- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリーク・アンド・リバー社は調整の最終局面、16年2月期業績の増額含みを評価
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリーク・アンド・リバー社は調整の最終局面、16年2月期業績の増額含みを評価
- 2015/6/18 06:59
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリーク・アンド・リバー社<4763>(JQS)はクリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業を展開している。株価は水準を切り下げたが1月安値に接近して調整のほぼ最終局面のようだ。16年2月期業績の増額含みを評価して切り返し展開だろう。なお7月2日に第1四半期(3月~5月)の業績発表を予定している。
日本のクリエイティブ分野(映像・テレビ番組・ゲーム・Web・広告などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力として、韓国のクリエイティブ分野、医療・IT・法曹・会計などの分野にも事業展開している。
クリエイティブ分野(日本)では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価され、番組制作受託事業が急拡大している。15年2月期の当社制作番組はレギュラーと特番を合わせて24本となった。
新規分野として電子書籍取次および作家・オンラインクリエイター・建築・ファッションクリエイター分野のエージェンシー事業にも展開し、13年12月にはアパレル業界に特化した人材派遣会社インター・ベルを子会社化した。14年9月にはクラウド関連サービスとしてクリエイティブプラットフォーム「Creators Ship(クリエイターズ・シップ)」のサービスを開始した。
15年3月には中国最大の電子マンガプラットフォーム「布卡漫画」において一迅社のコミック雑誌「コミック百合姫」中国語電子版の配信を開始した。一迅社の人気コミック単行本の中国語電子版を制作して、同プラットフォームで順次配信する。またサイブリッジが運営するWebデザイナーのためのギャラリーサイト「ikesai.com」内において、Web業界に特化した「キャリア・求人情報」サービスの運営を開始した。
15年4月にはプロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。広告分野における人材事業を強化する。
また子会社C&R上海と中国のエンターテインメント企業DragonPRCの共同出資で、中国市場に向けたコミック・ゲームの配信取次事業を行う合弁会社を立ち上げる。日本企業として初めてスマホ中国1位の小米に日本マンガをプリインストール配信することが決定した。
15年5月にはエコノミックインデックスの第三者割当増資を引き受けて持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かし、当社グループのクライアントに対して商品やサービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。
6月8日には、会計分野の子会社ジャスネットコミュニケーションズが日本初の経理・財務分野に特化したオンライン教育動画プラットフォーム「アカウンタンツライブラリー」を開始すると発表した。さまざまな企業や事務所から提供される経理・財務分野に特化した教育講座が学べるプラットフォームを構築することで、経理パーソンの学習支援、会計事務所の自社ブランド販路拡大などに繋げるサイトとする。
なお15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)60億92百万円、第2四半期(6月~8月)56億97百万円、第3四半期(9月~11月)55億42百万円、第4四半期(12月~2月)55億95百万円で、営業利益は第1四半期5億78百万円、第2四半期3億50百万円、第3四半期1億69百万円、第4四半期1億99百万円だった。
医療分野が季節要因などで第1四半期および第2四半期の構成比が高く、第3四半期と第4四半期は赤字となる収益構造だ。ただし主力のクリエイティブ分野(日本)は売上・営業利益とも拡大基調である。
15年2月期の配当性向は19.9%、ROEは14年2月期比3.9ポイント上昇して17.0%、自己資本比率は同5.8ポイント上昇して52.6%だった。
今期(16年2月期)の連結業績予想(4月8日公表)は、売上高が前期比9.0%増の250億円、営業利益が同15.7%増の15億円、経常利益が同13.6%増の15億円、純利益が同7.5%増の8億円としている。配当予想は同1円増配の年間8円(期末一括)で、予想配当性向は21.2%となる。
主力のクリエイティブ分野(日本)や医療分野の好調が牽引して増収増益見込みだ。新規事業の収益化進展やプロフェッショナルメディアの新規連結なども寄与する。期初時点ではやや慎重な見通しを公表する傾向もあるだけに、会社予想は増額含みだろう。
セグメント別売上の計画は、クリエイティブ分野(日本)が同8%増収、クリエイティブ分野(韓国)が同3%増収、医療分野が同6%増収、その他(4分野)が同23%増収としている。クリエイティブ分野(日本)では既存のエージェンシー事業が順調に拡大し、建築・ファッションクリエイター事業など新規事業の収益改善も進展する。新たにシェフ・エージェンシー事業およびプロフェッサー・エージェンシー事業の立ち上げも予定している。
中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。ロボット、バイオ、ファイナンシャルなどの分野への進出も想定しているようだ。中期的に収益拡大基調だろう。
株価の動きを見ると、2月の戻り高値810円から反落し、6月10日には612円まで水準を切り下げた。ただし1月安値593円に接近して下げ渋る動きだ。調整のほぼ最終局面のようだ。
6月17日の終値621円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円74銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS229円00銭で算出)は2.7倍近辺である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が抵抗線となって52週移動平均線も割り込んだが、1月安値圏の600円近辺が下値支持線となりそうだ。指標面に割高感はなく、16年2月期業績の増額含みを評価して切り返し展開だろう。