【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは下値固め完了感、16年5月期の収益改善期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信や店頭アフィリエイト広告ビジネスなどを展開している。株価は年初来安値圏340円近辺でモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。16年5月期の収益改善期待で反発展開だろう。なお7月10日に15年5月期の決算発表を予定している。

 コンテンツ制作・配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略として、ネイティブアプリ事業を新たな収益柱に育成する方針だ。

 ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化した。

 中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。

 コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信し、自社コンテンツ資産の2次利用を推進する戦略だ。

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 子会社HighLabは、15年3月パズルゲーム「ハニープラス」および旦那育成ゲーム「ウチの旦那はイケてない」配信、15年5月戦うネズミのシューティングゲーム「PasteLius(パステリウス)」配信、美少女キャラクターと対局するスマートフォン向け麻雀ゲームアプリ「爽快麻雀!イーシャンテン」配信を開始した。また6月16日には新機能「お絵かき通話」を搭載したスマートフォン向け無料チャットアプリ「Fivetalk」最新版を公開した。

 15年4月には集英社コミック約1700作品・8800冊を、スマートフォン・タブレット向け総合電子書籍サービス「BOOKSMART」にて配信開始した。

 15年5月にはスマートコミュニティ事業への参入、および太陽光発電・販売を行う合弁子会社として山口再エネ・ファクトリーの設立(15年6月)を発表した。スマートコミュニティ事業を機に、地方創生ビジネスの拡大を図るとしている。

 15年5月には子会社の会津ラボが、会津若松市「桜咲く会津プロジェクト実行委員会」が実施する「次世代型食品生産トライアル事業」へ、農作物の高品質化・高付加価値化を実現するアプリケーションならびにシステムを開発して提供すると発表した。ICTを活用してスマート農業を支援する。

 6月17日には子会社アットザラウンジが、ソフトバンクモバイルが運営するスマートフォン向けアプリ取り放題サービス「App Pass」にて、音楽配信サービス「SOUNDSMART for App Pass」の配信開始を発表した。

 さらに6月18日には、IDCフロンティア(東京都)とクラウド分野で業務提携し、クラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスの提供開始を発表した。

 前期(15年5月期)連結業績予想(11月28日に売上高と利益を減額修正、1月9日に税金費用減少で純利益を増額修正)については、売上高が前々期比13.8%増の51億30百万円、営業利益が同34.4%減の2億20百万円、経常利益が同32.4%減の2億30百万円、純利益が同58.8%減の1億80百万円としている。

 配当予想(7月9日公表)は、前々期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。予想配当性向は64.8%となる。

 新サービスの企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の開発遅延に伴って売上高が期初計画を下回り、子会社HighLabのネイティブアプリ「Fivetoak」および「ひっぱれ!ネコPingプラネット」のプロモーション費用など先行投資負担が影響して減益見通しとしている。

 第3四半期累計(6月~2月)は前年同期比14.1%増収だったが、広告宣伝費の増加などが影響して同55.0%営業減益、同51.4%経常減益、同60.8%最終減益だった。

 セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は新規コンテンツ投入で売上高が同4.4%増の19億11百万円と順調だったが、広告宣伝費増加などで営業利益(全社費用等調整前)が同25.3%減の4億39百万円だった。ソリューション事業は広告ビジネス「店頭アフィリエイト」に係る携帯電話販売会社との連携強化で売上高が同26.5%増の18億29百万円、営業利益が同40.3%増の1億30百万円と好調に推移した。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、第3四半期(12月~2月)12億26百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円だった。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.9%、営業利益が51.8%、経常利益が54.4%、純利益が90.0%だった。営業利益と経常利益は低進捗率のため通期下振れに注意が必要だが、売上面で見るとコンテンツサービス事業は交通情報などが牽引し、ソリューション事業は広告ビジネス「店頭アフィリエイト」が大幅伸長して増収基調だ。

 また今期(16年5月期)は、交通情報や「店頭アフィリエイト」の好調に加えて、ゲーム新タイトルも本格寄与して営業損益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、年初来安値圏の340円近辺でモミ合う展開だ。ただし、6月17日に335円まで調整したが、18日には一転して352円まで上伸する場面があり、下値固め完了感を強めている。

 6月18日の終値342円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS4円63銭で算出)は74倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績に増資を考慮した連結BPS107円70銭で算出)は3.2倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線突破の動きを強めている。340円近辺で下値固めが完了し、16年5月期の収益改善期待で反発展開だろう。

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