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ジーニーは上値試す、SaaSビジネス成長で22年3月期大幅増益予想
- 2021/6/28 10:09
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジーニー<6562>(東マ)はマーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーを目指して、企業のDXを支援するSaaSビジネス領域の強化や広告プラットフォームビジネスの収益力向上を推進している。22年3月期はSaaSビジネス領域の成長と広告プラットフォーム事業の利益拡大で大幅増益予想としている。収益拡大を期待したい。株価は急伸した6月の年初来高値圏から利益確定売りで一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■マーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニー
マーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーを目指して、広告プラットフォームビジネスの収益力向上や企業のDXを支援するSaaSビジネス領域の強化を推進している。
事業区分はインターネット広告に関わるアド・プラットフォーム事業、企業のDXを支援するSaaSビジネス領域のマーケティングソリューション事業、および国内のプロダクトを東南アジア中心に展開する海外事業としている。20年11月に高速・高精度検索エンジン開発のビジネスサーチテクノロジを子会社化した。
21年3月期の売上高構成比はアド・プラットフォーム事業が80%、マーケティングソリューション事業が10%、海外事業が11%だった。なお22年3月期から事業区分を広告プラットフォーム事業、マーケティングSaaS事業、海外事業に変更する。
収益面の季節特性として、アド・プラットフォーム事業が広告主の予算配分の影響を受けるため、12月および年度末の3月に売上が集中する傾向がある。なお14年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)と資本業務提携し、現在はソフトバンク<9434>の持分法適用会社となっている。ソフトバンクと協業してクロスボーダーサービスの強化・拡大を推進している。
24年3月期の目標値には、IFRSベースで売上高250億円~300億円、売上総利益80億円~90億円、営業利益20億円~25億円(日本基準ベースで18億円~23億円)、EBITDA27億円~32億円を掲げている。なお21年8月5日を効力発生日として、資本準備金の額を減少して繰越利益剰余金に振り替え、欠損補填に充当する。
■アド・プラットフォーム事業は独自アドテクノロジーが強み
アド・プラットフォーム事業はインターネット広告市場において、広告収益を最大化するサプライサイド(ネットメディア向け)の「GENIEE SSP」が取引実績2万社で国内シェア1位、デマンドサイド(広告主向け)の「GENIEE DSP」が広告主数500社で国内N.1のデー保有量を誇っている。
ネットメディアの広告収益最大化を図る独自のアドテクノロジー(ウェブサイトやスマートフォンアプリ等に各々の閲覧者に合った広告を瞬時に選択して表示させる技術)を強みとしている。ネット広告取引市場では、RTB(広告枠を自動で瞬時にオークション形式で取引するシステム)によって取引されるが、同社独自の広告配信最適化アルゴリズムで効果的な広告配信を実現している。さらにビッグデータやAIを活用して、広告配信の精度向上や自動化に取り組んでいる。
■DOOH領域に展開
広告プラットフォーム事業の領域拡大戦略で、大型屋外サイネージ、タクシー広告、駅内広告、歯科医院待合サイネージなど、DOOH(自宅以外の場所で接触する屋外デジタル広告)領域に積極展開している。
18年11月タクシー後部座席に設置されたデジタルサイネージ向け広告配信プラットフォームを開発し、19年2月DeNA<2432>のタクシー配車サービスでの本格運用を開始した。19年8月ジオネクサスにDOOH広告配信プラットフォームをOEM提供した。19年11月メディカルアシストTVと業務提携し、歯科医院デジタルサイネージ向けプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年1月にヒットと業務提携し、20年2月首都高速道路沿い大型屋外ビジョン向けプログラマティックOOH広告配信を開始、20年3月東京・渋谷ハチ公口および大阪・御堂筋沿いにプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年7月には京王エージェンシーと業務提携してデジタル広告効果の可視化に向けた実証実験を開始、20年8月にはユニカと業務提携してDOOH向け広告配信サービス「YUNIKA VISION DOOH」の提供を開始、20年10月には日本自動ドアおよびYmixと業務提携してFast Beautyが運営する全国約88店舗ヘアカラー専門店fufuに設置するタブレット端末へ広告配信した。
21年5月には、デジタル屋外広告プラットフォーム「GENIEE DOOH」とユナイテッドマーケティングテクノロジーのDSP「Bypass」と連携開始した。またホープ<6195>と業務提携した。気象庁ホームページ広告運用事業における広告配信システムを共同で構築・提供・運用する。
■DX支援SaaSビジネス領域を強化
マーケティングSaaS事業は、クラウド上でアプリケーションを提供するSaaS型のビジネスモデルで、企業のマーケティング活動を効率化するソフトウェアを提供している。
具体的にはCRM(顧客管理)/SFA(営業管理)システムの「ちきゅう」、マーケティングオートメーションツールの「MAJIN」、チャットボットツールの「chamo」、サイト内検索の「probo」を展開している。
CRM/SFAシステム「ちきゅう」は、顧客管理CRMシステムおよび商談管理SFAシステムを一体化させたクラウド型サービスである。マーケティングオートメーション「MAJIN」は企業のマーケティング活動を自動化し、効率的に購買・契約等を行うためのプラットフォームである。取引実績は合計で約1万社に達し、チャットボットツール「chamo」は4500社の導入実績を持つ国産NO.1のチャットツールである。
集客~販促~受注までを一気通貫で実行・管理できる唯一のセールス&マーケティングプラットフォームとして、企業のDXを支援するSaaSビジネス領域の成長を加速させる方針だ。
■22年3月期大幅増益予想
22年3月期連結業績予想(収益認識に関する企業会計基準第29号を適用するため売上高の前期比増減率は非記載)は、売上高が134億25百万円~137億39百万円で、営業利益が6億40百万円~8億40百万円(21年3月期比3.3倍~4.3倍)、経常利益が6億20百万円~8億20百万円(同4.2倍~5.5倍)、EBITDAが12億59百万円~14億59百万円(同2.1倍~2.5倍)、親会社株主帰属当期純利益が5億26百万円~6億65百万円(同5.2倍~6.5倍)としている。配当予想は未定である。
新型コロナウイルスの影響が不透明なためレンジ予想だが、マーケティングSaaS事業の拡大に注力して大幅増益予想としている。事業別の計画は、広告プラットフォーム事業の売上高が101億円~103億円(21年3月期は119億円)で営業利益(調整前)が8.7億円~9.7億円(同6.0億円)、マーケティングSaaS事業の売上高が15億円~16億円(同7億円)で営業利益が▲1.0億円~0.0億円(同▲3.4億円)、そして海外事業の売上高が18億円(同15億円)で営業利益が0.3億円(同0.4億円)としている。
SaaSプロダクトへの投資が完了して収益拡大フェーズとしている。収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は急伸した6月の年初来高値圏から利益確定売りで一旦反落したが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。6月25日の終値は1393円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS147円12銭で算出)は約9.5倍、時価総額は約251億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)