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アスカネットは調整一巡、22年4月期増収・営業増益予想
- 2021/6/29 08:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング事業も推進している。22年4月期は新型コロナ影響が徐々に和らいで増収・営業増益予想としている。保守的な印象が強いため上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は年初来安値圏でやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■写真加工関連を主力として、空中結像AIも推進
葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、非接触ニーズで注目される空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)事業も推進している。
21年4月期のセグメント別構成比は、売上高がMDS事業43.2%、PPS事業54.7%、AI事業2.1%、営業利益(調整前)がMDS事業75.7%、PPS事業57.8%、AI事業▲33.4%だった。
22年4月期からセグメント名を、フューネラル事業(従来のメモリアルデザインサービス事業)、フォトブック事業(同パーソナルパブリッシングサービス事業)、空中ディスプレイ事業(同エアリアルイメージング事業)に変更する。
MDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。
なお人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。
■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進
フューネラル事業(従来のMDS事業)は専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。21年4月期末のハード設置件数は2578ヶ所、21年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約36.7万枚、電照焼増枚数が約12.3万枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため、推定市場シェアは約30%(1位)である。
成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」(特許取得済)など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。
20年8月には「tsunagoo」の機能として新型コロナウイルスで葬儀に参列できない方向けの「香典受付サービス」を追加、20年11月には故人を偲ぶ「inori」の提供を開始した。21年1月には「tsunagoo」による訃報作成数が累計5万件を突破した。また21年1月には、スマートフォンややパソコンから簡単に出産報告や出産お祝い金の受け渡しができるWebサービス「e-tayori(いい・たより)」(特許出願中)を開始した。
21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500ヶ所を突破した。全国の葬儀場約9200ヶ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透したことになる。
■フォトブック事業はOEMも拡大
フォトブック事業(従来のPPS事業)は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。
21年4月期末時点で、約4720社の写真館向けなどに年間約40万冊(OEM除く)を提供している。マイブック会員数は約28.1万人となった。
■AI事業は空中結像ASKA3Dプレートの本格量産目指す
空中ディスプレイ事業(従来のAI事業)は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。
高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として、開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートの従来よりも大きい250mm角サイズを開発し、21年4月からサンプル販売を開始した。10インチ相当の画面サイズまで空中結像を可能にしたことで、操作パネルとしての用途拡大が期待されている。
生産面では月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行している。一部工程の生産設備を増強することで比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立した。ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を目指す。
営業面では20年11月に海外販売体制拡充に向けて、米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。
■22年4月期増収・営業増益予想
21年4月期の業績(非連結)は、売上高が20年4月期比12.2%減の57億73百万円、営業利益が60.9%減の2億77百万円、経常利益が53.4%減の3億30百万円、当期純利益が55.0%減の2億25百万円だった。新型コロナ影響で減収・減益だった。配当は3円減配の7円(期末一括)とした。
MDSは2.6%減収で6.6%減益だった。新型コロナ影響や葬儀小型化で遺影写真加工収入や演出ツールが減少した。PPSは19.2%減収で49.0%減益だった。コロナ禍でウエディングなどのイベントの中止・延期の影響を受けた。AIは12.2%増収だが赤字拡大した。研究開発費が増加した。
22年4月期の業績(非連結)予想は、売上高が21年4月期比8.6%増の62億70百万円、営業利益が2.7%増の2億85百万円、経常利益が13.9%減の2億85百万円、当期純利益が11.3%減の2億円としている。配当予想は21年4月期と同額の7円(期末一括)とした。
なおセグメント(22年4月期から名称変更)別の売上計画は、フューネラル事業が3.1%増収、フォトブック事業が7.7%増収、空中ディスプレイ事業(内部売上消去後)が海外代理店との連携効果も寄与して2.4倍増収としている。
上期はコロナ禍で特にフォトブック事業で厳しい環境が続くが、下期は影響が和らぎ、通期ベースで増収の計画である。利益面では上期の稼働率低下、減価償却費や研究開発費の増加などがマイナス要因となるが、増収効果で吸収して通期営業増益の見込みとしている。経常利益と当期純利益は前期計上した保険解約益の剥落で減益予想としている。全体として保守的な印象が強いため上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年4月末の株主対象
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。
なお21年2月に株主優待制度の変更を発表している。利用可能商品の選択肢を増やしてほしいとの要望に応え、多くの商品への利用が可能になるよう一部割引利用券の金額を変更(詳細は会社HP参照)した。
■株価は調整一巡
株価は年初来安値圏でやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。6月28日の終値は932円、今期予想PER(会社予想のEPS11円87銭で算出)は約79倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約0.8%、前期実績PBR(前期実績のBPS345円75銭で算出)は約2.7倍、時価総額は約163億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)