朝日ラバーは調整一巡、22年3月期増収・営業黒字化予想

 朝日ラバー<5162>(JQ)は、自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の拡大も推進している。21年3月期は新型コロナ影響による車載用の需要減少などで減収・営業赤字だった。ただし従来予想に対して営業赤字幅が縮小した。22年3月期は需要回復基調で増収・営業黒字化予想としている。収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力

 シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。

 21年3月期セグメント別売上構成比は工業用ゴム事業82%、医療・衛生用ゴム事業18%、営業利益構成比(調整前)は工業用ゴム事業52%、医療・衛生用ゴム事業48%だった。

■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信

 2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。

 中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。

 そして最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円とした。

 光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。

 なお21年3月期の中期事業分野別の売上高は、光学事業が15.7%減の28億90百万円、医療・ライフサイエンス事業が1.4%減の12億06百万円、機能事業が15.6%減の17億59百万円、通信事業が16.0%減の6億31百万円だった。主要製品の売上高はASA COLOR LEDが15.8%減の27億12百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が4.3%減の11億38百万円、卓球ラケット用ラバーが27.9%減の3億09百万円、RFID用ゴム製品が18.4%減の4億76百万円だった。新型コロナウイルス影響による需要減少で低調だった。

 技術開発では、RFIDタグ用ゴム製品で培った技術を活用した簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LEDなどの開発を推進している。

 20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。

 20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術を開発したと発表している。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。

 さらに20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。認証取得も武器として、グローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる。

■22年3月期は減収・営業赤字、22年3月期は増収・営業黒字化予想

 21年3月期の連結業績は売上高が20年3月期比13.4%減の64億87百万円、営業利益が92百万円の赤字(20年3月期は3億25百万円の黒字)、経常利益が94.7%減の18百万円、親会社株主帰属当期純利益が10.2%減の1億13百万円だった。配当は20円減配の10円(期末一括)とした。

 新型コロナ影響による車載用の需要減少などで減収・営業赤字だった。ただし期後半に需要が回復基調となり、従来予想に対して上振れて着地した。営業利益は赤字幅が縮小した。工業用ゴム事業は15.9%減収で72.8%減益、医療・衛生用ゴム事業は5.1%減収で40.0%減益だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高14億30百万円で営業利益27百万円の赤字、第2四半期は売上高14億19百万円で営業利益1億52百万円の赤字、第3四半期は売上高17億46百万円で営業利益19百万円の黒字、第4四半期は売上高が18億92百万円で営業利益が68百万円の黒字だった。第3四半期以降は需要回復基調となった。

 22年3月期連結業績予想は、売上高が21年3月期比10.7%増の71億81百万円で、営業利益が2億83百万円の黒字(21年3月期は92百万円の赤字)、経常利益が2億81百万円の黒字(同18百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が84.6%増の2億10百万円としている。配当予想は10円増配の20円(期末一括)である。

 需要回復基調で増収・営業黒字化予想としている。なお自動車向けゴム製品の受注は上期堅調だが下期不透明、医療用ゴム製品は第四半期が在庫調整だが第2四半期以降回復の見通しとしている。

 売上高計画は工業用ゴム事業が13.3%増収、医療・衛生用ゴム事業が1.6%減収としている。中期事業別分野には、光学事業がASA COLOR LEDの回復で14.6%増収、医療・ライフサイエンス事業が第1四半期の在庫調整の影響で5.6%減収、機能事業がスイッチ用など自動車関連の回復で32.1%増収、通信事業が北米市場のRFIDタグ用ゴム製品が低調で35.4%減収の見込みとしている。収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く上値を切り下げる形だが、調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。5月26日の終値は629円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS46円29銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS976円73銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約29億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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