【特集】株主提案権を行使された出遅れ株・鉄スクラップ関連の静脈産業株に注目

■株主総会を控え取締役会で反対決議でも株主還元圧力が株高圧力

 今週の当特集では、出遅れクラスター株に注目することとした。一つ目のクラスター株は、6月に相次いで開催される定時株主総会に関連して株主提案権を行使された出遅れ株である。もう一つはピークアウトした3月期決算発表時に業績サプライズとなったクラスター株のいわば落穂拾いで鉄スクラップ関連の静脈産業株である。この多くが、1部半的な小型株となっており、仮に6月相場が、エレべータ相場になったとしても、小回りは効きそうだ。

 株主提案株のシンボル株として先行性を発揮しそうなのが、荏原実業である。同社株は、今年2月に投資ファンドから特別配当・普通配当の株主提案を受けたが、反対の取締役会を決議した。ただ同社の配当は、前12月期業績の上方修正のたびに増配され年間140円まで増配幅を伸ばし、今年5月18日に発表した株式分割(基準日6月30日、1株を2株に分割)では、配当を実質10円増配、年間150円とした。株価は、取締役会決議してから約30%高、上場来高値追いとなった。「モノ言う株主」などの株主提案が、株主還元圧力となり株高圧力となったことを株価上昇で実証したことになる。

 今年年初以来、株主提案を受けて反対決議などをした株主還元余力のある出遅れ株は、発表順に以下の通りとなる。世紀東急工業<1898>(東1)、東京製綱<5981>(東1)、デジタルホールディングス<2389>(東1)、極東貿易<8093>(東1)、浅沼組<1852>(東1)、住友商事<8053>(東1)、西川ゴム<5161>(東2)、日本電計<9908>(JQS)、有沢製作所<5208>(東1)、乾汽船<9308>(東1)、東都水産<8038>(東1)、日鉄ソリューション<2327>(東1)、ワキタ<8125>(東1)である。

 東京製綱は結局、日本製鉄<5401>(東1)により敵対的な株式公開買い付け(TOB)を実施されたが、PBRはまだ0・8倍にとどまっており、TOB価格1500円を意識してコーポレート・ガバナンス圧力が高まることになる。残りの銘柄も、多くはPBR1倍以下となっており同様の展開が有力になりそうだ。

■景気敏感の鉄スクラップ価格上昇が再資源化事業の上方修正をサポート

 静脈産業株では5月14日大引け後にイボキン<5699>(JQS)、エンビプロ・ホールディングス<5698>(東1)、リバーホールディングス<5690>(東2)が、同時に今6月期業績や今12月期業績を上方修正してクラスターを形成した。資源リサイクル事業で、鉄スクラップの価格の上昇と取扱量の増加が上方修正要因となり、エンビプロHDとリバーHDは2回目の上方修正で、イボキンは配当も増配、エンビプロHDは2回目の増配も発表した。

 ただ株価は、イボキンは窓を開けて急伸したものの、エンビプロHDは同時発表の自己株式立会外分売(分売価格991円)、またリバーHDは、今年10月に共同持株会社設立で経営統合するタケエイ<2151>(東1)との比較感で限定的な反応にとどまった。ただ3社ともPERは、7倍~12倍の評価にとどまっており、再騰も想定範囲内になる。また前期業績を上方修正した松田産業<7456>(東1)、要興業<6566>(東2)、ダイセキ環境ソリューション<1712>(東1)などもクラスターの一角として見直され、人気波及となりそうだ。

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