ファンデリーは急反発の動き、22年3月期収益改善期待

 ファンデリー<3137>(東マ)は健康食宅配サービスを主力として、ヘルスケア総合企業を目指している。21年3月期は赤字予想だが、22年3月期は新事業の冷凍弁当「旬をすぐに」拡販などで収益改善が期待される。さらに健康食宅配市場の拡大も背景として中期成長を期待したい。株価は底固め完了して急反発の動きだ。冷凍弁当のブーム化に加えて、メディアで「旬をすぐに」が取り上げられたことも支援材料となったようだ。基調転換して戻りを試す展開を期待したい。なお4月30日に21年3月期決算発表を予定している。

■健康食宅配サービスが主力

 通販カタログ「ミールタイム」を活用した健康食(冷凍弁当)宅配サービスのMFD(Medical Food Delivery)事業を主力としている。20年3月期事業別売上高構成比はMFD事業89%、マーケティング事業11%だった。

 20年7月に新商品「旬をすぐに」の発売を開始し、21年3月期第2四半期から事業区分を「ミールタイム」のMFD事業、「旬をすぐに」のCID事業、周辺事業のマーケティング事業の3区分に変更した。初の生産拠点となる埼玉工場が稼働し、SPA(製造小売業)モデルへの転換を推進している。

 なお4月1日付で、食や健康に関する新たなWEBサービスの提供や収益源の多様化を推進することを目的として、メディア事業部を新設した。

■健康食通販カタログ「ミールタイム」のMFD事業

 MFD事業は健康食通販カタログ「ミールタイム」を医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から注文を受けて宅配する。従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指していることが特徴だ。管理栄養士・栄養士が顧客の疾病・制限数値・嗜好などに合わせてメニューを選び、定期的に届ける「栄養士おまかせ定期便」も提供している。

 全国の医療機関や調剤薬局など2万ヶ所以上の紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得、専門性の高い栄養士による「ヘルシー食」など多様な健康食の開発やカウンセリングが強みである。

 MFD事業の会員数は、15年3月期末15万2771人、16年3月期末18万2905人、17年3月期末20万3441人、18年3月期末22万1727人、19年3月期末24万4651人、20年3月期末25万9985人と増加基調である。また20年3月期末の定期コース会員数は8318人だった。定期コース売上比率は概ね60%以上、1件あたり購入単価は概ね7000円前後で推移している。

■新商品「旬をすぐに」のCID事業

 20年7月に新商品「旬をすぐに」の発売を開始した。健康な身体はバランスの良い食事からという考えのもと、食の安心・安全にこだわり、国産食材100%であること、健康被害の恐れのある67種類の食品添加物を使用していないこと、食材ごとに異なる最適な加熱温度特許技術で1℃単位のコントロールを行っていること、冷凍工学に基づいた究極の特許冷凍技術で-70℃の瞬間凍結を行っていることなど、従来の冷凍弁当とは一線を画すクオリティを特徴としている。

 管理栄養士が考えた栄養バランスや、特許加熱・冷凍による美味しさが特徴のメニュー構成である。さらに、独自のネットワークを活用して四季ごとの旬の国産食材を使用するため、同じメニューは一度しか作らない「一期一会のメニュー」として、週6種類以上のペースで新メニューを発売している。

 立ち上げが計画に対して遅れたが、拡販や収益性改善に向けた取り組みを推進している。20年12月には大量調理で生じる食品ロスの料理を即時メニュー化して販売する取り組みを開始した。フードロス削減にも貢献する取り組みだ。また最低購入金額の引き下げと購入金額に応じた送料体系への変更を実施した。

 21年1月には新配送体系で最短翌日配達を開始、ワンランク上の美味しさを追求した新ブランドPREMIUMシリーズの販売を開始した。21年3月には「旬をすぐに」の新メニューを発表するYouTubeチャンネル「旬チューバー」がYouTubeパートナープログラムに承認されたと発表した。今後はチャンネルの収益化も可能となる。4月6日には「旬をすぐに」ECサイトリニューアルを実施した。

