綿半ホールディングスは調整一巡、22年3月期1Q減収減益だが通期増収増益予想据え置き

 綿半ホールディングス<3199>(東1)はホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。22年3月期第1四半期は巣ごもり特需の反動で減収減益だったが、通期増収増益予想を据え置いた。通期ベースで収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く小幅レンジでモミ合う形だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■小売事業、建設事業、貿易事業を展開

 ホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。21年3月期のセグメント別売上高構成比は小売事業が70%、建設事業が24%、貿易事業が5%、その他が0%、営業利益構成比(調整前)は小売事業が56%、建設事業が21%、貿易事業が20%、その他が3%だった。なお小売事業に含まれていた木造住宅分野を22年3月期から建設事業に変更した。

 M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネットを子会社化(20年6月綿半ドットコムに社名変更)、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店を子会社化(19年11月綿半三原商店に社名変更)、19年8月に戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県浜松市)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に長野県で調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県佐久市)を子会社化した。

 21年3月には組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県島田市)を子会社化、21年8月には戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)を子会社化した。

■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進

 小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。スーパーセンターは生鮮食品を含めて10万点を超える豊富な品揃えが特徴だ。

 M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革などを推進している。

 22年春には綿半スーパーセンター権堂店(長野市)を出店予定である。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗として初の出店となる。

 なお小売事業の月次売上(速報値)を見ると、21年7月は全店が100.2%、既存店が100.2%だった。前年の特別定額給付金や巣ごもり特需の反動で調理家電やインテリア用品が減少したが、アウトドア体験等の親子向けイベント開催の効果で客数が伸長し、飲料・レジャー用品が好調だった。なお21年4月~7月累計は全店が95.9%、既存店が95.8%となった。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

 建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。

 長尺屋根工事では工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、自走式立体駐車場工事では柱の少ない「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有している。

 21年2月に引き渡し完了したSUBARU矢島工場従業員専用立体駐車場の建設工事、および工場と駐車場を繋ぐ連絡橋工事では、駐車場屋上階に自走式駐車場発電設備として日本最大級規模の太陽光発電システムを設置した。また21年7月には、3D巨大猫で話題の新宿駅東口「クロス新宿ビジョン」が設置されているクロス新宿ビルに、自社オリジナル製品の超大型大開口サッシ「GLAMO」が採用されて竣工した。

 なお21年6月に長野県高森町に鉄構工場を新設すると発表している。飯田第1工場の機能を新工場に移転・集約する。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売

 貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。

 ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。

■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す

 中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。なお20年6月には長野県SDGs推進企業に登録された。

 中期経営計画では、目標値に22年3月期売上高1200億円(小売事業790億円、建設事業350億円、貿易事業58億円、その他2億円)、経常利益32億円を掲げている。

 小売事業は既存店売上を維持しながら、M&Aも積極活用してネット通販など販売手法の多様化を推進する。コスト面では新決済システムや物流改革による効率化を推進する。新規出店は3年間で売場面積4500坪拡大を目指す。建設事業は新製品開発や工場ロボット化による生産性向上、貿易事業は天然原料の新製品投入や販路拡大で収益力向上を目指す。

■22年3月期1Q減収減益だが通期増収増益予想据え置き

 22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期比4.5%増の1200億円、営業利益が2.7%増の33億71百万円、経常利益が0.6%増の35億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.4%増の21億円としている。7期連続最高益更新見込みである。配当予想は1円増配の21円(期末一括)としている。

 第1四半期は売上高が前年同期比13.8%減の260億23百万円、営業利益が75.4%減の3億36百万円、経常利益が70.4%減の4億25百万円、親会社株主帰属四半期純利益が75.9%減の2億37百万円だった。なお小売事業に含まれていた木造住宅分野を建設事業に変更した。

 小売事業は前年の巣ごもり特需の反動で4.3%減収、44.5%減益だった。建設事業は37.5%減収で赤字だった。前期の受注が第4四半期に集中したため、第1四半期は設計段階の工事進捗が中心だった。ただし受注は計画に対して順調な進捗としている。貿易事業は生活様式変化に伴う化粧品市場縮小や、前年の医薬品安定供給確保のための在庫積み増し特需の反動で26.3%減収、40.9%減益だった。

 全体として前年の巣ごもり特需の反動などで減収減益だったが、コロナ禍前の20年3月期第1四半期(経常利益2億78百万円)との比較では増益を確保した。

 通期予想は据え置いた。セグメント別利益の計画は、小売事業が前年の巣ごもり特需の反動で7.4%減益、建設事業が木造住宅分野を加えて12.8%増益、貿易事業が前年の在庫積み増し特需の反動で15.3%減益としている。第1四半期の進捗率はやや低水準だが、後半挽回して通期ベースで収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象

 株主優待制度は、毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続的に保有している株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈している。なお新たに300株以上の優待区分を新設し、21年9月末対象から実施(詳細は会社HP参照)する。また選択対象となる優待品を10点から13点に拡充した。

■株価は調整一巡

 なお新市場区分における上場維持基準への適合状況の一次判定結果で、プライム市場の上場維持基準に適合しているとの通知を受けたため、21年7月30日開催の取締役会において、プライム市場の選択申請に係る所定の手続きを進めることを決議した。

 株価は反発力が鈍く小幅レンジでモミ合う形だが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。8月20日の終値は1223円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS105円98銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の21円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS884円81銭で算出)は約1.4倍、時価総額は約243億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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