LibWorkはモミ合い煮詰まり感、受注好調で21年6月期上振れの可能性

 LibWork<1431>(東マ)は熊本県を地盤として九州圏および首都圏に展開する注文住宅メーカーである。Webマーケティングによる独自集客手法を特徴として全国展開を目指している。受注が好調であり、21年6月期業績予想は上振れの可能性が高いだろう。中期的にも収益拡大基調を期待したい。株価(4月21日から貸借銘柄)はモミ合い展開だが煮詰まり感を強めている。上放れを期待したい。なお21年3月にはYouTube「LibWork IRチャンネル」を開設した。また5月13日に21年6月期第3四半期決算発表を予定している。

■熊本県を地盤として全国展開を目指す注文住宅メーカー

 熊本県を地盤として九州圏(熊本県、佐賀県、福岡県、大分県)に展開する注文住宅メーカーである。第一次取得層を主ターゲットとして、省エネ性能に優れた住宅を提供している。またMUJI HOUSEとネットワーク加入契約(フランチャイズ契約)し、熊本エリアと福岡エリアで独占営業権を取得して「無印良品の家」も提供している。

 全国展開を目指し、20年7月にタクエーホーム(神奈川県横浜市)を子会社化して首都圏に進出した。21年8月には関東初出店となる千葉店(千葉県千葉市)の開設を予定している。今後の出店戦略として、千葉店の出店を皮切りに関東への出店を加速するとともに、23年6月までに全国の店舗網を25店舗(21年3月現在16店舗、本店含む)に拡大する方針である。

 一般社団法人住宅性能評価・表示協会の発表によると、20年8月末時点のBELS(評価機関が省エネルギー性能の評価・表示を行う第三者認証制度)申請数の住宅分野において、設計者では全国5389社中の34位、施工者では全国5915社中の44位となっている。

■WEBマーケティングが特徴

 一般的な常設展示場(モデルハウス)への集客ではなく、Webマーケティングによる独自の集客手法を特徴としている。土地ポータルサイト「e土地net」やWebマーケティングなどネットやSNSを活用して集客することで、大幅なコストダウンを実現している。

 WEBはエリアに依存しないため全国展開も容易になる。また「e土地net」の広告掲載料と仲介手数料を不要としているため、多数の最新の土地情報が集まりやすい。

■新商品開発ではコラボ戦略を活用

 新商品共同開発では、19年11月グリムス<3150>の子会社グリムソーラーと提携、20年3月アダストリア<2685>と提携した。

 20年12月には「Afternoon Tea」ブランドのサザビーリーグと提携した。関東初出店となる千葉店のモデルハウスは、千葉北住宅公園(仮称)にコラボ商品「Afternoon Tea HOUSE」ブランドでの出店を予定している。

■23年6月期株式時価総額500億円目指す

 WEBマーケティングをコアコンピタンスとする住宅テック企業として、20年1月策定の経営ビジョン「VISION2030」の達成(毎年売上20%成長を基本とした安定的・永続的な成長)を目指している。

 20年8月策定の中期経営計画「NEXT STAGE 2023」では、定量目標値として、23年8月期の株式時価総額500億円、売上高150億円(20年6月期比2.5倍)、営業利益12億円(同8倍)、ROE25%(同3.4倍)を掲げている。

 成長戦略として全国展開の加速、デジタル集客の拡大、住宅版SPAモデル確立、サブスクリプションモデルによる全国の工務店・ビルダー支援事業の収益化としている。

 定量目標値以外のKPIは、戸建の売上総利益理宇率35%(20年6月期実績28%)、店舗数25店舗(同12店舗)、Web集客数毎年50%増加、YouTubeチャンネル登録数10万人、サブスクリプション工務店支援事業(20年6月経済産業省中小企業庁の新連携支援事業に採択)の営業利益1億円としている。

 全国展開の加速では、エリア・店舗数の拡大(20年6月期の合計12店舗を23年6月期25店舗に拡大)による日本全国への出店、ショッピングモール向け新ブランド「sketch」の展開を推進(23年6月期売上高20億円目標)する。20年8月には「e土地net 神奈川版」を開設した。20年7月子会社化したタクエーホームとともに、関東への展開の拠点とする。

 デジタル集客の拡大では、戸建関連カテゴリーポータルサイト(e土地net、e注文住宅net、e平屋net、e建築士net)の充実・拡大、戸建カテゴリーに特化した集客サイトや他社建売物件仲介サイトなど新規サイトのリリース、20年1月開設したYouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用を推進する。なお「LibWork ch」の登録者数は20年12月に1万人を突破し、21年2月現在で1.6万人超となった。

 住宅版SPAモデル確立では、主要5工事(給排水設備工事、基礎工事、建て方工事、サイディング工事、地盤改良工事)の内製化により、戸建売上総利益率を35%まで高めるとともに、自社独自工法の開発を開始する。

 サブスクリプションモデルによる全国の工務店・ビルダー支援事業の収益化では、AIを活用した全国の工務店・ビルダー支援システムを21年6月リリース予定で、全国の工務店にサービス展開する。

■SDGs宣言

 SDGsへの取り組みでは、20年11月にライトアップ<6580>と業務提携し、ライトアップの助成金・補助金自動診断システム「Jシステム」を活用して、九州のパートナー企業を中心に中小企業支援サービスを開始している。企業活性化に貢献する。また肥後銀行と共に、山鹿市健康増進課に対して、ひぎんSDGs私募債発行を記念した寄付を行った。さらにSDGsへの取り組みを強化するため、自社内で「SDGsキックオフ」を開催し、内閣府が設置した「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」にも参画している。

