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ファーストコーポレーションは上値試す、期末一括の配当予想を上方修正
- 2021/5/13 08:08
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ファーストコーポレーション<1430>(東1)は造注方式を特徴として、分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。成長戦略として再開発事業にも注力している。21年5月期は完成工事高増加と完成工事総利益率上昇で2桁営業増益予想としている。収益拡大を期待したい。なお5月12日に期末配当予想の上方修正を発表した。株価は4月の年初来高値圏から反落したが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。
■造注方式が特徴のゼネコン
東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。
造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。大手を中心とする優良なマンション・デベロッパーである。
品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。
20年10月には、東京理科大学の認定ベンチャーであるサイエンス構造と、新たな免震集合住宅の工法として「ジーナス(ZENAS)工法」を開発し、建築構造物の「新構造システム」に関する特許および実用新案を共同出願した。
完成工事高の収益認識は工事進行基準だが、不動産売上(マンション用地販売)によって四半期業績が変動する可能性がある。利益還元方針は、配当性向30%以上で経営成績や内部留保確保等を勘案して決定するとしている。
■利益率向上を図る
中期経営計画「Innovation2020」では目標数値を、23年5月期売上高260億円、営業利益22億54百万円、経常利益22億円、純利益14億82百万円、受注高220億円としている。
業容の拡大と利益水準の向上に継続的に取り組むとともに、重点施策として中核事業(造注方式、建築事業)強化の継続、再開発事業への注力、事業領域拡大(大規模修繕、収益不動産など)による新たな価値創出、人材の確保・育成および働き方改革の推進に取り組む。
再開発事業への注力では、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に共同施工者として参画し、20年11月に施設建築物新築工事を着工(JV受注、24年完成予定)している。前橋市内初の超高層免震タワーマンションとなる。4月には名称を「Brillia Tower」に決定し、販売活動を開始した。さらに他の再開発案件にも積極的に参画していく方針だ。
また中期的な定量目標としては、完成工事総利益率13%以上、売上高営業利益率8%以上、自己資本純利益率(ROE)20%以上、自己資本比率50%以上を目指すとしている。造注比率向上と生産性向上による利益率の底上げ、内部留保の蓄積による自己資本の充実、手持不動産の売却および有利子の圧縮による財務体質の向上を図る方針だ。
なお21年8月開催予定の第10回定時株主総会での承認を前提として、監査等委員会設置会社に移行する。
■21年5月期2桁営業増益予想、配当予想を上方修正
21年5月期業績(非連結)予想は、売上高が20年5月期比9.9%減の211億円、営業利益が11.7%増の15億円、経常利益が9.5%増の14億20百万円、当期純利益が9.5%増の9億55百万円としている。受注高の計画は9件合計で51.5%増の217億円(うち造注方式が4.3倍の80億円)としている。
配当予想は5月12日に期末10円上方修正した。創立10周年記念配当10円を加えて、20年5月期比12円増配の32円(期末一括=普通配当22円+記念配当10円)とした。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比14.3%増の121億28百万円、営業利益が28.4%増の4億13百万円、経常利益が16.8%増の3億69百万円、四半期純利益が24.8%増の2億44百万円だった。
完成工事高が16.3%増の112億19百万円と順調に推移して牽引した。完成工事総利益率は9.7%で0.3ポイント上昇した。共同事業収入は新型コロナウイルスの影響長期化で減少した。なお受注は7件合計175億91百万円だった。
通期は、不動産売上が前期の大型案件の反動(前期は第4四半期に83億32百万円の売上を計上、今期は第4四半期に45億09百万円の売上を計上予定)で減収、共同事業収入が新型コロナウイルスの影響長期化で減収のため、全体として減収予想だが、大型造注案件の受注と進行工事数の増加で完成工事高が増加(18.0%増の151億20百万円の計画)し、完成工事総利益率の上昇(前期実績9.4%、今期計画10.2%)も寄与して2桁営業増益予想としている。さらに計画外案件の成約によって利益の上積みを目指すとしている。通期ベースでも収益拡大を期待したい。
なお金融機関からの借入金22億円については販売用不動産売却予定時期を鑑み、返済期限を4ヶ月延長して販売用不動産売却時に一括繰上返済の予定としている。
また5月12日には販売用不動産の売却(千石ファーストビル、引渡日21年6月10日予定)を発表した。売却金額は直前事業年度における経常利益と当期純利益の30%に相当する額以上となる見込みで、22年5月期業績予想に織り込む予定としている。
■株主優待制度は毎年11月末の株主対象
株主優待制度は毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈(20年11月末適用から変更、詳細は会社HP参照)する。
■株価は上値試す
20年5月26日発表の自己株式取得(上限100万株・7億円、取得期間20年6月1日~21年5月31日)については、21年4月20日時点で累計取得株式数100万株となって終了した。
株価は4月の年初来高値圏から反落したが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。5月12日の終値は780円、今期予想PER(会社予想EPS75円76銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想32円で算出)は約4.1%、前期実績PBR(前期実績BPS466円55銭で算出)は約1.7倍、時価総額は約104億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)