インテリジェントウェイブは調整一巡、22年6月期も収益拡大期待

 インテリジェントウェイブ<4847>(東1)はシステムソリューション事業を展開し、事業領域拡大に向けた新製品・サービスの強化やクラウドサービスを中心としたストックビジネスへの転換を推進している。21年6月期は大手カード会社向け案件やクラウドサービスの新規案件などが牽引して2桁営業・経常増益予想としている。さらに22年6月期も収益拡大を期待したい。株価は6月末の配当権利落ちも影響してモミ合いから下放れの形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。

■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力

 大日本印刷<7912>(DNP)の連結子会社で、ソフトウェア開発を中心とする金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野を中心とするパッケージソフトウェア販売・保守サービスのプロダクトソリューション事業を展開している。

 20年6月期の売上構成比は金融システムソリューション90%、プロダクトソリューション10%、営業利益構成比は金融システムソリューション108%、プロダクトソリューション▲8%だった。なお組織改正に伴って21年6月期から単一事業セグメントに変更した。

 高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システム分野に強みを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。顧客別売上高上位はDNP、カード会社、システム開発会社である。金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響し、下期の構成比が高い特性もある。

■事業領域拡大に向けて新製品・新サービスを強化

 金融システムソリューションでは、クレジットカード決済のフロント業務関連システムから、金融領域全般への事業領域拡大を目指し、クラウドサービスも強化している。プロダクトソリューションでは、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。

 クラウドサービスでは、アクワイアリング業務のIOASIS、不正検知のIFINDS、OnCore SwitchのIGATESが順調に拡大している。またポイントシステムのIPRETSを20年10月から本格稼働した。EC決済に対応した次世代不正検知システムもサブスクリプション型契約で20年9月に1社目が稼働した。

 AI関連の新規開発案件では、SMBC日興証券「AI株価見守りサービス」に、CEP(Complex Event Processing)エンジンであるFES(Fast Event Streamer)が採用され、19年7月サービス開始した。

 20年10月にはSolace社と、日本における次世代決済プラットフォームの実現に向けて協業体制を強化すると発表した。20年12月には大日本印刷・蕨工場(埼玉県蕨市)のクローズドネットワークに、いかなる未知の攻撃でも防御できるエンドポイントセキュリティソリューション「Morphisec(モルフィセック)」(イスラエルMorphisec社製)を導入した。

■長期的に営業利益率15%目指す

 中期事業計画(旧計画を見直して20年8月に新計画として公表)では、目標値に23年6月期売上高135億円、営業利益15億円を掲げている。主要製品・サービスの年平均成長率はクラウドサービス24.6%、セキュリティ対策製品6.9%、その他開発案件5.5%としている。新製品・新サービスは上振れ要因となる。

 長期的にクレジットカード決済取扱高が伸びる基調に大きな変化はなく、事業機会の拡大が続くと想定している。そしてクラウドサービスを中心としたサブスクリプション(ストックビジネス)への転換を推進し、新規事業への投資も加速する。中長期的には売上高150億円、営業利益率15%を目指す方針だ。

 なお21年3月には、社会の持続可能な発展に貢献しつつ、事業活動の持続可能性を高めていくことを前提として、具体的な施策を通じて全社的な取り組みを進めるためにサステナビリティ委員会を設置した。また21年5月にはサステナビリティ委員会が「健康経営宣言」を策定した。

■21年6月2桁営業・経常増益予想、22年6月期も収益拡大期待

 21年6月期業績(非連結)予想は売上高が20年6月期比0.7%増の110億円、営業利益が11.0%増の11億50百万円、経常利益が10.7%増の11億90百万円、当期純利益が7.6%増の8億20百万円としている。配当予想は20年6月期と同額の10円(期末一括)である。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比3.4%増の80億67百万円、営業利益が15.9%増の6億78百万円、経常利益が15.9%増の6億96百万円、四半期純利益が18.1%増の4億70百万円だった。

 増収・2桁増益と順調だった。キャッシュレス化の進展も背景として、大手カード会社やシステムベンダ向けのシステム更新・強化、不正検知システム構築のためのシステム開発・ハードウェア販売などが高水準に推移した。カテゴリ別には、システム開発とセキュリティ対策製品が減収だったが、保守、自社製品、クラウドサービス、ハードウェア、他社製品が増収だった。システム開発の減収は計画水準としている。利益面では開発案件の品質向上や情報セキュリティ事業の収益性改善も寄与した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高22億98百万円で営業利益1億34百万円、第2四半期は売上高29億49百万円で営業利益2億71百万円、第3四半期は売上高28億20百万円で営業利益2億73百万円だった。

 通期も大手カード会社向け開発案件、新規にカード事業を開始する顧客向け案件、クラウドサービスの新規案件などで増収増益予想としている。通期のストック売上比率は20.2%まで上昇する見込みだ。

 クラウドサービスの売上高は9億40百万円(20年6月期実績8億28百万円)の計画である。既存のIGATES2社、IFINDS3社、IOASIS4社に加えて、IPRETSの1社目が第2四半期から、IGATESの3社目・4社目が第2四半期から、IOASISの5社目(20年6月期第2四半期から稼働)が通期で寄与する見込みだ。またIFINDSの4社目(消費者金融大手)、およびIOASISの6社目・7社目(情報通信大手)が確定したとしている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高73.3%、営業利益59.0%である。利益進捗率が低水準の形だが、下期の構成比が高い特性があり、今期も期初時点で下期偏重の計画である。通期予想は達成可能だろう。さらに22年6月期も収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は6月末の配当権利落ちも影響してモミ合いから下放れの形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。7月6日の終値は608円、前期推定PER(会社予想のEPS31円18銭で算出)は約19倍、前期推定配当利回り(会社予想の10円で算出)は約1.6%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS265円55銭で算出)は約2.3倍、時価総額は約160億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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