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パイプドHDは売り一巡して戻り試す、22年2月期は先行投資で減益予想だが保守的
- 2021/4/26 08:08
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「SPIRAL」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業や販促CRMソリューション事業などを展開している。21年2月期は新型コロナウイルス感染症対策に急を要するシステム案件を多数受注して増収増益だった。22年2月期は人件費増加など先行投資で減益予想としているが保守的だろう。収益拡大を期待したい。株価は22年2月期減益予想を嫌気する形で急反落したが、売り一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■情報資産プラットフォーム事業などを展開
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「SPIRAL」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業や販促CRMソリューション事業などを展開している。
セグメント区分は、機能別事業群としての情報資産プラットフォーム事業(SPIRALやBizBaseなどのクラウドサービス提供)、販促CRMソリューション事業(Webシステムの開発、ECサイトの構築・運営支援)、広告事業(インターネット広告代理販売)、および分野別事業群としてのxTech事業(ArchiTech:BIM事業、BeauTech:美歴、HRTech:オーダーメイド人材育成代行、FinTech:エルコイン)、社会イノベーション事業(政治山、I LOVE 下北沢、シモキタコインの運営)としている。
21年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業68%、販促CRMソリューション事業15%、広告事業12%、xTech事業3%、社会イノベーション事業1%、営業利益構成比(調整前)は情報資産プラットフォーム事業82%、販促CRMソリューション事業2%、広告事業17%、xTech事業0%、社会イノベーション事業▲1%だった。
情報資産プラットフォーム事業は、契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。広告事業の売上高は、広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)としている。
■中期経営計画2023
4月9日に中期経営計画2023を公表し、目標値には23年2月期売上高75億円、営業利益17億円を掲げた。
事業セグメントを見直して、ホリゾンタルDXのクラウド(スパイラル、スパイラルEC、BizBase、エルコインなど)およびソリューション(Webシステム開発請負、ECサイト・アプリ構築・運営支援)、カスタマーエンゲージメントの広告(ネット広告代理販売など)およびCRMソリューション(デジタルCRM)、バーティカルDXのxTech(ArchiSymphony/BIM事業、美歴)および社会イノベーション(マイ広報紙、ネット投票・政治山、I Love 下北沢、シモキタコイン)に変更する。なお伴走型インサイドセールス代行事業のカレンについては株式譲渡(21年4月)した。
重点戦略として、ホリゾンタルDXの強化と拡充(スパイラルを中心とするローコード開発クラウドの更なる充実、新たなクラウドサービスの開発など)、バーティカルDXの積極的な挑戦(既存の建設・美容・政治・行政・タウンマネジメントの各分野からの成功事例の創出、特定分野のDXをトータルで支援するバーティカルDXの新たな創出)、カスタマーエンゲージメントの新たな挑戦(従来のアフィリエイト広告による集客支援と集客後のCRMのシームレスな連携)、脱炭素社会への貢献、採用・育成の通例化を推進する。
20年11月には、新たなローコード開発プラットフォーム「SPIRAL ver2」の提供開始を発表した。グローバル案件にも対応可能な多言語機能を実装し、先行して10社以上の企業に導入済みである。
電子地域通貨プラットフォームを提供するエルコインの子会社シモキタコインは、エルコインの電子地域通貨プラットフォーム発行事業者第1号として、下北沢で行われるイベントや商業施設等で利用される電子地域通貨を発行している。
政治・選挙情報サイト「政治山」を運営するVOTE FORは、自治体向けオープンデータ化・活用サービス「マイ広報紙」を展開するパブリカと合併し、収益性向上を推進している。21年2月期にはつくば市や町田市にネット投票システムを提供した。
さらにwithコロナ・afterコロナで役立つソリューションとして、体調報告アプリ、バーチャル株主総会ソリューション、美容室向け前売りチケット販売管理「チケット管理サービス」などの開発・提供を開始している。なお21年2月には美歴が美容室向け電子ヘアカルテ共有アプリ「美歴BIREKI」および店舗向け「美歴店舗管理サービス」を全面リニューアルした。
■投資事業も推進
20年3月にコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)として投資事業を行う新会社ダブルシャープ・パートナーズを設立した。
そして21年2月期投資実績は、店舗マネジメントツール「はたLuck」のナレッジ・マーチャントワークス、地方企業と大都市の副業・兼業人材マッチングサービス「JOINS」のJOINS、家具のサブスクリプション型サービスのsubsclife、建物メンテナンス業務管理SaaSのBPM、BtoB受発注システム「CO―NECT」のCO―NECTに出資し、5社合計約1億30百万円を実行した。
■22年2月期は先行投資で減益予想だが保守的
21年2月期の連結業績は、売上高が20年2月期比5.1%増の65億24百万円、営業利益が2.6%増の14億27百万円、経常利益が3.7%増の14億55百万円だった。親会社株主帰属当期純利益は投資有価証券売却益(米国Sprinklr社売却)を計上して78.2%増の12億26百万円だった。配当は2円増配の23円(第2四半期末9円、期末14円)とした。
商談長期化など新型コロナウイルスに伴うマイナス影響があったが、一方で新型コロナウイルス感染症対策に急を要するシステム案件を多数受注して増収増益だった。機能別事業群の情報資産プラットフォーム事業は6.4%増収、販促CRMソリューション事業は0.2%増収、広告事業は5.6%増収、分野別事業群のxTech事業は4.5%減収、社会イノベーション事業は9.3%増収だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高14億54百万円で営業利益2億83百万円、第2四半期は売上高15億20百万円で営業利益2億70百万円、第3四半期は売上高15億95百万円で営業利益2億68百万円、第4四半期は売上高19億55百万円で営業利益6億06百万円だった。第4四半期に新型コロナウイルス感染症対策に急を要するシステム案件を多数受注した。
22年2月期の連結業績予想は、売上高が21年2月期比7.3%増の70億円、営業利益が1.9%減の14億円、経常利益が3.8%減の14億円、親会社株主帰属当期純利益が投資有価証券売却益の剥落で31.5%減の8億40百万円としている。配当予想は2円増配の25円(第2四半期末11円、期末14円)で、連続増配となる。
デジタル化対応などで需要が堅調に推移して増収だが、人材確保に伴う人件費増加など先行投資の影響で減益予想としている。ただし保守的だろう。収益拡大を期待したい。
■株価は売り一巡して戻り試す
株価は22年2月期減益予想を嫌気する形で急反落したが、売り一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。4月23日の終値は1656円、前期予想連結PER(会社予想の連結EPS107円55銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約1.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS574円38銭で算出)は約2.9倍、時価総額は約135億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)