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【小倉正男の経済コラム】機械受注:先行指標・設備投資に回復の兆し
- 2021/7/13 10:58
- 小倉正男の経済コラム
■機械受注は回復に好転
機械受注の動向だが、5月は総額ベースで2兆7547億円(前月比9・8%増)となった。4月の18・2%増に続いて回復傾向となっている。政府の新型コロナ感染対策の混迷や失態が経済の足を引っ張っているが、設備投資の状況を示す機械受注では低迷から回復に転じている。
内訳でいうと、外需が1兆3563億円(前月比11・4%増)と牽引している。経済再開が早かった中国などからの半導体関連製造装置、工作機械などへの旺盛な需要が続いている。民需が9965億円(同8・5%増)、官公需は2652億円(同3・1%増)となっている。
景気の先行指標である民間需要(規模が大きく不規則な船舶・電力を除く)では、5月は8657億円(同7・8%増)、4月の0・6%増から大きく好転している。市場予想は2・4%増だったから、民間需要は市場予想を大きく上回る伸長をみせている。
製造業は3901億円(同2・8%増)だが、4月は10・9%増だったわけだから高い水準を維持しているといってよい。非製造業は4532億円(同10・0%増)で、4月の11・0%減から反転している。新型コロナ禍で低迷に直撃されていた非製造業に復活の動きがみられるようになったことは前向きな変化だ。
■景気の回復傾向は定着か
景気判断も「持ち直しの動きがみられる」と前向きなものに変わった。4月までは、「持ち直しの動きに足踏みがみられる」という景気判断だったわけであり急好転といえる。
政府のコロナ対策、経済政策のゴタゴタがあっても、経済のほうはマーケットの需給に沿って自律的に動いている面がある。中国、米国の経済再開スピードに日本は目が当てられないほど差を開けられたが、それでも景気回復の芽がようやく出てきている。
この変化が定着するのかどうかは、7月以降の動向をみて確認する必要がある。ワクチンをめぐる供給不足など不手際がマイナス要因だが、何とか景気の回復が定着する方向に歩を進め始めたとみてよい。
製造業では、中国からの機械関連需要の回復基調が、昨年後半から継続している。「4月~6月は需要が旺盛というか加熱気味なほどで、7月~9月もこれが続くとみられる。その後は反動でやや一服局面があるとしても回復基調は変わらない」(機械関連企業)。
外需に加えて内需でも、製造業では世界的な半導体不足を背景に半導体関連、半導体製造関連装置などで設備増強投資が開始されている。非製造業では、通信業で「5G」、銀行など金融業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)投資が継続している模様だ。
■経済の足を引っ張る政治
経済のほうは、曲がりなりにも再生に踏み出そうとしている。しかし、政治は相変わらずコロナ禍に嵌まり込んでいる。
西村康稔・経済再生相が起こした“問題”については、かつてないほど批判が湧き上がった。西村経済再生相は、緊急事態宣言で酒類提供停止に応じない飲食店を対象にして、「(金融庁を使って)取引金融機関から働きかける」といった“要請”を行うと発表した。さすがに批判を浴びて、撤回となった。実行されていたら、国が民間経済を統制するという事態になっていたことになる。
これは一党独裁の専制国家なみの政策ということになる。官庁から指示を出すという枠組み(スキーム)だから、擬似的とはいえ社会主義国家のやり方である。「コロナ感染防止と経済の両立」といった政策もそうだったが、“酷い結末”を呼び起こすことになりかねなかったわけである。
経済のほうも「一流国」の座を失いかけている。すでに失ったとみる向きも少なくない。これ以上、政治が経済を邪魔し、経済の足を引っ張るようなことは避けてほしいものだ。
(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)