京写はメイコーと資本業務提携、22年3月期大幅増益予想

 京写<6837>(JQ)はプリント配線板の大手メーカーである。独自の印刷技術を活用し、電子部品業界の微細化ニーズに対応した新製品による差別化・シェア拡大戦略を推進している。5月24日にはメイコー<6787>との資本業務提携を発表した。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。22年3月期は受注回復基調で大幅増益予想としている。収益拡大を期待したい。株価は緩やかに下値を切り上げている。資本業務提携を評価して上値を試す展開を期待したい。

■プリント配線板の大手メーカー

 プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。

 プリント配線板はスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板や、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。

 20年3月期の売上高は日本98億34百万円、中国78億91百万円、インドネシア12億96百万円、営業利益は日本▲2億13百万円、中国3億12百万円、インドネシア▲43百万円だった。

 用途別売上構成比は、自動車関連(ライト、電装品など)が32.9%、家電製品(LED照明、エアコンなど)が22.6%、事務機(複写機、プリンターなど)が11.0%、電子部品・電子機器(電源、モーター、制御装置など)が9.1%、映像関連(薄型テレビなど)が6.7%、アミューズメント(家庭用ゲーム機など)が1.3%、その他(音響機器、通信機器など)が16.4%だった。収益面では自動車や家電などの生産動向の影響を受けやすいが、幅広い用途と顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。

 生産は国内、中国、インドネシアに拠点展開している。片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。18年5月には中国で両面配線板および多層配線板の生産を委託しているサンティス香港、およびその子会社のサンティス南沙と資本・業務提携した。19年6月にはメキシコ子会社で実装搬送治具の製造を開始した。

 両面配線板の新たな生産拠点であるベトナム新工場(京写ベトナム)については、新型コロナウイルスによる渡航制限の影響で立ち上げが遅れたが、21年1月販売開始した。なお京写ベトナムには自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が6.7%出資している。20年12月には「ベトナム両面プリント配線板増産投資計画」が、経済産業省・JETRO「海外サプライチェーン多元化等支援事業」に採択された。

 5月24日にはメイコー<6787>との資本業務提携を発表した。両社はともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なり、棲み分けができている。また商社とも中国、ベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。なお両社は株式市場において相互の株式を取得する。出資額は双方の株式購入額が1億円に達するまでとして、取得期間は今後6ヶ月間を予定している。

■独自印刷技術を活用した新製品でシェア拡大目指す

 中期経営計画(20年3月期~24年3月期)では、目標数値に24年3月期の売上高320億円、営業利益15億円、営業利益率4.7%、ROE10%、配当性向25%以上を掲げている。

 製品別の売上高は片面配線板145億円(独自技術を活用した金属基盤46億円を含む)、両面配線板125億円、新製品15億円、実装関連10億円で、拠点別売上高(連結調整前)は日本140億円、中国145億円、インドネシア25億円、ベトナム50億円としている。

 6つの重点戦略として、グローバル生産・販売戦略(グローバル供給体制によるソリューション提供)、企業間提携戦略(戦略的ネットワークによる競争優位獲得)、効率化戦略(IT化・自動化によるコスト競争力強化)、技術戦略(独自の印刷技術を活用した新製品による差別化・シェア拡大)、財務戦略(成長実現に向けたキャッシュ・フロー経営)、および人財戦略を推進する。

 グローバル供給体制は、優位性のある片面配線板や印刷技術の提案、ベトナムにおける両面配線板生産体制の確立、営業拠点の再編・最適化、メキシコEMSやアセアンEMSへの治具販売強化などを推進する。戦略的ネットワークによる競争優位獲得は、主要材料メーカー・EMS・商社・OEM協力先・同業との戦略的業務提携・パートナーシップ構築による製品開発や販路拡大、産学官連携による共同研究などを推進する。

 IT化・自動化によるコスト競争力強化は、生産地・生産方式の最適化、新潟工場の能力アップと京都工場の少量多品種化、AIスマート工場化など省人化・自動化投資を継続的に推進する。独自の印刷技術を活用した新製品による差別化・シェア拡大は、両面から片面への基板低層化提案、0603実装部品対応基板など電子部品業界における微細化ニーズへの対応、金属基盤やストレッチャブル基板の量産などを推進する。

 成長実現に向けたキャッシュ・フロー経営は、成長事業への優先投資と早期収益化による投資回収、自己資本の充実、有利子負債の適正化、積極的な株主還元などを推進する。人財戦略は、グローバルマネジメント人材の育成、グループCSR体制の構築、BCP・BCMのグローバル展開、職場環境の向上、ITやIoT活用による業務効率化などを推進する。

 20年1月にはスクリーン印刷法による治具製造技術をベースとして、世界初のノンシリコーンでも高温工程で繰り返し使用可能な部品搬送用キャリアの開発を発表した。国内工場で試作品の受注を開始している。

■受注回復基調で22年3月期大幅増益予想

 21年3月期の連結業績は、売上高が20年3月期比8.9%減の173億34百万円、営業利益が23.7%増の98百万円、経常利益が62.4%増の1億59百万円、親会社株主帰属当期純利益が1億35百万円の赤字(20年3月期は1百万円の黒字)だった。配当は無配とした。

 新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で自動車関連、事務機関連、LED照明関連などの需要が減少して減収だった。ただし第2四半期後半から受注が回復基調となり、生産性向上や業務効率化による経費削減なども寄与して、営業・経常利益は従来の赤字予想から一転して大幅増益で着地した。なお当期純利益は、中国の連結子会社(京写広州)で過年度法人税等1億58百万円を計上したため赤字だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高40億06百万円で営業利益1億08百万円の赤字、第2四半期は売上高38億54百万円で営業利益65百万円の赤字、第3四半期は売上高46億52百万円で営業利益1億01百万円の黒字、第4四半期は売上高48億22百万円で営業利益1億70百万円の黒字だった。受注が回復基調である。

 22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期比12.5%増の195億円、営業利益が3.0倍の3億円、経常利益が87.8%増の3億円、親会社株主帰属当期純利益が1億20百万円の黒字(21年3月期は1億35百万円の赤字)とした。配当予想は復元配で5円(期末一括)としている。

 新型コロナウイルスの影響が長期化しているが、受注が回復基調であり、大幅増益予想としている。中期成長に向けて、21年1月稼働したベトナム工場の量産体制の早期確立、新規コア製品の開拓、抜本的業務改善の継続、開発商品の事業化などを推進する方針だ。収益拡大を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は緩やかに下値を切り上げている。資本業務提携を評価して上値を試す展開を期待したい。5月24日の終値は306円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円37銭で算出)は約37倍、今期予想配当利回り(会社予想の5円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS434円76銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約45億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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