ファンデリーは調整一巡、22年3月期大幅増収・黒字化予想

 ファンデリー<3137>(東マ)は健康食宅配サービスを主力として、ヘルスケア総合企業を目指している。21年3月期は新型コロナ影響や新サービスに係る評価損計上などで減収・赤字だった。22年2月期は積極的な販売促進策を実行して大幅増収・黒字化予想(上期は赤字、下期に黒字転換)としている。通期ベースで収益回復を期待したい。さらに健康食宅配市場の拡大も背景として中期成長を期待したい。株価は反発力が鈍く安値圏だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■健康食宅配サービスが主力

 通販カタログ「ミールタイム」を活用した健康食(冷凍弁当)宅配サービスのMFD(Medical Food Delivery)事業を主力としている。

 20年7月に新商品「旬をすぐに」の発売を開始し、21年3月期第2四半期からセグメント区分を「ミールタイム」のMFD事業、「旬をすぐに」のCID(Cooking Immediately Delivery)事業、および周辺領域のマーケティング事業の3区分に変更した。21年3月期の事業別売上高構成比はMFD事業が87%、CID事業が1%、マーケティング事業が12%だった。

 中期経営計画「will2022」では目標値に23年3月期売上高100億円、営業利益20億円、営業利益率20%を掲げている。ヘルスケア総合企業を目指し、初の生産拠点となる埼玉工場が稼働してSPA(製造小売業)モデルへの事業構造転換を推進する。一人暮らし高齢者の増加、生活習慣病患者や食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場は拡大基調だろう。

 なお21年4月には、食や健康に関する新たなWEBサービスの提供や収益源の多様化を推進することを目的として、メディア事業部を新設した。

■健康食通販カタログ「ミールタイム」のMFD事業

 MFD事業は健康食通販カタログ「ミールタイム」を医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から注文を受けて宅配する。従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指していることが特徴だ。管理栄養士・栄養士が顧客の疾病・制限数値・嗜好などに合わせてメニューを選び、定期的に届ける「栄養士おまかせ定期便」も提供している。

 全国の医療機関や調剤薬局など2万ヶ所以上の紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得、専門性の高い栄養士による「ヘルシー食」など多様な健康食の開発やカウンセリングが強みである。

■新商品「旬をすぐに」のCID事業

 20年7月に新商品「旬をすぐに」の発売を開始した。健康な身体はバランスの良い食事からという考えのもと、食の安心・安全にこだわり、国産食材100%であること、健康被害の恐れのある67種類の食品添加物を使用していないこと、食材ごとに異なる最適な加熱温度特許技術で1℃単位のコントロールを行っていること、冷凍工学に基づいた究極の特許冷凍技術で-70℃の瞬間凍結を行っていることなど、従来の冷凍弁当とは一線を画すクオリティを特徴としている。

 管理栄養士が考えた栄養バランスや、特許加熱・冷凍による美味しさが特徴のメニュー構成である。さらに、独自のネットワークを活用して四季ごとの旬の国産食材を使用するため、同じメニューは一度しか作らない「一期一会のメニュー」として、週6種類以上のペースで新メニューを発売している。

 立ち上げが計画に対して遅れたが、拡販や収益性改善に向けた取り組みを推進している。20年12月には大量調理で生じる食品ロスの料理を即時メニュー化して販売する取り組みを開始した。フードロス削減にも貢献する取り組みだ。また最低購入金額の引き下げと購入金額に応じた送料体系への変更を実施した。

 21年1月には新配送体系で最短翌日配達を開始、ワンランク上の美味しさを追求した新ブランドPREMIUMシリーズの販売を開始した。21年3月には「旬をすぐに」の新メニューを発表するYouTubeチャンネル「旬チューバー」がYouTubeパートナープログラムに承認されたと発表した。今後はチャンネルの収益化も可能となる。

■周辺領域のマーケティング事業

 マーケティング事業は健康食宅配サービスから派生した周辺事業として、食品メーカーなどへの健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、食品メーカーからの商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などを展開し、収益源の多様化を推進している。

■健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」

 日々の食事において塩分摂取量を適正に保つことの重要性を啓蒙し、日本全体の健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」を開始した。20年4月から3年間の活動を予定している。

 賛同企業として20年6月に、にんべん、エバラ食品工業、はごろもフーズ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、キング醸造、理研ビタミンが加入した。その後も7月には東洋水産、キッコーマン、ハナマルキ、ヤマキ、紀文食品、日清食品、ミツカン、ひかり味噌、神州一味噌、8月にはピエトロ、湖池屋、宝酒造、9月には田中食品、白鶴酒造、シマヤ、日清フーズ、21年3月には雪印メグミルク、21年4月には三幸製菓、くらこん、エースコックが加入し、賛同企業は27社、認定商品は64商品となった。

■21年3月期は赤字、22年3月期は大幅増収・黒字化予想

 21年3月期業績(非連結)は、売上高が20年3月期比8.5%減の30億62百万円、営業利益が5億53百万円の赤字(20年3月期は5億39百万円の黒字)、経常利益が5億59百万円の赤字(同5億36百万円の黒字)、当期純利益が3億74百万円の赤字(同3億45百万円の黒字)だった。売上高が従来予想を下回り、赤字幅も拡大した。配当は20年3月期と同額の3円(期末一括)とした。

 MFD事業が10.6%減収、0.7%営業減益と苦戦した。新型コロナウイルスの影響で紹介ネットワーク(医療機関等)からの新規顧客獲得が低調だった。20年7月開始のCID事業は11億02百万円の営業赤字だった。製品評価損の計上、埼玉工場に係る初期費用の発生、広告掲載や無料サンプリング・キャンペーンによる広告宣伝費の増加などが影響した。マーケティング事業は0.5%増収で2.8%営業増益と堅調だったが、大型案件の獲得に至らず計画を下回った。

 なおCID事業の製品評価損については、以下の2つの理由の合計として6億64百万円を計上している。第一は、21年3月期に損益分岐点に達していないことに伴う製品評価損(発生した製造原価のうち製品の販売価格を超えている部分を製品評価損として計上)である。第二は、22年3月期に賞味期限到来までに販売できず、将来の損失発生の可能性が見込まれる製品在庫に係る製品評価損である。

 22年3月期業績(非連結)予想は売上高が21年3月期比26.5%増の38億74百万円、営業利益が1億円の黒字(21年3月期は5億53百万円の赤字)、経常利益が92百万円の黒字(同5億59百万円の赤字)、当期純利益が68百万円の黒字(同3億74百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の3円(期末一括)である。

 MFD事業は積極的な販売促進によって14.6%増収で6.4%営業増益、CID事業はSNS活用などによる知名度向上によって8.8倍増収で営業赤字縮小、マーケティング事業はO2Oサービスへの注力によって52.8%増収で60.3%営業増益の計画としている。

 なお上期は営業赤字が残るが、MFD事業およびマーケティング事業の利益でCID事業の損失をカバーし、下期に黒字転換予想としている。通期ベースで収益回復を期待したい。

 さらに一人暮らし高齢者の増加、生活習慣病患者や食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場の拡大が予想されており、健康食メニュー開発力を強みとして中期成長も期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く安値圏だが、調整一巡して出直りを期待したい。5月21日の終値は644円、今期予想PER(会社予想のEPS10円83銭で算出)は約59倍、今期予想配当利回り(会社予想の3円で算出)は約0.5%、前期実績PBR(前期実績のBPS408円82銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約42億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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