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インフォマートは戻り試す、21年12月期は上振れの可能性
- 2021/6/9 08:09
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)は国内最大級の企業間電子商取引プラットフォームを運営している。利用企業数は増加基調で、電子契約やDXの流れも追い風となる。21年12月期は先行投資で減益予想としているが、第1四半期が計画比上振れとなり進捗率も高水準だった。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。株価は調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォームを運営
企業間の商行為を電子化するBtoBプラットフォームとして、受発注(従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム)、規格書(食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール)、請求書(請求書発行・受取業務を電子化したシステム)、商談(全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト)、契約書(契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステム)を運営している。
20年12月期の売上構成比はBtoB-PF FOOD事業(受発注、規格書)が76%、BtoB-PF ES事業(商談、請求書、契約書)が24%、その他が1%、営業利益構成比はBtoB-PF FOOD事業が183%、BtoB-PF ES事業が▲83%、その他が▲0%だった。
飲食店と食材卸・メーカー間のBtoB受発注を主力として、全業界を対象とするBtoB請求書も拡大している。21年5月には全業界向け受発注クラウドサービス「TRADE」を追加して7月にリリースすると発表した。
なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年7月には飲食店向け発注予測クラウドサービスのGoalsに出資している。
■利用企業数は増加基調
売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数の増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調であり、継続利用率も高い。21年3月末時点の全体の利用企業数は56万6446社、事業所数は110万1158事業所となった。20年1月~12月の流通金額は12兆7295億円だった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
20年12月には、BtoBプラットフォーム請求書の利用企業数が、サービス開始(15年1月)から5年で50万社を突破した。23年から導入される適格請求書保存方式(インボイス制度)も背景として電子請求書のニーズが拡大基調である。
■営業利益率30%以上目標
中期業績目標には売上高100億円突破、営業利益30億円超、営業利益率30%以上を掲げている。BtoBプラットフォームの徹底的拡充・価値増大に取り組む。
さらに将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組む方針だ。
なお21年4月にはDX推進プロジェクト「Less is More.Project」を始動し、本プロジェクトの理念に賛同して共に活動する参画企業の募集を開始したと発表している。
■アライアンスを推進
20年8月には電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始すると発表した。23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。
20年9月にはGINKANと協業開始した。飲食業界のマーケティング支援から業務管理までのDXを目指す。20年10月には全国の地方銀行21行とのビジネスマッチング契約を拡大した。20年12月には、SCSK<9719>と経理部門の請求書電子データ化やテレワーク導入支援を目的として販売代理店契約を締結した。またブラザー販売とシステム連携した。食品表示ラベル作成で外食産業や中食産業の新たな販路開拓(デリバリー、テイクアウト、通信販売等)を支援する。
21年1月にはダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を締結した。BtoBプラットフォーム請求書を全国規模で展開する。21年2月には、食品卸企業向け受発注・販促サービスを提供するタノムと資本業務提携した。食品卸・飲食業界の受発注業務のDXを推進する。また自治体向けクラウドシステムを手掛けるGcomホールディングスと協業開始した。
21年3月には、三井物産と共同出資の特別目的会社I&Mを設立して中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携、NTT東日本とセールスパートナー契約を締結、三井物産グループの東神倉庫と業務提携した。
■21年12月期減益予想だが上振れの可能性
21年12月期連結業績予想は売上高が20年12月期比8.7%増の95億40百万円、営業利益が52.4%減の7億円、経常利益が57.1%減の6億25百万円、親会社株主帰属当期純利益が58.1%減の4億25百万円としている。配当予想は2円77銭減配の94銭(第2四半期末47銭、期末47銭)としている。
売上面では、BtoB-PF ES事業(計画26.7%増収)がDXの流れも背景として大幅伸長見込みだが、BtoB-PF FOOD事業(計画3.2%増収)は新型コロナウイルスによるマイナス影響が当面続くと想定している。利益面では、22年12月期以降の売上成長拡大と利益率再上昇に向けた先行投資で、データセンター費や人件費が増加するため減益予想としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比5.5%増の22億99百万円だが、営業利益が20.8%減の3億83百万円、経常利益が16.9%減の4億02百万円、四半期純利益が14.4%減の2億85百万円だった。
売上面はBtoB-PF ES事業の好調が牽引して増収だが、利益面はユーザー数拡大に応じたサーバー増強に伴うデータセンター費の増加、事業拡大に向けた営業および営業サポートの人員補強に伴う人件費の増加など、先行投資の影響で減益だった。
BtoB-PF FOOD事業は3.3%減収だった。利用企業数の増加で買い手企業からのシステム利用料が増加したが、新型コロナウイルス第3波の影響で食材流通金額が減少し、売り手企業(従量制)からのシステム使用料が減少した。BtoB-PF ES事業は37.9増収と大幅伸長した。テレワーク進展も背景に幅広い業界において、大手案件を中心に請求書受取モデル・発行モデルの新規有料契約企業数が増加し、その稼働(請求書の電子データ化)と共にシステム利用料およびセットアップ売上が増加した。
なお計画(売上高21億84百万円、営業利益1億30百万円)に対しては、売上高、営業利益とも上振れた。データセンター費や販促費など一部の費用の発生が第2四半期以降にズレ込んだことも寄与した。
通期予想を据え置いたが保守的だろう。第1四半期は計画比上振れて、進捗率も売上高24.1%、営業利益54.7%と高水準だった。通期利益予想は上振れの可能性が高いだろう。さらに電子契約やDXの流れを追い風として、中期的にも収益拡大を期待したい。
■株価は戻り試す
株価は調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。6月8日の終値は929円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS1円86銭で算出)は約499倍、今期予想配当利回り(会社予想の94銭で算出)は約0.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円41銭で算出)は約19倍、時価総額は約2410億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)