 21年3月にはSDGs宣言を行い、サステナブルな住まいづくりを通じて豊かな暮らしと幸せの実現、地球環境への配慮に貢献する方針を打ち出した。そして一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークへの寄付を発表した。さらに、太陽光発電システム導入費用が無料となる「Lib Work Solar Free」をグリムスソーラーと共同で商品化し、販売する全住戸を対象に提供開始すると発表した。

 4月23日には、国土交通省が行う社会実験のIT重説実施時における「重要事項説明書等の電磁的方法による交付」の登録事業者として認定され、宅地建物取引の売買時においても「IT重説」および「電子書面交付」を開始したと発表している。DXを推進して、SDGs番号8「働きがいも、経済成長も」およびSDGs番号12「つくる責任、つかう責任」にも寄与できるとしている。

■21年6月期業績予想は受注好調で上振れの可能性

 21年6月期連結業績予想(タクエーホームを子会社化して第1四半期から連結決算開始)は、売上高が95億円、営業利益が3億90百万円、経常利益が4億円、当期純利益が2億46百万円としている。20年6月期の非連結業績との比較で売上高が57.4%増収、営業利益が2.7倍増益、経常利益が2.1倍増益、当期純利益が79.6%増益となる。

 受注が好調であり、タクエーホームの新規連結、スケールメリットを活かした原価低減なども寄与して大幅増収増益予想である。エリア展開ではe土地net神奈川版を立ち上げて、関東圏でのWeb集客を強化する。戸建住宅関連の新サイトも立ち上げ予定である。商品面では「無印良品の家」の3商品(木の家・窓の家・陽の家)全てが見学できる総合展示場を熊本市に開設する。また住宅版SPAを推進して売上総利益率向上を推進する。サブスクリプションモデルの工務店・ビルダー支援サービスは21年4月開始を目指す。

 第2四半期累計は、売上高が45億45百万円、営業利益が2億51百万円、経常利益が2億96百万円、四半期純利益が1億63百万円だった。前年同期の非連結業績(売上高38億44百万円、営業利益2億89百万円)との比較ではM&A費用やのれん償却費などで営業減益の形だが、売上高・利益とも計画超(1月18日に2回目の上方修正)だった。

 新型コロナウイルスを契機とする戸建住宅需要の高まり、デジタルマーケティングの強化、事業エリアの拡大、異業種とのコラボレーションも活用した新商品開発などで、自社YouTubeチャンネル登録数が1万人を突破し、デジタル集客数が前年比149%、受注棟数が前年比227%と大幅伸長した。さらに仕入原価削減と施工管理体制強化で粗利率が改善した。デジタル集客の好調でCPA(集客コスト)が改善したことも販管費の抑制に繋がった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高10億11百万円で営業利益1億95百万円の赤字、第2四半期は売上高35億34百万円で営業利益4億46百万円だった。第1四半期は新型コロナウイルスの影響で着工・引き渡しの遅延が発生したが、第2四半期は引き渡しが順調に進捗した。第2四半期の影響利益は前年同期の2億50百万円に対して78.4%増益の形となった。

 通期も強みとしているデジタル集客によって受注が好調に推移し、原価低減なども寄与して大幅増収増益予想としている。通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高47.8%、営業利益64.4%と順調である。また4月5日に公表した第3四半期の受注(タクエーホーム含む)は棟数が前年比205%、金額が同208%と好調だった。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で中期的にも収益拡大基調を期待したい。

■配当は四半期配当、株主優待制度は保有期間・株式数に応じて贈呈

 なお2月10日に公募増資・売出し、株式2分割(効力発生日21年4月1日)および株式2分割に伴う期末配当予想修正(実質変更なし)と、株主優待制度の実質拡充(21年4月1日付株式2分割後)を発表している。

 配当は四半期配当を行っている。21年6月期の配当予想は、20年10月1日付株式2分割前の第1四半期末が4.50円、株式2分割後の第2四半期末、第3四半期末が各2.25円、21年4月1日付株式2分割後の第4四半期が1.125円となる。

 20年1月1日付株式2分割、20年10月1日付株式2分割、そして21年4月1日付株式2分割を考慮して、分割後で年換算すると、20年6月期は4.50円、21年6月期予想も4.50円となる。

 株主優待制度については各四半期(9月、12月、3月、6月)末時点の株主を対象として実施している。21年6月期以降は保有期間および保有株式数に応じて、9月末、12月末、3月末時点は1000株以上保有株主に対して株主優待ポイント、6月末時点は、100株~999株保有株主に対してクオカード、1000株以上保有株主の保有株式数に応じて株主優待ポイントを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

 なお21年6月末に限り、記念株主優待として100株以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。対象株主は既存の株主優待と記念株主優待を併せて合計2000円分のクオカード贈呈となる。

■株価はモミ合い煮詰まり感

 株価(1株当たり数値は21年4月1日付株式2分割後換算、4月21日から貸借銘柄)はモミ合い展開だが煮詰まり感を強めている。上放れを期待したい。4月23日の終値は878円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS11円73銭で算出)は約75倍、今期予想配当利回り(会社予想の4円50銭で算出)は約0.5%、前期実績PBR(前期実績の非連結BPS85円61銭で算出)は約10倍、時価総額は約205億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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