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加賀電子は切り返しの動き、22年3月期収益拡大期待
- 2021/4/19 07:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
加賀電子<8154>(東1)は独立系の大手エレクトロニクス商社である。M&Aも積極活用して規模拡大と高収益化を推進している。また4月1日にはSDGs委員会を設置した。グループ全体でサステナビリティ経営を推進する。21年3月期は営業・経常減益予想だが、需要が回復基調であり、3回目の上方修正の可能性が高いだろう。さらに22年3月期の収益拡大を期待したい。株価は3月の年初来高値圏から反落したが切り返しの動きを強めている。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■独立系の大手エレクトロニクス商社
独立系の大手エレクトロニクス商社で、半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。
富士通エレクトロニクスを19年1月に子会社化(富士通セミコンダクターから株式70%取得、20年12月28日付で社名を加賀FEIに変更)した。さらに20年12月に15%、21年12月に15%を段階的に追加取得して、22年1月に完全子会社化予定である。
20年3月期のセグメント別売上高構成比は、電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)85%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)10%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)1%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)4%、営業利益(調整前)構成比は電子部品事業76%、情報機器事業17%、ソフトウェア事業2%、その他事業5%だった。
■商社ビジネスとEMSビジネスのシナジーで収益性向上目指す
中期経営計画2021では、基本方針に収益基盤強化、経営基盤安定化、新規事業創出、経営目標値に22年3月期(為替前提1米ドル=110円)の売上高5000億円、営業利益130億円、ROE8%以上を掲げている。株主還元は連結配当性向25~35%を確保しつつ安定的な配当を実施する方針だ。
なお中計に沿ったセグメント区分を電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他事業)とする。20年3月期の売上構成比は電子部品事業66%、EMS事業21%、CSI事業10%、その他事業3%となる。22年3月期目標売上高5000億円の構成比は電子部品60%、EMS28%、CSI10%、その他2%としている。
加賀FEI(旧:富士通エレクトロニクス)を子会社化し、商材の拡大や顧客基盤の共有によって、電子部品事業における業界NO.1規模を目指している。現状は加賀FEIの利益水準が低いため、短期的な目標は商社ビジネスの量的拡大だが、中期的な目標として、商社ビジネスとEMSビジネスのシナジーによる収益性向上(利益額の拡大と利益率の向上)を目指す。
収益基盤強化では、成長分野(車載、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への取り組み、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大を推進する。経営基盤安定化では、加賀EFIをグループ化した後の効率性および財務健全性の早期改善に向けて、グループ横断的なコスト削減、組織体制整備によるグループ経営効率化、コーポレートガバナンス強化を推進する。新規事業創出ではM&Aも積極活用して、保育・福祉・介護等の社会課題ビジネスや素材ビジネスへの取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションを推進する。
EMSビジネスでは18年以降に稼働した新拠点のメキシコ、ベトナム、トルコ、インド、福島新工場、タイ第2工場が順次、収益寄与している。20年12月には中国内陸部におけるEMS事業の生産能力強化に向けて、湖北省孝感市に新工場(湖北加賀電子有限公司孝感工場)を竣工した。今後は車載、産業機械、空調、医療・ヘルスケア分野を成長ドライバーとして事業拡大を推進する。
さらに「グローバル競争に勝ち残る企業」を目指してM&A戦略を加速している。19年10月パイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月エレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月旭東電気(20年4月民事再生法適用申請)から新設分割された新:旭東電気を子会社化した。
