TACは調整一巡感、22年3月期収益拡大期待

 TAC<4319>(東1)は「資格の学校」を運営し、成長戦略として新事業領域への展開も強化している。コロナ収束後の事業環境変化を見据えて、オンライン講座の実施や新たなサービスの提供などに取り組んでいる。出版事業では高等学校商業科教科書を発刊して事業領域を拡大する。21年3月期は資格試験延期や教室講義中止など新型コロナウイルスの影響を受けたが、コスト削減効果で大幅増益予想としている。さらに22年3月期も収益拡大を期待したい。株価は2月の昨年来高値圏から反落したが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。なお5月14日に21年3月期決算発表を予定している。

■「資格の学校」を運営

 財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営している。また法人研修事業、出版事業、人材事業も展開し、成長戦略として新事業領域への展開も強化している。

 20年3月期のセグメント別売上高構成比は、個人教育事業が58%、法人研修事業が22%、出版事業が18%、人材事業が3%だった。

 教育事業の受講者数は3.9%減の20万7118人(個人が3.9%減の12万6000人、法人が3.9%減の8万1118人)だった。

 教育事業の分野別売上構成比は、財務・会計分野が19.1%、経営・税務分野が16.3%、金融・不動産分野が21.1%、法律分野が7.2%、公務員・労務分野が22.8%、情報・国際分野が7.6%、医療・福祉分野が1.2%、その他分野が4.7%だった。財務・会計分野、金融・不動産分野の構成比が上昇し、経営・税務分野、公務員・労務分野の構成比が低下した。

 新型コロナ収束後の事業環境変化を見据えて、オンライン講座の実施、カリキュラムの見直し、新たなサービスの提供などにも取り組んでいる。21年3月には「TACテストセンター」サービス開始を発表した。日本全国の主要都市に直営校舎を持つ強みを生かして、大人数の試験会場になり得る教室や、個人で受験できる個別ブースを試験用として貸し出すとともに、試験を実施するために必要となる総合的なサービスを提供する。

■出版事業も拡大

 出版事業では、既刊の「SPI3の教科書」に加えて、就活書「これさえあれば。」シリーズ全5点を刊行する。

 また検定教科書分野への事業領域拡大に向けて、高等学校商業科で使用する文部科学省検定済教科書(高校1年生で履修する簿記およびビジネス基礎)を発刊する。全国の高等学校での採択の後、22年4月から全国の商業学校で使用される。さらに高校2年生、3年生で使用する会計分野の強化についても、文部科学省への検定申請を行い、ラインナップ拡充を推進する方針だ。

■四半期業績に季節変動要因

 四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。

 また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。

■21年3月期大幅増益予想

 21年3月期連結業績予想は、売上高が20年3月期比0.1%増の203億50百万円、営業利益が4.3倍の6億90百万円、経常利益が2.6倍の6億84百万円、親会社株主帰属当期純利益が4.0倍の4億10百万円としている。配当予想は20年3月期と同額の5円(第2四半期末2円、期末3円)である。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比4.9%減の146億94百万円(前受金調整前の現金ベースは6.2%減の147億90百万円)で、営業利益が3.6%増の5億41百万円、経常利益が13.0%増の7億01百万円、そして四半期純利益が64.6%増の4億77百万円だった。

 個人教育事業および法人研修事業が新型コロナウイルスの影響(大学の休校、各種資格・検定試験の延期・中止、教室での講義の中止、研修の縮小や実施延期・中止など)を受け、全体として減収だった。しかし出版事業の伸長、原価や販管費の抑制、返品調整引当金戻入の計上などで増益だった。営業外収益には助成金収入1億49百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、個人教育事業は7.3%減収で赤字拡大、法人研修事業は10.4%減収で12.5%減益、出版事業は5.1%増収で61.2%増益、人材事業は17.6%減収で47.6%減益だった。教育事業の合計受講者数は1.4%減の17万255人(個人が7.6%減の9万7617人、法人が8.4%増の7万2638人)だった。出版事業では、外出自粛・海外渡航制限で旅行ガイドの売上が減少したが、巣ごもり消費で直販ECサイト利用による書籍購入が増加した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が51億05百万円で営業利益が5億12百万円、第2四半期は売上高が50億39百万円で営業利益が3億94百万円、第3四半期は売上高が45億49百万円で営業利益が3億65百万円の赤字だった。講座申し込みは期前半に集中するが、営業費用は毎月一定額を計上するため、利益は期前半に集中し、下期は赤字となる収益特性がある。

 通期も売上面は新型コロナウイルスの影響を受けたが、講師料、教材制作外注費、賃借料など原価・販管費の削減効果で大幅増益予想としている。さらに22年3月期の収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡感

 株価は2月の昨年来高値圏から反落したが調整一巡感を強めている。週足チャートで見ると26週移動平均線が支持線の形だ。出直りを期待したい。4月19日の終値は253円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS22円16銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の5円で算出)は約2.0%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS295円67銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約47億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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