LibWorkはモミ合い煮詰まり感、22年6月期も収益拡大基調

 LibWork<1431>(東マ)は熊本県を地盤として九州圏および首都圏に展開する注文住宅メーカーである。Webマーケティングによる独自集客手法を特徴として全国展開を目指している。21年6月期(連結決算開始)は大幅増益予想としている。受注好調で22年6月期も収益拡大基調だろう。株価はモミ合い展開だが煮詰まり感を強めている。中期成長力を評価してモミ合い上放れの展開を期待したい。

■熊本県を地盤として全国展開を目指す注文住宅メーカー

 熊本県を地盤として九州圏(熊本県、佐賀県、福岡県、大分県)に展開する注文住宅メーカーである。第一次取得層を主ターゲットとして、省エネ性能に優れた住宅を提供している。またMUJI HOUSEとネットワーク加入契約(フランチャイズ契約)し、熊本エリアと福岡エリアで独占営業権を取得して「無印良品の家」も提供している。

 全国展開を目指し、20年7月にタクエーホーム(横浜市)を子会社化して首都圏に進出した。21年9月には関東初出店となる千葉店(千葉市)のグランドオープンを予定している。今後の出店戦略として、千葉店の出店を皮切りに関東への出店を加速するとともに、23年6月までに全国の店舗網を25店舗(21年3月現在16店舗、本店含む)に拡大する方針である。

 なお一般社団法人住宅性能評価・表示協会の発表によると、20年8月末時点のBELS(評価機関が省エネルギー性能の評価・表示を行う第三者認証制度)申請数の住宅分野において、設計者では全国5389社中の34位、施工者では全国5915社中の44位となっている。

■WEBマーケティングが特徴、デジタル集客拡大

 一般的な常設展示場(モデルハウス)への集客ではなく、戸建関連カテゴリーポータルサイト(e土地net、e注文住宅net、e平屋net、e建築士net)などのWebマーケティングによる独自の集客手法を特徴として、大幅なコストダウンを実現している。WEBはエリアに依存しないため全国展開も容易になる。またポータルサイトの広告掲載料と仲介手数料を不要としているため、多数の最新の土地情報が集まりやすい。

 20年8月には「e土地net 神奈川版」を開設した。20年7月子会社化したタクエーホームとともに、関東への展開の拠点とする。

 20年1月に開設したYouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用も推進する。登録者数は20年12月に1万人を突破、21年4月に2万人を突破した。23年までに10万人を目指している。

■新商品開発ではコラボ戦略を活用

 新商品共同開発では、19年11月グリムス<3150>の子会社グリムソーラーと提携、20年3月アダストリア<2685>と提携した。

 20年12月には「Afternoon Tea」ブランドのサザビーリーグと提携した。関東初出店となる千葉店のモデルハウスは、千葉北住宅公園(仮称)にコラボ商品「Afternoon Tea HOUSE」ブランドでの出店を予定している。

■23年6月期株式時価総額500億円目指す

 WEBマーケティングをコアコンピタンスとする住宅テック企業として、20年1月策定の経営ビジョン「VISION2030」の達成(毎年売上20%成長を基本とした安定的・永続的な成長)を目指している。

 20年8月策定の中期経営計画「NEXT STAGE 2023」では、定量目標値として、23年8月期の株式時価総額500億円、売上高150億円(20年6月期比2.5倍)、営業利益12億円(同8倍)、ROE25%(同3.4倍)を掲げている。

 成長戦略として全国展開の加速、デジタル集客の拡大、住宅版SPAモデル確立、サブスクリプションモデルによる全国の工務店・ビルダー支援事業の収益化を推進している。

 定量目標値以外のKPIは、戸建売上総利益率35%(20年6月期実績28%)、店舗数25店舗(同12店舗)、Web集客数毎年50%増加、YouTubeチャンネル登録数10万人、サブスクリプション工務店支援事業(20年6月経済産業省中小企業庁の新連携支援事業に採択)の営業利益1億円としている。

 全国展開の加速では、エリア・店舗数の拡大(20年6月期の合計12店舗を23年6月期25店舗に拡大)による日本全国への出店、ショッピングモール向け新ブランド「sketch」の展開を推進(23年6月期売上高20億円目標)する。

 デジタル集客の拡大では、戸建関連カテゴリーポータルサイトの充実・拡大、戸建カテゴリーに特化した集客サイトや他社建売物件仲介サイトなど新規サイトのリリース、YouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用を推進する。

