【どう見るこの相場】「海運株祭り」は一過性か?!業界構造・業績推移が相似のエネルギー株に連鎖高期待

どう見るこの相場

 一瞬、「船成金相場」か「海運株祭り」かと驚かされ、乗り遅れたのではないかと焦った投資家が、少なくなかったに違いない。前週火曜日の22日のことである。前日21日に日経平均株価は、5日続落のあとさらに953円安と急落したが、22日には米国ダウ工業株30種平均(NYダウ)の586ドル高の急反発を受け873円高と買い直され前日の急落分の帳消しにもう少しと迫った。そのなかで海運大手3社の株価が、軒並み買い気配から始まり、窓を開けて急伸して上場来高値を更新、業種別上昇率は10.13%とトップに躍り出て相場全体をリードした。

 海運株の急騰は、6月21日の商船三井<9104>(東1)の今2022年3月期業績の上方修正が引き金となった。今年7月30日予定の今期第1四半期決算発表に1カ月以上も先立つもので、純利益の上方修正幅もハンパでなく期初予想の900億円が2100億円に引き上げられた。日本郵船<9101>(東1)、川崎汽船<9107>(東1)とともに共同出資で設立したコンテナ船運航の持分法適用会社のONE社の荷動きとスポット賃料が想定を大きく上回って推移したことが要因で、これは残り2社の業績を同様に押し上げることが見込まれた。

 現に川崎汽船は、商船三井に1日遅れで今期業績を上方修正した。ただ3社の株価は、最高値更新後に上値が重くなり、前週末25日は、グロース株買いが強まった反動で、景気敏感系のバリュー株の代表として売られ、業種別値下がり率では1.01%のワーストワンと逆行安した。大手3社の業績上方修正が、今回1回限りの一過性となるのか、それとも前期のように四半期決算発表のたびに複数回上方修正される業績上ぶれ癖を再発揮するのかが、今後の株価ポイントとして注目される。

 前置きが長くなったが、今週の当特集のテーマは、この海運株ではない。海運株と同様に業績が高変化し、しかも上方修正が頻発しそうな有望セクターの発掘である。ということで注目したいのが、鉱業株、石油株のエネルギー関連株である。業界構造的には、両業界とも長く船腹と精製能力の過剰が続く構造問題で市況低迷に苦しめられ、幾多の業界再編を経たのも相似形で、コロナ禍からの経済活動の正常化で船腹需要や原油需要が回復、海上運賃や原油価格が上昇に転じ復活途上にあることも共通している。すでにINPEX<1605>(東1)は、今年5月13日の第1四半期決算発表時に今2021年12月期業績を上方修正し、株価は前週末25日に年初来高値を更新した。

 原油(WTI)価格は、パンデミック(世界的な感染拡大)当時のマイナス価格から大きく上昇しただけでなく、先行きについても強気観測が息を吹き返してきている。一方では、資源価格高には、FRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリング(資産買い入れの縮小)の早期化懸念や中国の国家備蓄放出の抑制策などの逆風が控えていることも確かである。そうした市況環境下で、INPEXの今回の業績上方修正が一過性に終わるか、継続するかのカギを握ることになる。しかも海運大手3社も鉱業株、石油株も、かつての業界再編時には想定できなかったほどにEPS(1株純利益)が高水準となり揃って低PER・PBRに放置されており、海運株高が連鎖することも期待される。海運株に出遅れ乗り損になったと焦った投資家も、鉱業株、石油株のエネルギー株に早めに先乗りしてみるのも一法となるかもしれない。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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