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綿半ホールディングスは下値固め完了、22年3月期微増益予想だが保守的
- 2021/7/21 08:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
綿半ホールディングス<3199>(東1)はホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。22年3月期は巣ごもり消費の反動などで微増益にとどまる予想としているが、やや保守的だろう。仕入原価低減効果などで上振れを期待したい。株価は上値を切り下げる形で軟調だったが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。なお7月30日に22年3月期第1四半期決算発表を予定している。
■小売事業、建設事業、貿易事業を展開
ホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。21年3月期のセグメント別売上高構成比は小売事業が70%、建設事業が24%、貿易事業が5%、その他が0%、営業利益構成比(調整前)は小売事業が56%、建設事業が21%、貿易事業が20%、その他が3%だった。なお22年3月期から、小売事業に含まれていた木造住宅分野を建設事業に変更する。
■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進
小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。スーパーセンターは生鮮食品を含めて10万点を超える豊富な品揃えが特徴だ。22年春には綿半スーパーセンター権堂店(長野市)を出店予定である。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗として初の出店となる。
M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革などを推進している。
M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネットを子会社化(20年6月綿半ドットコムに社名変更)、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店を子会社化(19年11月綿半三原商店に社名変更)、19年8月に戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県浜松市)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に長野県で調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県佐久市)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県島田市)を子会社化した。
なお小売事業の月次売上(速報値)を見ると、21年6月は全店が93.6%、既存店が93.6%だった。園芸用品が好調だったが、前年の巣ごもり消費や気温上昇の反動でインテリア・DIY用品、季節商品が減少した。21年4月~6月累計は全店が94.6%、既存店が94.4%となった。
■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み
建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。
長尺屋根工事では工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、自走式立体駐車場工事では柱の少ない「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有している。
21年2月に引き渡し完了したSUBARU矢島工場従業員専用立体駐車場の建設工事、および工場と駐車場を繋ぐ連絡橋工事では、駐車場屋上階に自走式駐車場発電設備として日本最大級規模の太陽光発電システムを設置した。また21年7月には、3D巨大猫で話題の新宿駅東口「クロス新宿ビジョン」が設置されているクロス新宿ビルに、自社オリジナル製品の超大型大開口サッシ「GLAMO」が採用されて竣工した。
21年6月には戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)の全株式を取得して子会社化(株式譲渡予定21年7月15日頃まで)すると発表した。また長野県高森町に鉄構工場を新設すると発表した。飯田第1工場の機能を新工場に移転・集約する。
■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売
貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。
ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。
■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す
中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。なお20年6月には長野県SDGs推進企業に登録された。
中期経営計画では、目標値に22年3月期売上高1200億円(小売事業790億円、建設事業350億円、貿易事業58億円、その他2億円)、経常利益32億円を掲げている。
小売事業は既存店売上を維持しながら、M&Aも積極活用してネット通販など販売手法の多様化を推進する。コスト面では新決済システムや物流改革による効率化を推進する。新規出店は3年間で売場面積4500坪拡大を目指す。建設事業は新製品開発や工場ロボット化による生産性向上、貿易事業は天然原料の新製品投入や販路拡大で収益力向上を目指す。
■22年3月期は微増益予想だが保守的
22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期比4.5%増の1200億円、営業利益が2.7%増の33億71百万円、経常利益が0.6%増の35億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.4%増の21億円としている。配当予想は1円増配の21円(期末一括)である。
セグメント別利益計画は、小売事業が前年の巣ごもり消費の反動で7.4%減益、建設事業が木造住宅分野を加えて12.8%増益、貿易事業が前年の在庫積み増し特需の反動で15.3%減益としている。小売事業は店舗改装・新規出店を継続する。建設事業は生産効率向上に向けた鉄構工場再編成を推進する。
全体として、上期は新型コロナウイルスの影響が継続すると想定し、通期ベースでも微増益にとどまる予想としている。ただし保守的な印象が強い。仕入原価低減効果などで上振れを期待したい。
■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象
株主優待制度は、毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続的に保有している株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈している。なお新たに300株以上の優待区分を新設し、21年9月末対象から実施(詳細は会社HP参照)する。
■株価は下値固め完了
株価は上値を切り下げる形で軟調だったが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。7月20日の終値は1236円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS105円98銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の21円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS884円81銭で算出)は約1.4倍、時価総額は約245億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)