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ミロク情報サービスは売られ過ぎ感、22年3月期減益予想だが保守的
- 2021/5/31 07:46
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売・サービスを展開し、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームの構築を目指している。21年3月期は特需の反動や新型コロナ影響などで営業・経常減益だった。ただし従来予想に対して上振れ着地した。22年3月期は新型コロナ影響の継続やソフトウェア提供形態のシフトなどを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。上振れを期待したい。株価は安値圏での軟調展開が続いているが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。
■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービスが主力
会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。会計事務所が抱えている課題を解決することで、中堅・中小企業支援にも繋がるトータルソリューションを強みとしている。
クラウドサービス・サブスクリプションモデルへの変革を推進するとともに、企業の売上拡大・企業価値向上を支援するため、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームの構築を目指している。21年3月には中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」の販売を開始した。AI機能を拡充し、業務のDX推進をサポートする。
21年3月期の売上高構成比は、システム導入契約売上高が57%(システム導入契約時のハードウェア11%、ソフトウェア33%、システム導入支援サービスなどのユースウェア13%)、サービス収入が36%(会計事務所向け総合保守サービスTVS7%、ソフト使用料7%、企業向けソフトウェア運用支援サービス16%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入4%、サプライ・オフィス用品など継続的な役務の対価2%)、その他が8%だった。
収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型収益が伸長して収益力が向上している。新規顧客開拓にも注力し、21年3月期の新規企業向け売上高比率は5.2ポイント上昇して34.0%となった。
またAPI契約またはスクレイピング契約により、同社の製品・サービスから連携可能な金融機関は、21年2月時点で国内金融機関1270のうち1118(カバー率88.0%)に達している。
■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進
21年5月策定の中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、グループ経営目標値に26年3月期売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げた。既存ERP事業ではデジタルマーケティングを取り込み、サブスクモデル比率を高めて安定収益源確保・継続的成長を実現する。新規事業ではデジタル・非対面時代に誰もが簡単にDXを実現できる統合型DXプラットフォームの国内N.1を目指す。
基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。
■M&A・アライアンスを積極活用
20年4月には組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にはフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTが、セントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化した。
20年10月には送金アプリ「pring(プリン)」を展開するpring社と資本業務提携、20年11月にはリーガルテック企業であるリセと資本業務提携した。20年12月にはデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化した。
21年1月には信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画した。またゼロ知識照明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。次世代ビジネス・プラットフォームの構築を目指す。
21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合して、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。
■社会全体のDXを推進
なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表した。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げた。
20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。
■21年3月期営業・経常減益だが上振れ、22年3月期減益予想だが保守的
21年3月期連結業績は、売上高が20年3月期比4.0%減の340億66百万円、営業利益が13.4%減の45億26百万円、経常利益が15.1%減の45億11百万円、親会社株主帰属当期純利益がソフトウェア評価損一巡で44.3%増の26億54百万円だった。配当は20年3月期と同額の38円(期末一括)とした。
Windows7サポート終了に伴うPC入れ替え特需の反動減、新型コロナ影響による営業・システム導入支援活動の制約などで減収、営業・経常減益だった。ただし従来予想に対して上振れ着地した。
システム導入契約売上高はPCの反動減などで13.5%減収だった。サービス収入はサブスクリプションモデルの増加や新規顧客の保守契約の増加などで10.1%増収と順調だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高79億32百万円で営業利益9億92百万円、第2四半期は売上高85億90百万円で営業利益14億97百万円、第3四半期は売上高84億39百万円で営業利益11億16百万円、第4四半期は売上高が91億05百万円で営業利益9億21百万円だった。
22年3月期の連結業績予想は、売上高が374億円、営業利益が40億30百万円、経常利益が40億円、そして親会社株主帰属当期純利益が23億80百万円としている。配当予想は21年3月期と同額の38円(期末一括)である。
収益認識に関する企業会計基準第29号を適用するため、前期比増減率は非記載だが、21年3月期実績値との単純比較で見ると、売上高が9.8%増収、営業利益が11.0%減益、経常利益が11.3%減益、当期純利益が10.3%減益となる。新型コロナ影響の継続、ERP製品のサブスクモデルへの段階的移行の影響、採用増に伴う人件費の増加などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。上振れを期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は安値圏での軟調展開が続いているが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。5月28日の終値は1620円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS78円19銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の38円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS655円66銭で算出)は約2.5倍、時価総額は約564億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)