ジャパンフーズは反発の動き、22年3月期黒字回復予想

 ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託製造の国内最大手である。持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、新規商材受注や積極的設備投資による競争力向上を推進している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響で減収・赤字だった。22年3月期は新型コロナウイルスの影響緩和や新SOT缶ラインの本格稼働による受注増加、さらに低重心経営によるコスト削減などで黒字回復予想としている。株価は黒字回復予想を好感して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■飲料受託生産の国内最大手、フレキシブルな生産体制が強み

 伊藤忠商事<8001>系で、飲料受託製造の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーである。品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ラインは、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産体制が強みだ。

 新規ビジネス分野として、連結子会社JFウォーターサービスは水宅配・ウォーターサーバーメンテナンス事業を展開している。また国内で水宅配フランチャイズ事業を展開するウォーターネット、および中国で清涼飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(東洋製罐と合弁)を持分法適用関連会社としている。

 収益面の特性として、個人消費や天候などの影響を受けやすい。また飲料業界全体が、夏場の上期(4~9月)に繁忙期となって生産量が増加するのに対して、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。

■「100年企業」目指して積極的設備投資

 中期経営計画「JUMP+プラス2021 次のステージへ」では、持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、経営課題である「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」に対する取り組みを確実に進化させる方針としている。

 経営目標値には22年3月期売上高189億円、営業利益10億円、経常利益11億円、純利益7億50百万円、ROE7.6%などを掲げている。配当については、定額の安定配当(1株当たり27円)に加えて、期間業績に応じて配当性向20%を限度とする期末配当の増配を行う方針としている。

 重点戦略としては、コアセグメント(国内飲料受託製造)における積極的設備投資による競争力向上、新規セグメント(東洋飲料、ウォーターネット、JFウォーターサービス)における既存事業拡充、新たなビジネスモデル創出(オペレーション・メンテナンス技術の活用・収益化など)を掲げている。また総合スクラップ&ビルド第2フェーズとして、工場建屋およびSOT缶ラインの新設を進めている。

 飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量減少を懸念する見方もあるが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。

 このため飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まり、飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮している。

■21年3月期は新型コロナ影響で赤字だが、22年3月期は黒字回復予想

 21年3月期連結業績は、売上高が20年3月期比21.0%減の123億78百万円、営業利益が7億50百万円の赤字(20年3月期は4億08百万円の黒字)、経常利益が5億64百万円の赤字(同4億58百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が4億98百万円の赤字(同1億19百万円の黒字)だった。配当は20年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)とした。

 大幅減収で赤字だった。海外飲料受託事業の伸長などで事業取込利益が拡大(当期純利益ベースで2億08百万円増加の2億26百万円)したが、主力の国内飲料受託製造事業が新型コロナウイルスによる市場環境悪化の影響を受けた。国内受託製造数は23.7%減少した。新型コロナウイルスによる当期純利益への影響額は、受注減少が23億50百万円のマイナス要因、変動経費減少が10億円のプラス要因、差し引き13億50百万円のマイナス影響だった。

 なお従来予想との比較で見ると、営業利益(従来予想8億20百万円の赤字)はコスト削減などで赤字縮小したが、当期純利益(同3億50百万円の赤字)は繰延税金資産の一部取崩で1億61百万円の法人税等調整額を計上したため赤字拡大した。

 22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期比16.8%減の103億円、営業利益が4億40百万円の黒字(21年3月期は7億50百万円の赤字)、経常利益が5億10百万円の黒字(同5億64百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が4億円の黒字(同4億98百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)である。

 事業取込利益は86百万円減少見込み(当期純利益で21年3月期2億26百万円から22年3月期1億40百万円に減少)だが、新型コロナウイルスの影響緩和や新SOT缶ラインの本格稼働による受注増加(国内製造数は25.9%増の計画)、さらにコスト削減(低重心経営による変動費・固定費削減の更なる進捗)効果などで、単体ベースの収益が9億84百万円回復(当期純利益で21年3月期7億24百万円の赤字から22年3月期2億60百万円の黒字に回復)し、全体として黒字回復予想としている。

 なお純利益ベースでの新型コロナウイルス影響額は10億円のマイナス要因、低重心経営によるコスト削減効果は7億円のプラス要因の計画としている。期前半は新型コロナウイルスの影響が残るが、収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は反発の動き

 株価は22年3月期黒字回復予想を好感して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。5月19日の終値は1240円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS82円94銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の27円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1491円24銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約63億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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