フェローテックホールディングスは上値試す、収益拡大基調

 フェローテックホールディングス<6890>(JQ)は半導体等装置関連事業を主力としている。半導体市場拡大に対応して生産能力増強投資を継続し、中国資本を活用した成長資金調達で財務体質改善も推進している。21年3月期は半導体市場が拡大して大幅増益予想としている。さらに22年3月期も収益拡大基調だろう。株価は年初来高値圏で堅調に推移している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。なお5月14日に21年3月期決算発表を予定している。

■半導体等装置関連事業が主力

 半導体等装置関連事業(真空シールおよび各種製造装置向け金属加工製品、石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、シリコンウェーハ加工、装置部品洗浄など)を主力として、電子デバイス事業(サーモモジュール、パワー半導体用基板、磁性流体など)も展開している。主力の真空シールは世界シェア6割強である。

 20年3月期のセグメント別売上構成比は半導体等装置関連事業65%、電子デバイス事業17%、その他19%、営業利益構成比(調整前)は半導体等装置関連事業58%、電子デバイス事業38%、その他4%だった。

 太陽電池関連事業(シリコン結晶製造装置、シリコン製品)は撤退方針である。当面は自社販売から撤退してOEMに特化し、OEM用途以外の設備は半導体Siパーツ構造材用途への転換を進める。またOEM継続も短期的対応としている。撤退時期については、既存設備の売却交渉や撤退に伴う様々な影響度合いによって変更の可能性がある。

 19年3月東洋刃物<5964>を持分法適用関連会社化、20年10月ロシアの超小型サーモモジュールメーカーであるRMT社を子会社化(20年11月完全子会社化)、20年12月高品質薄膜製造システム・コンポーネント・プロセスソリューションを提供する米国MeiVac社を完全子会社化した。また21年3月には大泉製作所<6618>を持分法適用関連会社化した。

■中国での生産能力増強に向けて積極設備投資、財務体質改善も推進

 半導体市場拡大に対応して中国での生産能力増強投資を継続している。ただし中国子会社の組織再編や中国での上場準備など、中国資本を活用した成長資金調達でグループ財務体質改善も推進している。また半導体分野における中国の国家プロジェクトへの参画も視野に入れる方針だ。

 半導体ウェーハ事業の中核子会社である中国(杭州)FTHWについては、中国株式市場への上場を目指すことを前提に、株式の一部を中国の投資基金等へ譲渡し、さらに第三者割当増資を実施した。そしてFTHWへの出資比率が29.5%まで低下したため、FTHWおよびFTHWの子会社であるFTSEの2社について、従来の連結子会社から持分法適用関連会社に異動した。この移動に伴って21年3月期第3四半期の特別利益に持分変動利益52億45百万円を計上した。また21年4月には第2回目の第三者割当増資(5月25日払込期日)によって出資比率が23%台に低下する見込みと発表した。

 半導体シリコンウェーハ再生事業の中国(上海)子会社FTSについては、20年7月、中国における12インチプライムウェーハの市場動向を踏まえ、中国における半導体シリコンウェーハ再生事業の設備投資を増額して生産能力を増強(投資額を約76.5億円から136.6億円に増額、生産能力を月産65千枚から月産120千枚に増強)すると発表した。21年4月量産開始予定としている。

 さらに将来的に顧客の需要に対応できない可能性があるため、20年10月にはFTSの子会社FTASMが第三者割当増資を行った。またFTSが中国SICCASおよび政府系・民間系投資ファンド等と合弁会社を設立(20年10月)し、SiC(酸化ケイ素)単結晶ウェーハ製造・販売事業を開始すると発表した。

 パワー半導体用基板製造の中国(江蘇省)子会社FTSJについては、将来的に中国の科創板市場への上場を目指すことを前提に、20年11月に第三者割当増資を行った。さらに21年2月には2回目の第三者割当増資を行った。また東台市澤瑞産業投資基金との合弁でパワー半導体研究院を設置(21年12月竣工、22年2月設備導入予定)する。

 半導体・FPD向け高純度プロセスツールパーツ洗浄サービスの中国子会社FTSAについては20年8月、中国の科創板市場への上場準備に入ると発表した。上場後も重要な連結子会社であることを前提としている。

 半導体製造用部材(石英坩堝、シリコンパーツ)製造の子会社である中国AQM-Nについては、将来的に中国の科創板市場への上場を目指すことを前提として、21年2月第三者割当増資を行った。これに伴って同社は特定子会社に該当することになった。

 なお中国子会社FTHWが進めている半導体大口径ウェーハ工場建設工事に絡み、施工工事事業者から工事代金に関連して提起された訴訟については、20年8月に支払を命じる津一審判決が言い渡されたが、この一審判決内容を不服として20年9月に控訴し、受理された。本件判決における工事代金約5億27百万円は、21年3月期第1四半期において、その他固定負債として見積もった金額の範囲内のため、業績への影響は軽微としている。

■21年3月期大幅増益予想、22年3月期も収益拡大基調

 21年3月期連結業績予想(8月14日公表、2月10日に上方修正)は、売上高が20年3月期比9.1%増の890億円、営業利益が49.7%増の90億円、経常利益が87.6%増の80億円、親会社株主帰属当期純利益が3.9倍の70億円としている。配当予想(2月10日に期末2円上方修正)は、2円増配の26円(第2四半期末12円、期末14円)としている。

 なお半導体ウェーハ子会社FTHWを持分法適用関連会社に異動した影響は、通期ベースで売上高20億円減収要因となるが、当面は営業利益ベースで赤字が見込まれるため、営業利益15億円増益要因、経常利益15億円増益要因、当期純利益45億円増益要因(持分変動利益含む)としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比9.5%増の665億40百万円、営業利益が27.5%増の62億49百万円、経常利益が64.8%増の57億58百万円、四半期純利益が3.3倍の65億10百万円だった。なお半導体ウェーハ事業の中核子会社である中国(杭州)FTHW、およびFTHWの子会社であるFTSEの2社について、従来の連結子会社から持分法適用関連会社に異動した。

 需要が拡大基調となって大幅増益だった。半導体等装置関連事業は14.2%増収で3.7%増益、電子デバイス事業は21.0%増収で58.4%増益だった。

 営業外収益では持分法投資利益が増加(前期3億35百万円、今期7億円)し、営業外費用では為替差損が減少(前期14億87百万円、今期6億39百万円)した。特別利益には、中国(杭州)FTHWが持分法適用関連会社に異動したことに伴って持分変動利益52億45百万円を計上した。特別損失には、太陽電池事業およびCVD-SiC事業に関する減損損失20億75百万円を計上した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高205億26百万円で営業利益15億60百万円、第2四半期は売上高210億69百万円で営業利益23億53百万円、第3四半期は売上高249億45百万円で営業利益23億36百万円だった。

 半導体市場が拡大して通期も大幅増益予想としている。さらに22年3月期も収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は年初来高値圏で堅調に推移している。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。5月6日の終値は2410円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS188円37銭で算出)は約13倍、前期推定配当利回り(会社予想の26円で算出)は約1.1%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1303円89銭で算出)は約1.9倍、時価総額は約899億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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