KeyHolderは調整一巡、21年12月期減益予想だが上振れの可能性

 KeyHolder<4712>(JQ)は総合エンターテインメント事業を展開し、映像コンテンツ業界におけるコンテンツサプライヤーおよびコンテンツホルダーとしての中期成長を目指している。21年12月期は成長加速に向けた先行投資などで減益予想としているが上振れの可能性が高いだろう。収益改善基調を期待したい。株価は年初来安値圏に回帰してやや軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■事業ポートフォリオ再編

 17年10月に旧アドアーズが持株会社へ移行して商号をKeyHolderに変更した。事業ポートフォリオ再編でアミューズメント施設運営事業と不動産事業・商業施設建築事業をグループアウトした一方で、20年8月に映像コンテンツやライブコンサートなどのトータルプロデュース事業を行うノース・リバーを連結子会社化、アイドルグループ「乃木坂46」を運営する芸能プロダクションの乃木坂46合同会社(ノース・リバーが持分50%保有)を持分法適用関連会社化した。現在はM&Aやアライアンスも活用して総合エンターテインメント事業を展開している。

 また20年12月には、親会社のJトラスト<8508>が保有する当社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡して、Jトラストの持分法適用関連会社となった。

■総合エンターテインメント事業

 アイドルグループ「SKE48」などの管理・運営を行う総合エンターテインメント事業を中心に、バラエティ番組・テレビドラマ・映画製作などを行う映像制作事業、大手CVSチェーンにおける販促企画を提供する広告代理店事業を展開し、新たな収益柱構築を目指している。

 20年12月には、第一興商<7458>と資本業務提携(第一興商を割当先とする新株式発行、コンテンツ・マネジメント・ライツ・出版・新サービス関連での業務提携)、および韓国大手芸能事務所エスエム・エンタテインメントの日本法人SMEJの子会社SMEJ Plusと資本業務提携(SMEJ Plusを割当先とする新株式発行、ファンクラブ関連・新規ファンビジネス関連での業務提携)した。

 20年12月期末時点の事業体制・主要グループ会社は、アイドルグループ「SKE48」マネジメント等(ライブ・エンタメ事業)のゼスト、トータルプロデュース事業のノース・リバー、アイドルグループ「乃木坂46」運営の乃木坂46合同会社(持分法適用関連会社)、イベント企画・運営やモデルマネジメント等のホールワールドメディア(角川春樹事務所と合弁)、カラーコンタクトレンズ販売のFA Project、広告代理店事業やデジタル・コンテンツ事業のallfuz、テレビ番組など映像制作事業のUNITED PRODUCTIONS、映像制作関連クリエイター・スタッフ派遣のワイゼンラージである。

 コンテンツ開発から総合的なマネタイズまでをカバーする体制となり、今後は映像コンテンツ業界におけるコンテンツサプライヤーおよびコンテンツホルダーとして、コンテンツ(アーティスト、タレント、プロスポーツ選手など)の拡充、グループリソースを活用した展開をサポートするためのエージェント機能の強化、媒体・モデルを活用した情報発信などを推進し、グループシナジーによって中期成長を目指す方針だ。

 21年1月には子会社のallfuzが、フォーサイド<2330>の子会社であるフォーサイドメディアから映像制作事業を譲り受けた。

■21年12月期減益予想だが上振れの可能性

 21年12月期連結業績予想(IFRS)については、売上収益が20年12月期比40.2%増の150億円、営業利益が37.7%減の10億円、親会社株主帰属当期純利益が34.1%減の8億50百万円としている。配当予想は20年12月期と同額の10円(期末一括)である。

 第1四半期は売上収益が前年同期比2.2倍の37億06百万円、営業利益が6億97百万円の黒字(前年同期は1億88百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が9億86百万円の黒字(同1億37百万円の赤字)だった。M&Aや事業再編などで大幅増収・黒字化した。

 総合エンターテインメント事業では新規所属の女優・タレント・アーティストが増加し、積極的な活動を展開した。セグメント別利益は、総合エンターテインメント事業が7億50百万円(前年同期は1億20百万円の赤字)、映像制作事業が2.4倍の77百万円、広告代理店事業が60百万円(同30百万円の赤字)、その他が13百万円の赤字(同8百万円の赤字)だった。なお乃木坂46合同会社に係る持分法投資利益7億31百万円、および投資有価証券評価益3億22百万円を計上した。

 通期予想は据え置いた。ノース・リバーの通期連結や総合エンターテインメント事業の拡大などで大幅増収だが、将来の収益規模拡大に向けてエージェント構想やファンクラブプラットフォーム構想を進めており、さらなる成長加速に向けた先行投資などを考慮している。また第1四半期には持分法投資利益および投資有価証券評価益を計上したが、今後の市場動向の変化を予測することは困難としている。

 ただし第1四半期の進捗率は売上収益が24.7%、営業利益が69.7%、当期利益が116.0%と高水準である。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。収益改善基調を期待したい。

■株主優待制度は毎年12月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年12月31日時点の1000株(10単元)以上保有株主を対象として実施している。新たな株主優待として「KeyHolder Premium Club」も開始した。

■株価は調整一巡

 株価は年初来安値圏に回帰して軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。7月28日の終値は868円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS49円04銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想10円で算出)は約1.2%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS830円38銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約151億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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