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アスカネットは調整一巡感、22年4月期収益拡大期待
- 2021/5/31 07:30
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、葬祭市場をIT化する葬Techや、非接触ニーズで注目される空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)事業を推進している。21年4月期は新型コロナ影響で減収減益だが、生産性向上効果などで従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みだ。さらに22年4月期の収益拡大を期待したい。株価は安値圏でモミ合う形だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。なお6月11日に21年4月期決算発表を予定している。
■写真加工関連を主力として、空中結像AIの事業化を推進
葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、既存分野では葬祭市場をIT化する葬Tech、非接触ニーズで注目される空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)事業を推進している。
20年4月期の売上構成比はMDS事業38.9%、PPS事業59.5%、AI事業1.6%だった。なお22年4月期から事業名を、フューネラル事業(従来のメモリアルデザインサービス事業)、フォトブック事業(従来のパーソナルパブリッシングサービス事業)、空中ディスプレイ事業(従来のエアリアルイメージング事業)に改称する。
MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。
なお人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。
■MDS事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進
MDS事業は、専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。20年4月期末のハード設置件数は2562ヶ所、20年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約35.6万枚、電照焼増枚数が約13.7万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため、推定市場シェアは約30%(1位)である。
成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」(特許取得済)の浸透など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。
20年8月には「tsunagoo」の機能として新型コロナウイルスで葬儀に参列できない方向けの「香典受付サービス」を追加、20年11月には故人を偲ぶ「inori」の提供を開始した。21年1月には「tsunagoo」による訃報作成数が累計5万件を突破した。
21年1月には、スマートフォンややパソコンから簡単に出産報告や出産お祝い金の受け渡しができるWebサービス「e-tayori(いい・たより)」(特許出願中)を開始した。当サービスによって、新たなコミュニケーション文化を創出していく方針としている。
なお21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500ヶ所を突破した。全国の葬儀場約9200ヶ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透したことになる。
■PPS事業はOEMが拡大
PPS事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。20年4月期時点で約4590社の写真館向けなどに、BtoBとBtoCの合計(OEM除く)で年間約45万冊提供している。なお20年10月には「マイブック」を、姉妹サービス「マイブックライフ」「オートアルバム」と統合リニューアルした。
またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。21年1月にはOEM独占供給しているNTT印刷「パーソナル知育絵本」の一般向け販売を開始した。
■AI事業は空中結像ASKA3Dプレートの本格量産目指す
空中結像のAI事業は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。
高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレート、および大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートの開発・製造・販売を進めている。樹脂製ASKA3Dプレートは、国内外合計約200社に試作品を販売し、顧客側で組込製品化の検討を進めている。
生産面では月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行している。一部工程の生産設備を増強することで比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。
営業面では20年11月に海外販売体制拡充に向けて、米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。
またASKA3Dプレートの従来よりも大きい新サイズを開発し、4月1日からサンプル販売受付を開始している。10インチ相当の画面サイズまで空中結像を可能にしたことで、操作パネルとしての用途拡大が期待されている。
なおASKA3Dプレートは、5月6日にオープンしたひろぎんホールディングス<7337>本社ビルで、サイネージ用途と製品組込用途で採用された。
■21年4月期は減益幅縮小、22年4月期収益拡大期待
21年4月期の業績(非連結)予想(12月8日に下方修正、5月21日に利益を上方修正)は、売上高が20年4月期比12.2%減の57億73百万円、営業利益が61.1%減の2億76百万円、経常利益が53.5%減の3億30百万円、当期純利益が54.5%減の2億28百万円としている。利益予想を上方修正し、従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みとした。
全体の売上高は新型コロナ影響でほぼ従来予想水準(従来予想に対して1百万円未達)だが、パーソナルパブリッシングサービス事業において売上高が想定を上回り、生産性が向上した。さらに全社的な費用削減なども寄与して各利益(営業利益を76百万円、経常利益を80百万円、当期純利益を64百万円、それぞれ上方修正)は、従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みだ。なお配当予想は据え置いて3円減配の7円(期末一括)としている。
21年4月期は新型コロナ影響で減収減益だが、22年4月期の収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年4月末の株主対象
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。
なお21年2月に株主優待制度の変更を発表している。利用可能商品の選択肢を増やしてほしいとの要望に応え、多くの商品への利用が可能になるよう一部割引利用券の金額を変更(詳細は会社HP参照)した。
■株価は調整一巡感
株価は安値圏でモミ合う形だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。5月28日の終値は1014円、前期推定PER(会社予想のEPS13円59銭で算出)は約75倍、前期推定配当利回り(会社予想の7円で算出)は約0.7%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS341円45銭で算出)は約3.0倍、時価総額は約177億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)