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アイリッジは売られ過ぎ感、22年3月期収益拡大期待
- 2021/4/27 08:30
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)は、O2O・OMOソリューションをベースとして、デジタル地域通貨などにも事業領域を拡大している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響を考慮して減益予想だが、売上総利益率が改善基調である。22年3月期の収益拡大を期待したい。株価は水準を切り下げる形で軟調だが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。なお5月14日に21年3月期決算発表を予定している。
■O2O・OMOソリューションをベースに事業領域拡大
企業のO2O(Online to Offline)およびOMO(Online Merges with Offline)を支援するデジタル・フィジカルマーケティング領域(スマホをプラットフォームとするO2Oソリューションの提供、O2Oアプリの企画・開発、O2Oマーケティング支援)をベースとして、デジタル地域通貨領域などにも事業領域を拡大して中期成長を目指している。
20年3月期のサービス別売上高構成比は、月額報酬(FANSHIPのサービス利用料、アプリのシステム保守料等)が15%、アプリ開発・コンサル・プロモーション等(アプリ企画・開発に伴う収入、アプリマーケティングに伴う収入、広告・販売プロモーションに伴う収入)が85%だった。
4月8日には「デロイト トウシュ、トーマツ リミテッド 2020年アジア太平洋地域テクノロジーFast500」において225位を獲得したと発表している。
なおデジタルガレージ<4819>との資本業務提携を21年2月に解消した。これに伴って、デジタルガレージ、クレディセゾン、DGベンチャーズが保有するアイリッジ株式の売り出しを行った。また第三者割当(野村證券)による増資を行った。デジタルガレージから株式14%を取得していた不動産マーケティングのDGコミュニケーションズ(DGM)については、デジタルガレージに全株を譲渡する。デジタルガレージから株式80%を取得しているセールスプロモーションの連結子会社DGマーケティングデザイン(DGMD)については両社の株式保有を継続し、21年4月1日付でQoilに社名変更した。
■デジタル・フィジカルマーケティング領域はFANSHIPが主力
デジタル・フィジカルマーケティング領域は、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPが主力である。スマホ向け位置情報連動型O2Oソリューションpopinfoを19年7月ブランドリニューアルした、
20年12月末のFANSHIP利用ユーザー数(ID発行数)は2億1628万(20年3月末比2501万増加)となった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益となる。
今後はFANSHIPの機能強化によるストック収益拡大や、One to Oneマーケティングプラットフォームとしての導入拡大を図る。さらに連結子会社Qoilとの連携を強化し、オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~CRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。
なお21年2月には、東芝テックおよびリゾームと協業して、スマホアプリを手軽に導入できるショッピングセンター向け顧客システムを21年4月に提供開始すると発表している。
■デジタル地域通貨プラットフォームの展開を加速
フィンテック領域(デジタル地域通貨)は子会社フィノバレーが、決済システムを中心としたデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」を展開している。ファン育成プラットフォームFANSHIPと組み合わせることで、マーケティング機能を融合した決済基盤構築も可能となる。
システムの提供実績としては、岐阜県飛騨・高山地域「さるぼぼコイン」、千葉県木更津市「アクアコイン」、大分銀行「デジタル商品券発行スキーム」などがある。また認定特定非営利活動法人夢職人の子どもの「食」応援クーポン事業「Table for Kids」(20年12月中~21年5月末日の6ヶ月間)に提供する。
地域経済活性化施策として自治体におけるデジタル地域通貨需要が高まっていることも背景に事業展開を加速している。21年2月には長崎県南島原市の「MINAコイン」、東京都世田谷区の「せたがやPay」の提供を開始した。さらに岡山県真庭市の「公金キャッシュレス・市民ポイント調査研究業務」の優先交渉権を獲得(20年12月)している。
また21年2月には、熊本県人吉市のスーパーシティ構想に係る公募型プロポーザルにおいて連携事業者に選定された。
