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インフォコムは基調転換して戻り試す、22年3月期会社予想は保守的
- 2021/6/9 08:25
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォコム<4348>(東1)は電子コミック配信サービスやITサービスを展開している。22年3月期は本社移転関連コストなどを考慮して小幅営業・経常増益にとどまる予想としている。ただし保守的だろう。収益拡大基調に変化はなく、上振れを期待したい。株価は急反発の動きとなった。基調転換して戻りを試す展開を期待したい。
■ネットビジネス(電子コミック配信サービス)やITサービスを展開
帝人<3401>グループで、一般消費者向けネットビジネス(子会社アムタスの電子コミック配信サービス「めちゃコミック」)、およびITサービス(医療機関・製薬企業・介護事業者向けパッケージのヘルスケア事業、RPAとAIを活用したWeb-ERPソフトGRANDITなどのサービスビジネス事業、大手企業向けシステムインテグレーションのエンタープライズ事業)を展開している。
21年3月期のセグメント別売上構成比はネットビジネスが65%、ITサービスが35%、営業利益構成比(連結調整前)はネットビジネスが73%、ITサービスが27%だった。電子コミック配信サービスの拡大でネットビジネスが利益柱に成長した。またITサービスは年度末にあたる第4四半期の構成比が高い特性がある。
M&A・アライアンスでは、19年5月アムタスが韓国で電子コミック配信サービスを展開するピーナトゥーンを連結子会社化、介護人材紹介事業のスタッフプラスを連結子会社化、19年7月アムタスとパピレス<3641>が海外への取次事業を行う共同出資会社アルド・エージェンシー・グローバル(AAG)を設立、20年9月シンガポールで介護人材マッチングプラットフォームを提供するHomageと資本業務提携、20年11月医療領域の専門家検索サービスを提供する米国H1 Insightsと業務提携した。
なお本社の移転を予定(移転先:東京都港区、21年11月~12月予定)している。テレワークを取り入れた柔軟な働き方に対応し、時間や場所に制約されずに効率良く働く考え方ABW(Activity Based Working)を取り入れる。ワークスタイル変革を推進し、働く環境の改善に向けた取り組みを強化する。フロア利用面積約40%縮小によるコスト削減で、移転コストを5年で回収する想定だ。
■電子コミックとヘルスケアを重点事業として持続成長
中期経営計画(2020年度~2022年度)では、高い成長性と収益性の両立を目指して、経営目標数値には23年3月期売上高850億円~1150億円(SI・サービス150億円、ヘルスケア150億円、電子コミック600億円、M&A)、EBITDA(営業利益+償却費)130億円~160億円、ROE15.0%以上を掲げている。またM&Aでは戦略投資枠300億円を設定している。
基本方針は、電子コミックとヘルスケアを重点事業とする継続成長、サービス化の推進、共創の積極的推進(M&A、海外展開)としている。サービス化の推進では売上全体に占めるサービス比率を、現状の約6割から8割%超に引き上げる方針だ。
電子コミックは、市場の年成長率11.9%を想定し、市場を上回る20%以上の成長を目指す。オリジナルコミックの拡充、データ分析・AI活用によるマーケティングの強化、独占先行配信の強化、アプリ版のフルリニューアル、配信システムの完全クラウド化、5G対応、海外展開、M&Aなどを推進する。新型コロナウイルスによる新たな生活スタイルの浸透も追い風となり、若年層を中心に電子で漫画を読む習慣の定着が期待されるため、想定を上振れる可能性が高まっている。
ヘルスケアは、要介護者の増加に伴って介護IT市場の急速な拡大が見込まれることに加えて、新型コロナウイルスを契機にオンライン診療やオンライン服薬指導の普及も期待されている。介護を注力領域として、新規領域の健康分野における企業向け健康経営サービス「WELSA」や、製薬MR向けオンライン営業支援サービス、海外への展開も強化する。オンライン医療サービスの事業化も検討中としている。
さらに薬剤情報システムで東南アジア市場に参入する。第一弾としてフィリピンの複数のパートナー企業と提携し、21年4月から事業展開を開始した。20年8月にインドネシアで開始した医用画像管理システム(PACS)とともに、東南アジアのヘルスケアIT市場での事業展開を加速する方針だ。21年5月には医師向けSNS展開のDocquity社(シンガポール)と業務提携した。東南アジア向け薬剤情報システムとの連携などで東南アジアでの事業強化につなげる。
■22年3月期は小幅営業・経常増益予想だが保守的
22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期比13.1%増の770億円、営業利益が1.7%増の110億円、経常利益が0.6%増の110億円、親会社株主帰属当期純利益が16.3%増の73億円としている。配当予想は3円増配の40円(第2四半期末13円、期末27円)である。
ネットビジネスは18.1%増収で13.8%増益、ITサービスは4.0%増収で6.2%増益の計画としている。電子コミック配信サービスはユーザー層の拡大で成長が加速し、ヘルスケアも需要が回復する見込みだ。なお電子コミック配信サービスの海賊版サイトの影響は上期で収束すると想定している。
新たなワークスタイル変革の推進を背景として本社移転を予定しているため、全体としては本社移転関連コストの発生で、営業・経常利益の伸び率は小幅にとどまる見込みとしている。ただし保守的だろう。収益拡大基調に変化はなく、上振れを期待したい。
■株主優待制度は毎年9月末の株主対象
株主還元については、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配に努め、配当性向30%の維持を目指すとしている。
株主優待制度は、毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株数および保有年数に応じて、優待商品と交換できる株主優待ポイントを贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は基調転換して戻り試す
株価は急反発の動きとなり、週足チャートで見ると26週移動平均線を一気に突破した。また13週移動平均線が上向きに転じてきた。基調転換して戻りを試す展開を期待したい。6月8日の終値は3155円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS133円31銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約1.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS757円76銭で算出)は約4.2倍、時価総額は約1817億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)