■周辺領域のマーケティング事業

 マーケティング事業は健康食宅配サービスから派生した周辺事業として、食品メーカーなどへの健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、食品メーカーからの商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などを展開し、収益源の多様化を推進している。

■健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」

 日々の食事において塩分摂取量を適正に保つことの重要性を啓蒙し、日本全体の健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」を開始した。20年4月から3年間の活動を予定している。

 賛同企業として20年6月に、にんべん、エバラ食品工業、はごろもフーズ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、キング醸造、理研ビタミンが加入した。その後も7月には東洋水産、キッコーマン、ハナマルキ、ヤマキ、紀文食品、日清食品、ミツカン、ひかり味噌、神州一味噌、8月にはピエトロ、湖池屋、宝酒造、9月には田中食品、白鶴酒造、シマヤ、日清フーズ、21年3月には雪印メグミルク、21年4月には三幸製菓、くらこん、エースコックが加入し、賛同企業は27社、認定商品は64商品となった。

■23年3月期営業利益20億円目標

 中期経営計画「will2022」では目標値に23年3月期売上高100億円、営業利益20億円、営業利益率20%を掲げている。ヘルスケア総合企業を目指し、新工場稼働によってSPAモデルへの事業構造転換を推進する。

 一人暮らし高齢者の増加、生活習慣病患者や食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場は拡大基調だろう。

■21年3月期赤字予想だが、22年3月期収益改善期待

 21年3月期の業績予想(非連結、10月30日に下方修正)は、売上高が20年3月期比0.1%増の33億50百万円、営業利益が2億95百万円の赤字(20年3月期は5億39百万円の黒字)、経常利益が2億98百万円の赤字(同5億36百万円の黒字)、当期純利益が2億43百万円の赤字(同3億45百万円の黒字)としている。配当予想は20年3月期と同額の3円(期末一括)としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比8.6%減の23億36百万円、営業利益が1億21百万円の赤字(前年同期は4億38百万円の黒字)、経常利益が1億26百万円の赤字(同4億37百万円の黒字)、四半期純利益が1億15百万円の赤字(同2億77百万円の黒字)だった。

 マーケティング事業(2.8%増収)は順調だったが、MFD事業(10.4%減収)が苦戦した。新型コロナウイルスの影響で紹介ネットワーク(医療機関等)からの新規顧客獲得が低調だった。また20年7月開始のCID事業の損益分岐点未達に伴う在庫評価損計上、埼玉工場に係る減価償却費の増加、広告掲載や無料サンプリング・キャンペーンによる広告宣伝費の増加などが影響した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億55百万円で営業利益は25百万円の黒字、第2四半期は売上高7億57百万円で営業利益46百万円の赤字、第3四半期は売上高8億24百万円で営業利益1億円の赤字だった。第2四半期以降の赤字はCID事業の在庫評価損などが影響している。

 通期のセグメント別営業利益計画は、MFD事業が9.6%増の6億72百万円、CID事業が9億54百万円の赤字、マーケティング事業が37.6%増の3億44百万円としている。

 21年3月期は赤字予想だが、新事業であるCID事業「旬をすぐに」拡販や収益性改善に向けた取り組みを推進している。22年3月期の収益改善を期待したい。さらに健康食宅配市場の拡大も背景として中期成長を期待したい。

■株価は急反発の動き

 株価は底固め完了して急反発の動きだ。冷凍弁当のブーム化に加えて、メディアで「旬をすぐに」が取り上げられたことも支援材料となったようだ。基調転換して戻りを試す展開を期待したい。4月20日の終値は805円、前期推定配当利回り(会社予想の3円で算出)は約0.4%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS477円13銭で算出)は約1.7倍、時価総額は約52億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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