【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インテージHDは16年3月期は増収営業増益予想、中期成長力を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インテージホールディングス<4326>(東1)は市場調査の最大手である。国内外におけるM&Aも積極活用して業容を拡大している。16年3月期は増収営業増益予想だが、株価はネガティブ反応で高値圏から急落した。ただし足元では調整一巡感を強めている。指標面に割高感はなく、中期成長力を見直して切り返しのタイミングだろう。

 13年10月に持株会社へ移行した。小売店パネル調査や消費者パネル調査などの市場調査・コンサルティング事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも事業展開している。

 国内外における積極的なM&A戦略で業容を拡大している。11年9月ベトナムの市場調査会社FTA、12年9月医療情報総合研究所、12年11月医療関連インターネット調査会社プラメド、13年8月香港の市場調査会社CSG香港を子会社化し、14年5月には子会社INTAGE INDIAがインドの市場調査会社RSMRS社の株式を取得してグループ化した。

 アライアンス戦略では、12年4月NTTドコモ<9437>と合弁会社ドコモ・インサイトマーケティングを設立、13年10月韓国の業界4位の市場調査会社Hankook Researchと包括的事業協力を締結、13年11月インドネシアの市場調査会社DEKA社と合弁会社を設立した。

 14年10月には世界的な情報・調査企業であるニールセンの消費者購買行動分析部門ニールセン・カンパニー合同会社と、小売店パネル調査の相互販売を可能にするパートナーシップを締結した。そして新たな広告効果測定ソリューション開発を目指してインテージ・ニールセン・デジタルメトリクスを設立した。また14年10月には医薬品有害事象情報システムの京都コンステラ・テクノロジーズと資本業務提携した。

 収益力強化に向けてグループ再編も進めている。14年6月には子会社アスクレップの臨床開発事業を承継したエーケーピーを伊藤忠商事<8001>に譲渡した。アスクレップは医薬情報事業を継続する。15年4月にはコンサルティング事業を強化するため子会社インテージコンサルティングを設立した。

 5月12日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は、売上高が前々期比3.3%増の439億25百万円、営業利益が同1.9%増の35億71百万円、経常利益が同1.9%増の34億46百万円、純利益が同50.0%増の24億63百万円だった。

 計画をやや下回ったが市場調査・コンサルティング事業の好調が牽引して増収増益だった。純利益についてはベトナムの子会社インテージ・ベトナム(旧FTA)に関するのれん減損損失5億64百万円を特別損失に計上したが、アスクレップの臨床開発事業を承継したエーケーピー譲渡に伴う関係会社株式売却益29億11百万円も寄与して大幅増益だった。

 配当予想は同2円50銭増配の年間30円(期末一括)とした。配当性向は24.5%となる。なおROEは同3.3ポイント上昇して13.4%、自己資本比率は同8.8ポイント上昇して59.3%となった。

 セグメント別の動向を見ると、市場調査・コンサルティング事業は売上高が同12.3%増の343億46百万円、営業利益が同1.6%増の30億70百万円だった。パネル調査ではインテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)、i-SSP(インテージシングルソースパネル)、医療情報総合研究所の処方情報分析サービス、カスタムリサーチではアンテリオのヘルスケア関連インターネット調査が好調に推移した。インテージ中国は事業再構築効果で赤字が縮小した。

 システムソリューション事業は売上高が同1.8%減の55億57百万円、営業利益が同1.9%増の4億99百万円だった。前々期の大型案件が一巡して減収だった。医薬品開発支援事業は売上高が同35.9%減の40億22百万円、営業利益が1百万円(前々期は5百万円の赤字)だった。アスクレップの臨床開発事業売却で大幅減収だったが、EDC(電子的臨床検査情報収集)システムの受注が好調に推移して営業損益が改善した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)91億78百万円、第2四半期(7月~9月)101億60百万円、第3四半期(10月~12月)107億98百万円、第4四半期(1月~3月)137億89百万円で、営業利益は第1四半期2億71百万円、第2四半期10億46百万円、第3四半期12億52百万円、第4四半期10億02百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期比4.7%増の460億円、営業利益が同6.4%増の38億円、経常利益が同9.4%増の37億70百万円、純利益が同2.6%減の24億円としている。純利益については関係会社売却益一巡で減益予想だが、市場調査・コンサルティング事業の好調が牽引して増収、営業増益、経常増益予想だ。

 配当予想は同2円50銭増配の年間32円50銭(期末一括)で、予想配当性向は27.2%となる。利益配分については、連結業績をベースに配当と内部留保のバランスを考慮した利益配分を行うことを基本として、連結配当性向の目標は30%を目安としている。

 16年3月期からセグメント区分を変更する。グループフォーメーションの再編を実施し、事業会社インテージを中心にインテージリサーチ、アクセス・ジェービー、海外子会社が展開する消費財・サービス分野のマーケティング支援事業、事業会社アンテリオを中心にアスクレップ、医療情報総合研究所、プラメドが展開するヘルスケア分野のマーケティング支援事業、そして事業会社インテージテクノスフィアが展開するITソリューション分野のビジネスインテリジェンス事業とする。

 セグメント別の計画を見ると、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業は売上高が同6.3%増の308億円、営業利益が同3.3%増の19億80百万円、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業の売上高が同3.1%増の97億円、営業利益が同17.5%増の13億58百万円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が同1.0%減の55億円、営業利益が同7.5%減の4億62百万円としている。

 14年5月に発表した第11次中期経営計画では、重点課題として主力事業再強化による市場価値向上、「モバイル&シングルソース」「グローバル」「ヘルスケア」領域の着実な成長、リサーチの枠にとらわれない新たなビジネスモデルの模索と確立、最適化の視点による戦略立案・推進のマネジメント強化を掲げ、17年3月期売上高520億円、営業利益46億円を目標としている。M&Aやグループ再編も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、高値圏2100円近辺から5月14日の1741円まで急落した。16年3月期は増収営業増益予想だがネガティブに反応した。その後は目先的な売りが一巡して1800円近辺でモミ合う展開だ。

 6月8日の終値1831円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円25銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間32円50銭で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS989円01銭で算出)は1.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線近辺まで下押すことなく、徐々に下値を切り上げて調整一巡感を強めている。指標面に割高感はなく、中期成長力を見直して切り返しのタイミングだろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る