ベンチャー投資としては、ウェアラブルコミュニケーションデバイス開発のBONX、前立腺癌生検および治療用システム開発の米HARMONUS、スマートセキュリティサービスのSecual、ソフトバンクグループで保育クラウドサービスを展開するhugmo、AIソフトウェア開発のハカルス、次世代蓄電デバイス「グリーンキャパシタTM」開発のスペースリンク、動画CM配信プラットフォーム事業やデジタルサイネージ事業のCMerTV、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けたソリューション事業を展開するSun Asteriskなどに出資している。
20年5月にはライブ配信アプリ「17Live」などアジア圏中心にソーシャルメディアを展開する台湾のM17に出資、20年6月には医療機器開発ベンチャーのニューロシューティカルズ(NCI)に出資、20年8月にはシェアリングプラットフォーム「Akice.style」を運営するレンタルサービスベンチャーのピーステックラボ(PTL)に出資した。
20年10月には、独自開発の光触媒技術を活用して各種環境製品を展開するスタートアップ企業のカルテック(子会社化したエクセルがスタートアップ資金を出資)と、光触媒除菌脱臭機「TURNED K」の販売および製造に関わる部品調達で協業した。20年12月には、オンライン診療システム「D―CUBE」などオンライン健康支援事業を展開するリンケージに出資した。
なお21年4月1日付でSDGs委員会を設置した。従前より取り組んできたCSRならびにESGへの対応を深化させ、グループ全体で横断的にサステナビリティ経営を推進する。
■21年3月期は3回目の上方修正の可能性、22年3月期収益拡大期待
21年3月期連結業績予想(期初時点では未定、8月6日公表、11月5日に売上高・営業利益・経常利益を上方修正、2月4日に売上高・各利益を上方修正)は、売上高が20年3月期比6.5%減の4150億円、営業利益が10.1%減の90億円、経常利益が16.1%減の85億円、親会社株主帰属当期純利益が79.4%増の105億円としている。配当予想(2月4日に期末10円上方修正)は20年3月期と同額の70円(第2四半期末30円、期末30円)である。
第3四半期累計は、売上高が前年比13.1%減の2942億66百万円、営業利益が2.8%減の75億17百万円、経常利益が9.3%減の72億30百万円だった。売上総利益率は11.4%で1.0ポイント上昇した。四半期純利益はエクセル買収に伴う負ののれん益79億63百万円を計上して2.6倍の127億28百万円だった。
電子部品事業は16.0%減収で15.6%減益だった。エクセルの新規連結が寄与したが、加賀FEIにおける大口商権(Cypress社代理店契約)の解消、新型コロナウイルス影響によるEMSビジネス需要減少で減収減益だった。情報機器事業は13.9%増収で2.1倍増益だった。テレワークやオンライン教育でPC・PC周辺機器・セキュリティソフトの需要が拡大した。ソフトウェア事業は12.1%増収で12倍増益だった。巣ごもり消費でゲームソフトなどの開発受注が増加した。
中計セグメント別の業績は、電子部品が20.5%減収で43.6%減益、EMSが0.7%減収で12.6%増益、CSIが13.9%増収で2.1倍増益、その他が14.6%減収で68.2%減益だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高841億30百万円で営業利益が16億56百万円、第2四半期は売上高1047億29百万円で営業利益27億78百万円、第3四半期は売上高1054億06百万円で営業利益30億82百万円だった。
第2四半期から需要が回復傾向となり、販売ミックス良化による粗利益率改善も寄与して、第3四半期は前年第3四半期(売上高1081億71百万円で営業利益24億93百万円)に対して営業増益(23.7%増益)に転じた。
通期の連結業績予想は、第3四半期累計が社内計画に対して上振れた分を上乗せして、売上高・各利益を上方修正している。売上高・営業利益・経常利益は2回目の上方修正で、従来予想に比べて営業・経常減益幅が縮小する見込みとしている。
修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.9%、営業利益が83.5%、経常利益が85.1%、純利益が121.2%である。需要が回復基調であり、通期予想は3回目の上方修正の可能性が高いだろう。さらに22年3月期の収益拡大を期待したい。
なお3月19日に米国子会社における資金流出事案(事案発生日21年2月、損失見込額最大約5億円)を公表している。犯罪に巻き込まれた可能性が高いと判断し、流出した資金の保全・回収手続きに全力を尽くすとしている。
■株価は切り返しの動き
株価は3月の年初来高値圏から反落したが切り返しの動きを強めている。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。4月16日の終値は2538円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS382円30銭で算出)は約7倍、前期推定配当利回り(会社予想の70円で算出)は約2.8%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2850円99銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約728億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)