【どう見るこの相場】低PERのEPSランキング上位銘柄は「稼ぐ力」が景気敏感株人気に追い風

銘柄

 何だか隔世の感がして、大袈裟にいえば浦島太郎の心境である。しばらくみないうちに、回りの風景が大きく変わってしまった。日本経済新聞の証券面に掲載されている「投資指標」である。予想PER(株価収益率)の各市場別の格差が、気が付いたら様変わりしていたのだ。前週末28日終値現在で、日経平均採用銘柄の予想PER平均は、14.13倍と最割安銘柄となった。対して東証第1部全銘柄平均が、16.34倍、東証第2部全銘柄平均が17.23倍、ジャスダック市場全銘柄平均が22.79倍と水を開けられている。

 これまでのセオリーからすれば、最割安市場は、内需株中心の東証第2部で、次いで東証第1部全銘柄平均が続き、日経平均株価採用銘柄は、日銀のETF(上場投資信託)買いもあって多少のプレミアムがついて高PERであっても目をつぶるというはずであった。この逆転現象の第一の要因は、もちろん「ソフトバンク効果」との見方も有力である。

 ソフトバンクグループ<9984>(東1)の前2021年3月期の純利益は、4兆9879億円と前々期の9615億円の赤字から大幅黒字転換して日本企業として史上最高となり、上場企業全体の純利益に占める比率は18%に高まったと集計された。今2022年3月期の純利益は、「未確定な要素が多く公表を控える」としたが、日本経済新聞の相場欄では、予想PERを3.1倍と算定しており、EPSは、ほぼ前期並みと想定していることがうかがえる。この予想PER3.1倍は、日経平均採用の225銘柄のうちの断トツの最割安PERであり、株価と同様に全体のPERを引き下げる日経平均寄与度を強め「ソフトバンク効果」を演出したとされている。

 もう一つの要因は、日経平均採用銘柄は、自動車、電機などの外需主力の銘柄が多く、中国や米国の景気回復をいち早く享受し「コロナ・ショック」からのリカバリーが早かったことが上げられる。すでに前2021年3月期業績を期中に複数回、上方修正した銘柄も多く、上場企業全体では純利益は26%増益、今2022年3月期も30%超の増益と集計されており、他市場銘柄より「稼ぐ力」を発揮し、にもかかわらず株価は相対的に出遅れていることを示唆したことになる。

 これを裏付けるように、日経平均採用銘柄の予想PER、実績PERは決算発表とともにどんどん割安方向にシフトした。大型連休前の4月28日の予想PER21.25倍、実績PER24.71倍は、2週間後の5月19日には同13.94倍、17.44倍と下方に動き、前週末28日は、日経平均株価が5月10日以来の2万9000円台回復となったことからそれぞれ14.13倍、18.02倍とややアップした。

 この日経平均採用銘柄の低PERにならって「稼ぐ力」を表す全市場の1株純利益(EPS)のランキング上位銘柄に注目することとした。高EPS銘柄でも、予想PER算出の計算式の分母に当たる株価が高ければ、ランキング上位銘柄でも割高になる。そこでランキング上位に位置して低PERで、なおかつ今期純利益が増益・黒字転換予想にある銘柄に限定することとした。このスクリーニングからは日経平均採用銘柄、東証第1部、第2部、ジャスダック市場、マザーズ市場で景気敏感系中心にバラエティに富む銘柄が浮上しており、6月相場で景気敏感株人気の追い風になることを期待してマークしたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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