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神鋼商事は上値試す、22年3月期は上方修正して大幅増益・増配予想
- 2021/8/12 08:40
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼や非鉄金属関連などを扱う商社である。KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社としてグローバルビジネスの深化を追求している。22年3月期は第1四半期が大幅増益となり、第2四半期累計・通期連結業績予想および配当予想を上方修正した。さらに再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は急伸して年初来高値を更新した。目先的にはやや過熱感だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社
神戸製鋼所<5406>系で、鉄鋼製品(鋼板製品、線材製品など)、鉄鋼原料(輸入鉄鋼原料、合金鉄、コークスブリーズなど)、非鉄金属(銅製品、アルミ製品、非鉄金属地金・スクラップなど)、機械・情報(ゴム・タイヤ機械、製鉄・非鉄機械、化学機械、環境関連機器、電池用材料、液晶用材料、PC部品など)、溶接材料・機器(溶接材料、溶接関連機器、溶接ロボットシステムなど)を扱う商社である。M&Aも積極活用して、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社としてグローバルビジネスの深化を追求している。
21年3月期のセグメント別経常利益構成比は鉄鋼が15%、鉄鋼原料が8%、非鉄金属が46%、機械・情報が30%、溶材が4%、その他が▲2%だった。鉄鋼、鉄鋼原料、非鉄金属は、取扱数量と市況の影響を受けて収益が変動しやすい特性がある。
■重点分野はEV・自動車軽量化と資源循環型ビジネス
新中期経営計画(22年3月期~24年3月期)では、EV・自動車軽量化と資源循環型ビジネスを重点分野と定めた。そして目標数値に、最終年度24年3月期の経常利益95億円(鉄鋼41億円、鉄鋼原料13億円、非鉄金属23億円、機械・情報13億円、溶材5億円)以上、ROE9%以上を掲げた。
投資額は3年合計200億円とした。内訳は自動車向け鋼材加工事業20億円、環境リサイクル事業30億円、アルミ加工事業80億円、M&Aによる流通再編20億円、その他・海外チャンネル拡大・サプライチェーン強化50億円である。
鉄鋼は海外(中国、米国など)拡販や海外現地需要取り込み、鉄鋼原料は鉄スクラップとバイオマス燃料の取り扱い拡大、非鉄金属は半導体・自動車向け部材やエアコン用銅管の取り扱い拡大、機械・情報は建設機械部品の海外取り扱い拡大、溶材はM&Aによる流通再編や販売機能の強化を推進する。
株主還元の基本方針は、財務体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、連結配当性向30%を目標に、安定的な配当を維持するとした。SDGsへの取り組みでは、鉄スクラップ、バイオマス燃料、雑電線屑などの取り扱い拡大や再資源化の推進を目指している。
■22年3月期1Q大幅増益で通期予想上方修正、さらに再上振れの可能性
22年3月期第1四半期の連結業績は、売上高が1139億44百万円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用のため前期比増減率は非記載)で、営業利益が前年同期比3.7倍の20億83百万円、経常利益が3.3倍の23億26百万円、親会社株主帰属四半期純利益が28.5倍の17億96百万円だった。
自動車関連や半導体関連の取り扱いが好調に推移して大幅増益だった。セグメント別利益(経常利益)は、鉄鋼が鋼板製品および線材製品の国内向け取扱量増加や価格上昇などで3.4倍の11億95百万円、鉄鋼原料が市況低迷による海外子会社の収益悪化などで45.5%減の73百万円、非鉄金属が銅製品・アルミ製品・非鉄原料の取扱量増加などで6.3倍の10億98百万円、機械・情報が圧延設備や大型圧縮機などの減少で64百万円の赤字(前年同期は1億円の黒字)、溶材が建築・自動車・建設機械向け溶接材料の取扱量増加などで46百万円の黒字(同39百万円の赤字)だった。
第1四半期の好調を受けて第2四半期累計・通期の連結業績予想、および配当予想を上方修正した。修正後の通期連結業績予想は、売上高が4830億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用のため前期比増減率は非記載)で、営業利益が21年3月期比75.1%増の78億円、経常利益が79.5%増の73億円、親会社株主帰属当期純利益が2.3倍の51億円としている。配当予想は70円上方修正(第2四半期末35円上方修正、期末35円上方修正)して、21年3月期比120円増配の170円(第2四半期末85円、期末85円)とした。
第2四半期以降も自動車関連や半導体関連の取扱量が概ね好調に推移し、価格も高値圏で推移する見込みとしている。さらに販管費が当初想定よりも大幅に縮小する見込みとなったことも寄与する。修正後の通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.6%、経常利益が31.9%である。需要が回復基調であり、さらに再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株価は上値試す
株価は急伸して年初来高値を更新した。18年以来の高値圏だ。目先的にはやや過熱感だが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。8月11日の終値は3135円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS575円96銭で算出)は約5倍、今期予想配当利回り(会社予想の170円で算出)は約5.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS6295円46銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約278億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)