【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジョルダンは高値圏で堅調、訪日外国人旅行客増加が追い風

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジョルダン<3710>(JQS)は経路検索ソフトを主力とする乗換案内事業などを展開している。株価は5月の年初来高値875円から利益確定売りで一旦反落したが、高値圏の820円~850円近辺で堅調に推移している。訪日外国人旅行客増加が追い風であり、14年9月高値884円を目指す流れに変化はないだろう。

 乗換案内事業(無料版「乗換案内」、有料サービス「乗換案内NEXT」「乗換案内Plus」、総合旅行サービス「乗換案内トラベル」、および広告、グルメ・運行情報サービスなど)を主力として、マルチメディア事業(電子出版・紙媒体出版、ニュース、教育、その他コンテンツ)や、その他事業(受託ソフトウェア開発、その他新サービス)も展開している。

 有料サービス「乗換案内NEXT」「乗換案内Plus」の15年3月末有料会員数は約42万人で、無料を含めた「乗換案内」の各種インターネットサービス検索回数は15年3月に月間約2億1500万回~2億2000万回となった。また当該サービスの月間利用者数は約1200万人となっている。

 乗換案内事業では、鉄道の経路検索にとどまらず、路線バスの経路検索にも対応している。さらに利便性の高い「乗換案内」を目指して、今後は「駅から駅」「バス停からバス停」の案内にとどまらず、徒歩ルートを含めた「地点から地点」「場所から場所」案内を強化する方針だ。

 そして「移動に関するNO.1情報プロバイダー」を目指し、新サービス開発や機能充実に向けてM&A・アライアンス戦略も積極活用している。12年9月にグルメぴあネットワークを子会社化(13年4月吸収合併)、12年11月にネット旅行販売・情報提供のイーツアーを子会社化、14年7月に合弁で「ミール・プラス」事業のRemunera Jorudan(レムネラ・ジョルダン)を設立した。一方ではマルチメディア事業における不採算事業からの撤退を進めるとともに、新たな採算事業も模索している。

 15年4月には東京国際空港ターミナルと連携して、羽田空港国際線旅客ターミナルから目的地へ、また各地から羽田空港国際線旅客ターミナルへ、鉄道やバスを利用して移動する経路のアクセス検索サービス「TIAT ROUTE MASTER」のサービスを開始した。日本語だけでなく英語、中国語(簡体字・整体字)、韓国語の検索も可能だ。

 15年5月には訪日外国人旅行客をターゲットにしたルート案内ソリューション「乗換案内Visit」の提供を開始した。英語、中国語(簡体字・整体字)、韓国語に日本語を含めた5言語に対応する。乗換経路検索だけでなく、ゼンリン<9474>提供の多言語地図との連携により、多言語でのトータルルート案内サービスを実現した。

 また15年5月にはVAIRON(東京都)と提携して、中国のTencentが運営するスマートフォン向けコミュニケーション・チャットアプリ「WeChat」の企業アカウント開設だけでなく、企業が効果的に「WeChat」を活用するための独自の開発を行う体制を整えた。訪日中国人の購買行動へ結びつけるブランドコミュニケーションを行うには、7億人ユーザーの「WeChat」への企業アカウント開設および運営が必須とされるため、共同で「WeChat」を活用するマーケティング活動をコンサルティングから開発まで提供する。

 5月14日発表した今期(15年9月期)第2四半期累計(10月~3月)連結業績は、売上高が前年同期比4.5%増の22億33百万円と増収だったが、営業利益は同17.4%減の2億78百万円、経常利益は同22.1%減の2億81百万円、純利益が同30.4%減の1億57百万円だった。旅行関連の好調が牽引して増収だったが、旅行関連の仕入高増加、新製品・サービス開発費用の増加、持分法投資損益の悪化、負ののれん発生益の一巡などで減益だった。

 製品・サービス別売上高は、乗換案内事業が同3.4%増の21億04百万円(内訳はモバイルが6.1%減の5億09百万円、広告が2.9%減の1億39百万円、個人向けが9.0%減の61百万円、法人向けが1.8%増の4億76百万円、旅行が19.1%増の8億23百万円、グルメが26.2%減の89百万円、他乗換が98.7%増の5百万円)、およびマルチメディア事業が同3.2倍の63百万円、その他が同19.3%減の65百万円だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)10億57百万円、第2四半期(1月~3月)11億76百万円、営業利益は第1四半期94百万円、第2四半期1億84百万円だった。営業損益は改善基調だ。

 通期の連結業績予想は前回予想(11月13日公表)を据え置いて、売上高が前期比4.2%増の45億円、営業利益が同3.3%増の6億円、経常利益が同1.2%増の6億20百万円、純利益が同2.7%増の3億90百万円、配当予想が前期と同額の年間13円(期末一括)としている。

 製品・サービス別の売上高は期初計画を見直し、乗換案内事業が同2.1%増の42億30百万円(内訳はモバイルが4.8%減の10億20百万円、広告が4.9%増の3億円、個人向けが11.8%減の90百万円、法人向けが6.0%増の9億20百万円、旅行が8.0%増の17億10百万円、グルメが18.6%減の1億80百万円、他乗換が11.1%増の10百万円)、およびマルチメディア事業が同4.2倍の1億40百万円、その他が同7.1%減の1億30百万円としている。

 乗換案内事業ではスマートフォン向け有料サービスの機能強化で会員獲得を推進し、スマートフォン向け無料サービスにおける広告、法人・自治体向け案件、旅行関連パッケージ商品などの販売拡大を見込んでいる。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.6%、営業利益が46.3%、経常利益が45.3%、純利益が40.3%である。やや低水準の形だが、四半期別に見ると第2四半期の営業損益は改善基調であり、訪日外国人旅行客の増加を追い風として、第3四半期(4月~6月)以降の挽回が期待される。さらに20年東京夏季五輪開催も追い風となって中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、5月11日の年初来高値875円から利益確定売りで一旦反落したが、大きく下押す動きは見られず、高値圏の820円~850円近辺で堅調に推移している。

 6月8日の終値831円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS74円72銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS764円87銭で算出)は1.1倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線および26週移動平均線がサポートラインとなって長期上昇トレンドの形だ。訪日外国人旅行客増加が追い風であり、14年9月高値884円を目指す流れに変化はないだろう。

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