【アナリスト水田雅展の銘柄分析】チムニーは15年12月期増収増益予想や自己株式取得を評価、6月中間期末の株主優待も注目点

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 チムニー<3178>(東1)は「飲食業の6次産業化」確立を目指す大手居酒屋チェーンである。株価は上場来高値圏で堅調に推移している。訪日外国人旅行客のインバウンド消費も追い風であり、15年12月期増収増益予想や自己株式取得を評価して4月高値を試す展開だろう。6月中間期末に向けて株主優待制度の権利取りの動きも注目される。

 売上高が業界5位規模の大手居酒屋チェーンで、直営店とFC店の飲食事業の他に、受託食堂のコントラクト事業も展開している。仕入面では子会社の魚鮮水産が愛媛県で漁業権を保有し、13年には新たに2つの買参権を取得している。

 中期目標として18年1000店舗、売上高1000億円を掲げている。中期成長戦略としては、地域活性化・地産地消の深耕を含めて、漁業などの1次産業、食材加工などの2次産業、店舗で商品を提供する3次産業まで一括管理する「飲食業の6次産業化」確立を目指している。

 飲食事業は居酒屋業態を直営店とFC店で展開し、主力の「はなの舞」「さかなや道場」に加えて、軍鶏(しゃも)の「龍馬軍鶏農場」や、新鮮な肉と魚の両方を浜焼きスタイルで楽しむ「豊丸水産」の新規出店、既存店活性化に向けた業態転換も積極推進している。13年7月には新業態を推進する子会社「めっちゃ魚が好き」を設立した。今後の新規出店については、競合店が少なく高ROI(投資収益率)が見込める山陰・山陽・四国エリアへの出店を強化する方針だ。

 コントラクト事業は、居酒屋事業で培った店舗運営ノウハウを活用して、官公庁の施設内を中心に受託食堂を展開している。14年4月には船橋中央病院(千葉県船橋市)の食堂事業を新規受託し、さらに16年度の新規受託の準備も進めている。

 15年5月には、日本政府観光協会(JNTO)のWebMagazineに、初の外食企業紹介として当社の居酒屋業態「はなの舞」が紹介された。

 今期(15年12月期)の連結業績予想(2月10日公表)は売上高が前期比4.2%増の485億40百万円、営業利益が同4.6%増の35億90百万円、経常利益が同3.9%増の36億20百万円、純利益が同5.8%増の19億円としている。

 グループ全体の売上高は同3.5%増の733億30百万円、既存店売上高は前年比99.0%の計画である。飲食事業の新規出店は直営35店舗、FC3店舗、閉店は直営10店舗、FC10店舗、直営からFCへの転換は10店舗の計画としている。

 配当予想(2月10日公表)は年間23円(第2四半期末11円50銭、期末11円50銭)で予想配当性向は23.0%となる。前期の創業30周年および東証1部指定記念配当5円を含む年間25円との比較では2円減配の形だが、普通配当ベースでは3円増配となる。

 第1四半期(1月~3月)は前年同期比1.8%増収、同16.3%営業増益、同16.7%経常増益、同20.4%最終増益だった。消費マインドがやや改善し、6次産業化と地産地消への積極的な取り組み、山陰・山陽・四国エリアへの新規出店強化、店舗メニューの見直しなどの効果で増収増益だった。売上総利益率は同横ばい、販管費比率は同0.9ポイント低下した。

 新規出店は直営5店舗、FC1店舗、閉店は直営4店舗、FC7店舗、コントラクト9店舗、直営からFCへの転換6店舗、FCから直営への転換3店舗で、第1四半期末の店舗数は直営305店舗、FC297店舗、コントラクト91店舗の合計693店舗、連結子会社を含めたグループ合計では722店舗となった。

 そして通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高23.3%、営業利益22.5%、経常利益23.3%、純利益23.8%と概ね順調な水準だった。不採算店の閉店、業態転換による既存店活性化、商品ロス低減、調理技術力向上、買参権活用による仕入効率化、仕入価格見直し、メニューミックスなどによる原価低減効果、さらに新規出店効果も寄与して通期ベースでも好業績が期待される。

 月次売上動向(直営店全業態速報値、前年比)を見ると、15年5月は既存店が97.5%、全店が100.4%で、15年1月~5月累計売上は既存店が99.2%、全店が100.4%となった。既存店は計画を上回る水準だ。

 5月の出店状況は、新規出店が4店舗(直営2店舗、FC1店舗、コントラクト1店舗)、閉店が0店舗、直営からFCへの転換1店舗、FCから直営への転換0店舗で、5月末時点のコントラクトを含む合計店舗数は701店舗(直営402店舗、FC299店舗)となった。またグループ会社2社は新規出店1店舗で合計店舗数は30店舗となった。

 増加基調の訪日外国人旅行客のインバウンド消費に対応して、日本料理、季節感のメニュー、伝統文化などを複合的に楽しめる店舗空間造りも強化する方針だ。親会社となったやまや<9994>とのコラボレーションも本格化し、中期的に収益拡大基調が期待される。

 なお5月14日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限20万株、取得価額総額の上限6億円、取得期間15年5月15日~15年8月31日)については、5月31日時点で取得株式総数3万2500株、取得価額総額1億53万8594円となった。

 株主優待制度は毎年6月末および12月末時点の株主を対象として実施している。100株~499株所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×10枚」または当社オリジナル商品、500株以上所有株主に対しては「お食事ご優待券500円券×30枚」または当社オリジナル商品を贈呈(詳細は会社ホームページを参照)する。

 株価の動きを見ると、4月の上場来高値3305円から反落して5月11日に2870円まで調整する場面があったが、その後は水準を切り上げて高値圏の3100円~3200円近辺で堅調に推移している。

 6月16日の終値3125円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS100円09銭で算出)は31~32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間23円で算出)は0.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS675円17銭で算出)は4.6倍近辺である。

 週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して動意のタイミングのようだ。訪日外国人旅行客のインバウンド消費も追い風であり、15年12月期増収増益予想を評価して4月高値を試す展開だろう。6月中間期末に向けて株主優待制度の権利取りの動きも注目される。

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