ダイセルは世界初の1桁nmサイズのSiV蛍光ナノダイヤモンドを開発

 ダイセル<4202>(東1)は、1桁nmサイズのナノダイヤモンド構造の中にSiV(Silicon-Vacancy)センターを有する蛍光ナノダイヤモンド(SiV-ND)の生成に世界で初めて成功したと発表。

 カラーセンターと呼ばれる特異な構造を結晶内に導入したnmサイズのダイヤモンド(ナノダイヤモンド:ND)は、細胞導入可能な極めて小さいサイズかつ生体適合性の高さ、そして蛍光発光特性から優れた蛍光プローブとして注目されている。その中でもSiVセンターは、生体細胞に吸収されにくい近赤外光で励起され、同じく近赤外光(中心波長738nm)に鋭く安定した蛍光発光を示すことからバイオセンシング技術を発展させる材料として特に期待を集めている。

 このため、これまでSiVセンターを有するSiV-NDの合成手法の開発が盛んに行われてきたたが、大量に生産する方法は確立されていなかった。

 同社ではナノダイヤモンドを高効率で生成できる爆轟法に注目し、2014年に播磨工場(兵庫県たつの市)に試験設備を建設し新規爆轟法ナノダイヤモンドの創出に向けた研究開発に取り組んできた。この取組みで培った技術をベースに大阪大学、熊本大学、京都大学と提携して研究開発を進め、同社保有の爆轟技術により738nmを中心としたSiVセンター固有の蛍光発光スペクトルを示す平均粒子径が約7nmのSiV-NDを世界で初めて得ることに成功した。この成果は、学術誌Diamond&Related Materials誌(Diam.Relat.Mater.2021,112,108248)に掲載された。

 今回、一桁nmという世界最小サイズのSiV-NDを生成できたことから、体内の器官の細胞、タンパク質分子レベルで正確な位置情報を取得できるようになることが期待できる。今後、バイオセンシングをはじめとしたアプリケーションへの応用開発に取り組んでいく。

■用語解説

【SiV(Silicon-Vacancy)センター】=ダイヤモンド結晶格子中の炭素原子2個がシリコン原子1個で置き換えられた構造。

【カラーセンター】=ダイヤモンド結晶格子中で炭素原子がない状態、異原子で置換された状態、格子位置にあるべき原子や異原子が格子間位置を占めた状態。その結果透明なダイヤモンドが色を有することがカラーセンターの由来。

【蛍光プローブ】=外部からの光に応答し、相互作用する対象物質の位置情報や活性状態等の情報を取り出す方法に用いられる物質。

【励起】=外部からエネルギーを受け、原子や分子がより高いエネルギ―状態になること。

【爆轟法】=爆轟法は、爆薬を構成する炭素を原料とし、それを起爆させた際に放出されるエネルギーを使って、瞬時に大量のナノダイヤモンドを生産する方法。
(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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