トーセは下値固め完了感、中期成長期待

 トーセ<4728>(東1)は家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手である。6月24日には、バンダイナムコエンターテインメントのゲームソフト「SCARLET NEXUS」を開発したと発表している。21年8月期は次期以降に向けた仕込みの期と位置付けて人材投資を推進するため減収減益予想としているが、次世代ゲーム機や5G対応などでゲーム市場の活性化が予想されており、先行投資の成果で中期成長を期待したい。株価は下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。

■家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手

 家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手で、デジタルエンタテインメント事業(ゲームソフト関連、モバイルコンテンツ関連、パチンコ・パチスロ関連などデジタルコンテンツの企画・開発・運営の受託)、その他事業(SI事業、家庭用カラオケ楽曲配信事業、新規事業の創出)を展開している。

 20年8月期の売上高構成比はデジタルエンタテインメント事業が88%、その他事業が12%、営業利益構成比はデジタルエンタテインメント事業が86%、その他事業が14%だった。

 収益は開発業務の進行に合わせて受け取る開発売上、コンテンツ配信後の運営に伴う運営売上、コンテンツ販売数量に基づくロイヤリティ売上である。大型案件の開発受託の有無や、開発完了・売上計上時期などによって変動しやすい特性がある。

 複雑化・多様化するゲーム市場において、豊富なパイプライン展開を可能とする多彩な技術ポートフォリオ、長年の実績とノウハウに基づく信用力、開発売上とストック型の運営売上を持つ安定的なビジネスモデルを特徴としている。

 なお、こどもたちの命を守りたいと願う企業・団体が一体となって生まれた「京のこどもを守るプロジェクト」に協賛している。20年9月には、交通安全グッズとしてスウェーデン生まれのリフレクター(反射板)「グリミス」を、京都市交通対策協議会に寄付した。21年1月には、令和2年度京都市輝く地域企業表彰「地域企業輝き賞」および「地域企業輝き特別賞」を受賞した。

■21年8月期は人材投資で減益予想だが中期成長期待

 21年8月期連結業績予想は売上高が20年8月期比7.4%減の52億15百万円、営業利益が31.4%減の2億50百万円、経常利益が29.2%減の2億74百万円、親会社株主帰属当期純利益が28.5%減の1億62百万円としている。配当予想は20年8月期と同額の25円(第2四半期末12円50銭、期末12円50銭)である。

 セグメント別売上高計画は、デジタルエンタテインメント事業が6.0%減の46億56百万円(売上構成比はモバイルコンテンツ関連が49.5%、パチンコ・パチスロ関連が3.1%、ゲームソフト関連が47.4%)で、その他事業がITシステム開発案件の減少で18.2%減の5億59百万円としている。

 開発完了タイトルの計画は、スマートフォン向けゲームが6本(全てが通常よりも小規模なリメイク版)、据置型ゲーム機向けソフトが1本(マルチプラットフォーム向け)としている。開発金額50百万円以上の大型案件(試作案件含む)は12件の見込みである。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比15.8%減の18億38百万円、営業利益が85百万円の赤字(前年同期は1億12百万円の黒字)、経常利益が83百万円の赤字(同1億38百万円の黒字)、四半期純利益が1億03百万円の赤字(同74百万円の黒字)だった。

 複数の家庭用ゲームソフト大型案件について、品質をより一層向上させるために、顧客要望によって開発スケジュールが変更となり、売上計上が下期にズレ込んだ。また新型コロナウイルス感染拡大防止策に係る費用の増加も影響した。

 事業別の売上高は、デジタルエンタテインメント事業が10%減の16億07百万円(売上構成比はモバイルコンテンツ関連が69.8%、パチンコ・パチスロ関連が4.4%、ゲームソフト関連が25.8%)、その他事業が42%減の2億30百万円だった。

 21年8月期は次期(22年8月期)以降に向けた仕込みの期と位置付けて、大規模・高度化開発に耐えうる開発体制強化に向けた人材投資を推進するため、減収減益予想としている。なお上期に開発スケジュール変更になった案件については、下期に売上計上の見込みとしている。

 新型ゲーム機「プレイステーション5」や「Xbox Series X/S」の登場、5G対応モバイルゲームの登場などでゲーム市場の活性化が予想されており、先行投資の成果で中期成長を期待したい。

■株価は下値固め完了感

 株価は小幅レンジでモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。6月24日の終値は822円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS21円44銭で算出)は約38倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約3.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS789円02銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約64億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る