■新規事業も育成
その他の新規分野として、18年9月にAIスピーカーAlexaスキル開発運用クラウドNOIDを提供開始している。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。20年6月にはNOIDを活用して、大塚製薬の公式Alexaスキル「サプリメントチェック」を開発支援した。
20年11月にはソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONETが設立したMONETコンソーシアムに参画した。MaaS事業への取り組みを強化する。また欧州系最大の戦略コンサルティングファームの日本法人ローランド・ベルガーの価値共創ネットワーク(VCN)に参画した。
21年2月には、小売業界向けSaaS型オンラインプラットフォームを提供するFlow Solutionsと資本業務提携した。またオンライン・モンスターと提携し、接客・相談・学習指導など対面サービスを提供する企業向けに、対面サービスのオンライン化を実現するビデオ通話機能付マッチングプラットフォームの提供を開始した。さらに、メディカルネット(20年5月に歯科向けオンライン診療サービスの共同開発で業務提携)と共同で、マッチングプラットフォームを利用したオンライン歯科相談サロン「デンタルオンラインサロン」と、業界初の歯科用口腔内カメラを活用した歯科向けオンライン診察サービス「デンタルオンライン」の提供を開始した。
■売上総利益率改善やソリューション強化を推進
中期経営計画(ローリングプラン)の目標値としては、23年3月期売上高70億円、営業利益5億円、EBITDA7億50百万円を掲げている。重点取り組みとして粗利率の改善、ソリューション強化、事業提携、人員体制強化などを推進する。
なおwithコロナ対応として、オフィスを約5割削減・再編して、出社勤務と在宅勤務を併用するハイブリッド型働き方に最適な環境と勤務体制「iRidge Hybrid Working Style」を構築した。
■21年3月期売上総利益率改善基調、22年3月期収益拡大期待
21年3月期連結業績予想(8月14日公表、2月12日に下方修正)は、売上高が20年3月期比21.3%減の42億円、営業利益が56.1%減の50百万円、経常利益が56.1%減の50百万円、親会社株主帰属当期純利益が10百万円の黒字(20年3月期は81百万円の赤字)としている。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比18.7%減の31億16百万円、営業利益が12百万円の黒字(前年同期は47百万円の赤字)、経常利益が21百万円の黒字(同46百万円の赤字)、四半期純利益が26百万円の赤字(同70百万円の赤字)だった。
月額報酬は30.6%増収と高い成長率を維持したが、アプリ開発・コンサル・プロモーション等が27.0%減収だった。アプリ開発を中心とするデジタルマーケティング領域は好調だが、新型コロナウイルスによるオフラインプロモーション減少が影響した。ただし売上総利益は6.2%増加した。開発体制強化や内製化率向上で売上総利益率が7.9ポイント改善した。さらに販管費抑制も寄与して営業・経常黒字だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高9億81百万円で営業利益28百万円の赤字、第2四半期は売上高11億04百万円で営業利益13百万円の黒字、第3四半期は売上高10億31百万円で営業利益27百万円の黒字だった。売上総利益率が改善基調(20年3月期通期27.6%、21年3月期第1四半期31.2%、第2四半期32.9%、第3四半期36.6%)で第2四半期から営業黒字に転換している。
通期予想は新型コロナウイルス感染再拡大によるオフラインプロモーションへの影響を考慮して減益予想だが、各利益は黒字を確保する見込みだ。また成長再加速に向けた重点施策として、アプリ開発案件の売上総利益率改善と高付加価値化、ストック型ソリューション強化による安定収益比率の向上、事業環境変化やDXニーズ拡大などに対応した新たなソリューションや事業の展開などを推進する。
21年3月期は新型コロナウイルスの影響を考慮して減益予想だが、売上総利益率が改善基調である。22年3月期の収益拡大を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は水準を切り下げる形で軟調展開だが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。4月26日の終値は795円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS1円49銭で算出)は約534倍、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS374円02銭で算出)は約2.1倍、時価総額は約55億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)