パイプドHDは年初来高値更新、22年2月期予想を上方修正、さらに再上振れの可能性

 パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「SPIRAL」を基盤としてソリューション事業などを展開している。22年2月期は第1四半期が大幅増収増益となり、上期および通期の連結業績予想を上方修正した。さらに再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大基調を期待したい。株価は上方修正を好感して一気に年初来高値を更新した。そして20年1月の高値に接近している。目先的にはやや過熱感だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■情報資産プラットフォーム事業などを展開

 国内最大規模の情報資産プラットフォームSPIRAL(スパイラル)を基盤としてソリューション事業などを展開している。スパイラルは官公庁、金融、医療、不動産、教育機関など延べ1万1000社以上(2021年6月時点)の幅広い業種・業態に利用されている。有効アカウント数は21年2月期末時点で3947件だった。

 情報資産プラットフォーム事業は、契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。広告事業の売上高は、広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)としている。

 21年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業68%、販促CRMソリューション事業15%、広告事業12%、xTech事業3%、社会イノベーション事業1%、営業利益構成比(調整前)は情報資産プラットフォーム事業82%、販促CRMソリューション事業2%、広告事業17%、xTech事業0%、社会イノベーション事業▲1%だった。

 なお22年3月期からセグメント区分を変更し、新たなセグメント区分は、ホリゾンタルDXのクラウド(スパイラル、スパイラルEC、BizBase、エルコインなどのクラウドサービス提供)およびソリューション(Webシステム開発請負、ECサイト・アプリ構築・運営支援)、カスタマーエンゲージメントの広告(ネット広告代理販売など)およびCRMソリューション(デジタルCRM)、バーティカルDXのxTech(ArchiSymphony:BIM事業、BeauTech:美歴)および社会イノベーション(マイ広報紙、ネット投票・政治山、I Love 下北沢、シモキタコイン)、グループ共通(持株会社の管理費用、グループ全体の採用・育成費用、投資損益など)とした。伴走型インサイドセールス代行事業の子会社カレンについては21年4月に株式譲渡(連結除外)した。

■中期経営計画2023

 中期経営計画2023では目標値に23年2月期売上高75億円、営業利益17億円を掲げている。

 重点戦略として、ホリゾンタルDXの強化と拡充(スパイラルを中心とするローコード開発クラウドの更なる充実、新たなクラウドサービスの開発など)、バーティカルDXの積極的な挑戦(既存の建設・美容・政治・行政・タウンマネジメントの各分野からの成功事例の創出、特定分野のDXをトータルで支援するバーティカルDXの新たな創出)、カスタマーエンゲージメントの新たな挑戦(従来のアフィリエイト広告による集客支援と集客後のCRMのシームレスな連携)、脱炭素社会への貢献、採用・育成の通例化を推進する。

 20年11月には、新たなローコード開発プラットフォーム「SPIRAL ver2」の提供開始を発表した。グローバル案件にも対応可能な多言語機能を実装し、先行して10社以上の企業に導入済みである。21年5月には「SPIRAL ver1」を利用している顧客に対して、2020年分の「スパイラル カーボンオフセット証明書」の発行を開始した。顧客のSDGsへの取り組みを支援し、脱炭素社会の実現に貢献する。21年6月にはWordPress運用代行ホスティングサービスのスパイラル・マネージドクラウドをリリースした。

 電子地域通貨プラットフォームを提供するエルコインの子会社シモキタコインは、エルコインの電子地域通貨プラットフォーム発行事業者第1号として、下北沢で行われるイベントや商業施設等で利用される電子地域通貨を発行している。

 政治・選挙情報サイト「政治山」を運営するVOTE FORは、自治体向けオープンデータ化・活用サービス「マイ広報紙」を展開するパブリカと合併し、収益性向上を推進している。21年4月には地方自治体向けにDXを支援するサービスとして「広報プラスーわたしの〇〇」を正式リリースした。

 さらにwithコロナ・afterコロナで役立つソリューションとして、体調報告アプリ、バーチャル株主総会ソリューション、美容室向け前売りチケット販売管理「チケット管理サービス」などの開発・提供を開始している。なお21年2月には美歴が美容室向け電子ヘアカルテ共有アプリ「美歴BIREKI」および店舗向け「美歴店舗管理サービス」を全面リニューアルした。

■投資事業も推進

 20年3月にコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)として投資事業を行う新会社ダブルシャープ・パートナーズを設立した。

 そして21年2月期投資実績は、店舗マネジメントツール「はたLuck」のナレッジ・マーチャントワークス、地方企業と大都市の副業・兼業人材マッチングサービス「JOINS」のJOINS、家具のサブスクリプション型サービスのsubsclife、建物メンテナンス業務管理SaaSのBPM、BtoB受発注システム「CO―NECT」のCO―NECTに出資し、5社合計約1億30百万円を実行した。

■22年2月期業績予想を上方修正、さらに再上振れの可能性

 22年2月期の連結業績予想は6月30日に上方修正して、売上高が21年2月期比11.9%増の73億円、営業利益が5.1%増の15億円、経常利益が3.1%増の15億円、親会社株主帰属当期純利益が26.6%増の9億円とした。配当予想は据え置いて2円増配の25円(第2四半期末11円、期末14円)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比33.1%増の19億35百万円、営業利益が93.8%増の5億49百万円、経常利益が114.6%増の6億08百万円、四半期純利益が137.3%増の4億21百万円だった。

 大幅増収増益だった。ホリゾンタルDXのクラウドが34.9%増収、61.3%増益と大幅伸長した。新型コロナウイルス感染症対策関連で急を要するシステム案件の受注が好調だった。スパイラル有効アカウント数は前年比252件増の3978件となった。カスタマイズを伴う案件の増加も寄与した。カスタマーエンゲージメントの広告も36.7%増収、75.5%増益と大幅伸長した。大型案件などが寄与した。

 そして上期および通期の連結業績予想を上方修正した。従来の通期予想は人件費増加など先行投資の影響で営業・経常減益予想としていたが、一転して営業・経常増益予想とした。当期純利益は前期計上の特別利益が剥落して減益予想だが、従来予想に比べて減益幅が縮小する見込みだ。

 なお通期予想の上方修正幅(売上高3億円、営業利益1億円、経常利益1億円、当期純利益60百万円)は上期の上方修正分を上乗せした形であり、下期は計画を据え置いている。修正後の通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高26.5%、営業利益36.6%、経常利益40.6%、当期純利益46.8%と高水準である。通期予想に再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大基調を期待したい。

■株価は年初来高値更新

 株価は上方修正を好感して一気に年初来高値を更新した。そして20年1月の高値に接近している。目先的にはやや過熱感だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。7月7日の終値は2194円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS115円23銭で算出)は約19倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約1.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS574円38銭で算出)は約3.8倍、時価総額は約179億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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