 住宅版SPAモデル確立では、主要5工事(給排水設備工事、基礎工事、建て方工事、サイディング工事、地盤改良工事)の内製化により、戸建売上総利益率を35%まで高めるとともに、自社独自工法の開発を開始する。

 サブスクリプションモデルによる全国の工務店・ビルダー支援事業の収益化では、AIを活用した全国の工務店・ビルダー支援システムを21年6月リリース予定で、全国の工務店にサービス展開する。

■SDGs宣言

 SDGsへの取り組みを強化するため自社内でSDGsキックオフを開催し、内閣府が設置した「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」にも参画している。そして21年3月にはSDGs宣言を行い、サステナブルな住まいづくりを通じて豊かな暮らしと幸せの実現、地球環境への配慮に貢献する方針を打ち出した。また、一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークへの寄付、グリムスソーラーと共同で商品化した太陽光発電システム導入費用が無料となる「Lib Work Solar Free」の提供開始も発表した。

 21年4月には、国土交通省が行う社会実験のIT重説実施時における「重要事項説明書等の電磁的方法による交付」の登録事業者として認定され、宅地建物取引の売買時においても「IT重説」および「電子書面交付」を開始した。DXを推進して、SDGs番号8「働きがいも、経済成長も」およびSDGs番号12「つくる責任、つかう責任」にも寄与できるとしている。

 21年5月には、東京理科大学と「新構造技術を用いた木造住宅耐震化向上」を目的とする共同研究開発契約を締結した。SDGs番号9「産業と技術革新の基礎をつくろう」およびSDGs番号12「つくる責任、つかう責任」の達成にも寄与できるとしている。

■21年6月期大幅増益予想、22年6月期も収益拡大基調

 21年6月期の連結業績予想(タクエーホームを子会社化して連結決算開始、5月13日に売上高を下方、利益を上方修正)は、売上高が94億46百万円、営業利益が5億円、経常利益が5億88百万円、親会社株主帰属当期純利益が3億56百万円としている。20年6月期非連結業績との比較で売上高が56.5%増収、営業利益が3.5倍増益、経常利益が3.0倍増益、当期純利益が2.6倍増益となる。

 第3四半期累計は売上高が58億56百万円、営業利益が1億円、経常利益が1億60百万円、四半期純利益が71百万円だった。前年同期の非連結業績との比較では先行投資などで減益だったが、デジタル集客数は157%、受注棟数は205%と大幅伸長した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高10億11百万円で営業利益1億95百万円の赤字、第2四半期は売上高35億34百万円で営業利益4億46百万円、第3四半期は売上高13億11百万円で営業利益1億51百万円の赤字だった。

 通期ベースでは大幅増収増益予想としている。受注が好調であり、住宅版SPAモデルによる注文住宅事業の利益率上昇、デジタルマーケティングによる販管費削減なども寄与する見込みだ。なおタクエーホームを含む21年4月~6月の受注棟数は前年比191%、受注金額は224%、20年7月~21年6月ベースでは受注棟数が219%、受注金額が226%となった。22年6月期も収益拡大基調だろう。

■配当は四半期配当、株主優待制度は保有期間・株式数に応じて贈呈

 配当は四半期配当を行っている。5月13日には期末配当予想の上方修正を発表した。20年10月1日付株式2分割および21年4月1日付株式2分割の換算後で見ると、21年6月期の配当は4.575円(第1四半期末、第2四半期末、第3四半期末が各1.125円、第4四半期末が1.20円)となる。なお20年6月期は同様に換算後で4.50円(上場記念配当含む)だった。

 株主優待制度については各四半期(9月、12月、3月、6月)末時点の株主を対象として実施している。21年6月期以降は保有期間および保有株式数に応じて、9月末、12月末、3月末時点は1000株以上保有株主に対して株主優待ポイント、6月末時点は、100株~999株保有株主に対してクオカード、1000株以上保有株主の保有株式数に応じて株主優待ポイントを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

 なお21年6月末に限り、記念株主優待として100株以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。対象株主は既存の株主優待と記念株主優待を併せて合計2000円分のクオカード贈呈となる。

■株価はモミ合い煮詰まり感

 株価はモミ合い展開だが煮詰まり感を強めている。中期成長力を評価してモミ合い上放れの展開を期待したい。7月26日の終値は885円、前期実績連結PER(会社予想の連結EPS16円57銭で算出)は約53倍、前期推定配当利回り(株式分割換算後の会社予想4.575円で算出)は約0.5%、前々期実績PBR(前々期実績の非連結BPS85円61銭で算出)は約10倍、時価総額は約206億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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