万円だった。

 通期は新型コロナウイルスの影響や卸電力市場取引価格高騰の影響などを考慮して減益予想だが、第3四半期累計の進捗率は営業利益73.4%、経常利益93.7%と順調だった。エネルギー事業は下期が需要期であり、原価率改善効果などで通期上振れ余地がありそうだ。さらに22年3月期の収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は戻り高値圏から反落して高値圏ボックスレンジを形成する形となったが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。4月15日の終値は2924円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS137円92銭で算出)は約21倍、前期推定配当利回り(会社予想の75円で算出)は約2.6%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS4425円87銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約381億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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