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ジャパンフーズは調整一巡、22年3月期1Q大幅増益で通期上振れ余地
- 2021/8/20 09:01
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託製造の国内最大手である。持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、新規商材受注や積極的設備投資による競争力向上を推進している。22年3月期は新型コロナ影響緩和や新SOT缶ライン本格稼働による受注増加、低重心経営によるコスト削減などで黒字回復予想としている。第1四半期は受託製造数量増加や事業取込利益増加などで大幅増益だった。通期予想を据え置いたが上振れ余地がありそうだ。株価は上値が重く小幅レンジでのモミ合い展開だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。
■飲料受託生産の国内最大手、フレキシブルな生産体制が強み
伊藤忠商事<8001>系で、飲料受託製造の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーである。品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ラインは、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産体制が強みだ。
新規ビジネス分野として、連結子会社JFウォーターサービスは水宅配・ウォーターサーバーメンテナンス事業を展開している。また国内で水宅配フランチャイズ事業を展開するウォーターネット、および中国で清涼飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(東洋製罐と合弁)を持分法適用関連会社としている。
収益面の特性として、個人消費や天候などの影響を受けやすい。また飲料業界全体が、夏場の上期(4~9月)に繁忙期となって生産量が増加するのに対して、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。
■「100年企業」目指して積極的設備投資
中期経営計画「JUMP+プラス2021 次のステージへ」では、持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、経営課題である「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」に対する取り組みを確実に進化させる方針としている。
経営目標値には22年3月期売上高189億円、営業利益10億円、経常利益11億円、純利益7億50百万円、ROE7.6%などを掲げている。配当については、定額の安定配当(1株当たり27円)に加えて、期間業績に応じて配当性向20%を限度とする期末配当の増配を行う方針としている。
重点戦略としては、コアセグメント(国内飲料受託製造)における積極的設備投資による競争力向上、新規セグメント(東洋飲料、ウォーターネット、JFウォーターサービス)における既存事業拡充、新たなビジネスモデル創出(オペレーション・メンテナンス技術の活用・収益化など)を掲げている。また総合スクラップ&ビルド第2フェーズとして、工場建屋およびSOT缶ラインの新設を進めている。
飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量減少を懸念する見方もあるが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。
このため飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まり、飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮している。
■22年3月期黒字回復予想、1Q大幅増益で通期上振れ余地
22年3月期連結業績(収益認識に関する企業会計基準第29号適用)予想は、売上高が21年3月期比16.8%減の103億円、営業利益が4億40百万円の黒字(21年3月期は7億50百万円の赤字)、経常利益が5億10百万円の黒字(同5億64百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が4億円の黒字(同4億98百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)である。
収益認識に関する企業会計基準第29号適用で大幅減収の形だが、全体として黒字回復予想としている。新型コロナ影響緩和や新SOT缶ライン本格稼働による受注増加(国内製造数は25.9%増の計画)、コスト削減(低重心経営による変動費・固定費削減の更なる進捗)効果などで、単体ベースの収益が9億84百万円回復(当期純利益ベースで21年3月期7億24百万円の赤字から22年3月期2億60百万円の黒字に回復)の見込みとしている。
事業取込利益は86百万円減少(当期純利益ベースで21年3月期2億26百万円から22年3月期1億40百万円に減少)を見込んでいる。なお純利益ベースでの新型コロナ影響額は10億円のマイナス要因、低重心経営によるコスト削減効果は7億円のプラス要因の計画としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比23.5%減の31億13百万円、営業利益が20.5%増の5億49百万円、経常利益が37.3%増の5億77百万円、親会社株主帰属四半期純利益が49.9%増の4億17百万円だった。
収益認識に関する企業会計基準第29号適用で一部の売上を純額計上に変更した影響(この影響で売上高が12億34百万円減少、売上原価が12億23百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ10百万円減少)で大幅減収の形だが、新型コロナ影響緩和や新SOT缶ライン本格稼働などで国内受託製造数量が9.7%増加した。子会社の事業取込利益の増加も寄与して大幅増益だった。
セグメント別利益は国内飲料受託製造が16.0%増の5億36百万円、海外飲料受託製造が35百万円の黒字(前年同期は43百万円の赤字)、その他が17.0%増の6百万円だった。
通期予想は据え置いた。季節要因で下期は赤字となる収益特性だが、第1四半期の大幅増益を勘案すれば通期予想に上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は調整一巡
株価は上値が重く小幅レンジでのモミ合い展開だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。8月19日の終値は1218円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS82円94銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想27円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1491円24銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約62億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)