朝日ラバーは調整一巡、22年3月期収益回復期待

 朝日ラバー<5162>(JQ)は、自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の拡大も推進している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響や、中国の連結子会社における棚卸資産過大計上の修正などで営業・経常赤字予想だが、需要が回復基調であり、22年3月期の収益回復を期待したい。株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。なお5月13日に21年3月期決算発表を予定している。

■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力

 シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。

 20年3月期セグメント別売上構成比は工業用ゴム事業84%、医療・衛生用ゴム事業16%、営業利益構成比(調整前)は工業用ゴム事業70%、医療・衛生用ゴム事業30%だった。

■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信

 2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として定めた。SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指す方針だ。

 中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。

 そして最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円とした。

 光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。

 技術開発では、RFIDタグ用ゴム製品で培った技術を活用した簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LEDなどの開発を推進している。

 20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。

 20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術を開発したと発表している。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。

 さらに20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。認証取得も武器として、グローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる。

■22年3月期収益回復期待

 21年3月期連結業績予想(8月6日に公表、11月9日に売上高、経常利益、純利益を上方、営業利益を下方修正、3月15日に売上高を上方、各利益を下方修正)は、売上高が20年3月期比13.7%減の64億61百万円、営業利益が1億04百万円の赤字(20年3月期は3億25百万円の黒字)、経常利益が24百万円の赤字(同3億46百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が45.6%減の69百万円としている。配当予想は20円減配の10円(期末一括)である。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比17.8%減の45億95百万円、営業利益が1億60百万円の赤字(前年同期は2億42百万円の黒字)、経常利益が97百万円の赤字(同2億62百万円の黒字)、四半期純利益が82.4%減の28百万円だった。

 新型コロナウイルス影響による車載用の需要減少などで減収・営業赤字だった。工業用ゴム事業は20.9%減収、医療・衛生用ゴム事業は1.5%減収だった。営業外収益には補助金収入67百万円を計上、特別利益には投資有価証券売却益1億65百万円を計上した。

 ただし、四半期別(中国の連結子会社における棚卸資産過大計上で第2四半期累計の数値を一部修正)に見ると、第1四半期は売上高14億30百万円で営業利益27百万円の赤字、第2四半期は売上高14億19百万円で営業利益1億52百万円の赤字、第3四半期は売上高17億46百万円で営業利益19百万円の黒字だった。第3四半期は需要回復基調となって営業黒字化した。

 通期は需要が回復基調のため売上高を上方修正したが、利益面では中国の連結子会社における棚卸資産過大計上修正などが影響する。需要が回復基調であり、22年3月期の収益回復を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く上値を切り下げてやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。低PBRも見直し材料だろう。4月21日の終値は624円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS15円21銭で算出)は約41倍、前期推定配当利回り(会社予想の10円で算出)は約1.6%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS983円98銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約29億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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