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星光PMCはモミ合い煮詰まり感、21年12月期増収増益予想、さらに上振れの可能性
- 2021/6/4 08:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
星光PMC<4963>(東1)は製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、化成品事業を展開し、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)の拡販を推進している。21年12月期増収増益予想である。第1四半期が大幅増収増益と順調であり、通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は戻り高値圏でモミ合う形だが煮詰まり感を強めている。上放れを期待したい。
■製紙用薬品、印刷インキ用・記録材料用樹脂、化成品を展開
DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、樹脂事業(印刷インキ用樹脂、記録材料用樹脂、CNF、19年1月株式追加取得して連結子会社化した台湾・新綜工業の粘着剤)、および化成品事業(子会社KJケミカルズの機能性モノマー)を展開している。
20年12月期の売上高構成比は製紙用薬品事業が58%、樹脂事業が26%、化成品事業が16%、営業利益構成比(調整前)は製紙用薬品事業が49%、樹脂事業が27%、化成品事業が24%だった。
■海外事業拡大・新規事業構築に向けた施策を推進
中期経営計画「New Stage 2021」では、基本方針に国内事業基盤の強化、海外事業拡大・新規事業構築に向けた施策の推進、長期的視点に基づいた経営基盤の構築を掲げている。
国内事業基盤の強化では営業および開発体制の強化、製品ポートフォリオの変革、海外事業拡大・新規事業構築に向けた施策の実施では台湾・新綜工業による粘着剤の事業拡大、ベトナム生産現法設立による製紙用薬品の海外事業拡大、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)事業の拡大、長期的視点に基づいた経営基盤の構築では海外人材の採用・育成、人事・教育制度の整備を推進する。
目標数値には21年12月期の売上高320億円、営業利益30億円、営業利益率9.4%、海外売上高比率30%以上、Green Index(独自に定義した環境戦略製品売上高の18年12月実績を100とした指数)126を掲げている。
セグメント別の目標は、製紙用薬品事業の売上高185億円で営業利益(連結調整前)19億87百万円、樹脂事業(CNF、AgNW、台湾・新綜工業を含む)の売上高92億円で営業利益9億41百万円、化成品事業の売上高43億円で営業利益4億64百万円としている。
19年12月には東南アジアにおける製紙用薬品の生産拠点として、ベトナムにSEIKO PMC VIETNAMを設立(21年末完工予定)した。また樹脂事業では台湾・新綜工業において新工場を建設し、台湾2工場体制(平鎮、観音)を構築して生産能力を倍増させた。
■CNF複合材料の採用拡大
次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースをナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。
18年1月CNF複合材料「STARCEL」ブランドでの商業生産・製品出荷を開始した。18年6月には世界初のCNF強化樹脂応用製品の商品化として、アシックス<7936>の高機能ランニングシューズ製品のミッドソール部材の原材料に「STARCEL」が採用され、全世界で累計500万足以上販売されている。19年10月には環境省NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト製作のコンセプトカーに採用された。
20年8月にはNEDO助成事業の「革新的CNF製造プロセス技術の開発」の助成先に採択されたと発表している。事業期間は20年度~24年度である。さらに自動車用部材への採用を目指して検討を継続している。
なお21年4月には「セルロースナノファイバー複合樹脂製造プロセスの開発」について、京都大学、京都市産業技術研究所と共に、令和3年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞した。
この他の新製品・注目製品として、脱プラスチック・包装材料の紙化を推進する紙塗工用耐水・耐油オールアクリルエマルション、造水膜などに発生するバイオフィルムの形成を抑えるバイオフィルムコントロール剤などの拡販も推進する。
■21年12月期1Q大幅増収増益、通期上振れの可能性
21年12月期連結業績予想は売上高が20年12月期比10.0%増の286億40百万円、営業利益が7.2%増の28億円、経常利益が7.2%増の28億60百万円、親会社株主帰属当期純利益が6.2%増の17億90百万円としている。配当予想は20年12月期と同額の16円(第2四半期末8円、期末8円)である。
需要が回復基調であり、ロジンなど原料価格の上昇、減価償却費や経費の増加などを増収効果で吸収する見込みだ。セグメント別の計画は、製紙用薬品事業は売上高が13.0%増の169億48百万円で営業利益が3.9%増の15億09百万円、樹脂事業は売上高が10.5%増の75億59百万円で営業利益が高付加価値製品の売上増も寄与して35.3%増の10億82百万円、化成品事業は20年後半の海外需要好調の反動などで売上高が1.4%減の41億40百万円で営業利益が13.3%減の6億21百万円としている。
製紙用薬品事業では差別化製品・サービスの提供、高機能製品による新規商権獲得などで、国内外での拡販を強化する。樹脂事業では市場の変化に対応した製品ポートフォリオの抜本的見直し、生産体制の効率化、環境対応樹脂の開発・販売などで収益基盤再構築を図るとともに、既存事業と台湾・新綜工業の粘着剤事業のシナジー創出を推進する。化成品事業では、競争優位の機能性創造モノマー・オリゴマーによる事業基盤強化を推進する。
第1四半期は、売上高が前年同期比13.6%増の75億11百万円、営業利益が62.5%増の9億63百万円、経常利益が77.7%増の10億54百万円、四半期純利益が79.3%増の7億円だった。需要が回復基調となって大幅増収増益だった。
製紙用薬品事業は9.3%増収で38.6%増益だった。国内需要は減少だが、中国・東南アジアで売上が増加した。樹脂事業は25.7%増収で76.8%増益だった。記録材料用樹脂が減収だが、粘着剤や印刷インキ用樹脂が牽引した。化成品事業は10.4%増収で87.0%増益だった。主力の輸出が好調だった。
通期予想を据え置いたが、第1四半期の進捗率は売上高が26.2%、営業利益が34.4%、経常利益が36.9%、当期純利益が39.1%と順調である。需要が回復基調であり、通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。
■株価はモミ合い煮詰まり感
株価は戻り高値圏でモミ合う形だが、下値を切り上げて煮詰まり感を強めている。上放れを期待したい。6月3日の終値は789円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS59円03銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の16円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS885円19銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約243億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)