ファーストコーポレーションは調整一巡、22年5月期増収増益予想

 ファーストコーポレーション<1430>(東1)は造注方式を特徴として、分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。成長戦略として再開発事業にも注力している。22年5月期は完成工事が堅調に推移して増収増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は上値を徐々に切り下げる形だが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■造注方式が特徴のゼネコン

 東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。

 造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。大手を中心とする優良なマンション・デベロッパーである。

 品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。

 20年10月には、東京理科大学の認定ベンチャーであるサイエンス構造と、新たな免震集合住宅の工法として「ジーナス(ZENAS)工法」を開発し、建築構造物の「新構造システム」に関する特許および実用新案を共同出願した。

 完成工事高の収益認識は工事進行基準だが、不動産売上(マンション用地販売)によって四半期業績が変動する可能性がある。利益還元方針は、配当性向30%以上で経営成績や内部留保確保等を勘案して決定するとしている。なお21年6月23日に創立10周年を迎えた。

■年商500億円企業目指す

 中期経営計画「Innovation2021」では目標数値に、24年5月期売上高300億円(完成工事高184億円、不動産売上100億円、共同事業収入10億円、その他売上6億円)、営業利益24億円、経常利益23億50百万円、当期純利益15億95百万円、受注高210億円を掲げている。またROE(自己資本純利益率)20%以上、自己資本比率50%以上を目指す。

 将来像である年商500億円企業の実現に向けて業容の拡大と利益水準の向上に継続的に取り組むとともに、重点施策として中核事業(造注方式、建築事業)の強化、再開発事業への注力、事業領域拡大(大規模修繕、収益不動産など)による新たな価値創出、人材の確保・育成および働き方改革の推進に取り組む。

 再開発事業への注力では、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に共同施工者として参画し、20年11月に施設建築物新築工事を着工(JV受注、24年完成予定)している。前橋市内初の超高層免震タワーマンションとなる。21年4月には名称を「Brillia Tower」に決定し、販売活動を開始した。さらに他の再開発案件にも積極的に参画していく方針だ。

 また中期的な定量目標としては、完成工事総利益率13%以上、売上高営業利益率8%以上、自己資本純利益率(ROE)20%以上、自己資本比率50%以上を目指すとしている。造注比率向上と生産性向上による利益率の底上げ、内部留保の蓄積による自己資本の充実、手持不動産の売却および有利子の圧縮による財務体質の向上を図る方針だ。

 なお21年8月開催予定の第10回定時株主総会での承認を前提として、監査等委員会設置会社に移行する。また8月10日には、コーポレートガバナンスに対する取り組みとして、取締役会の実効性に関する評価結果、および取締役に対するトレーニング方針をリリースしている。

■22年5月期増収増益予想

 22年5月期業績(非連結)予想は売上高が21年5月期比26.7%増の265億円で、営業利益が3.2%増の17億20百万円、経常利益が5.7%増の17億円、当期純利益が5.0%増の11億82百万円としている。配当予想は30円(期末一括)としている。前期比8円減配だが、普通配当ベースでは2円増配となる。

 売上面は前期の好調な受注を背景として完成工事高が4.1%増と堅調に推移し、不動産売上が103.0%増と大幅伸長する見込みだ。利益面は不動産売上総利益率が18.8ポイント低下するが、完成工事総利益率が2.5ポイント上昇する計画としている。なお21年7月31日時点での受注実績は2件合計32億13百万円となっている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末の株主対象

 株主優待制度は毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈(20年11月末適用から変更、詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 株価はモミ合い展開で上値を徐々に切り下げる形だが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。8月23日の終値は752円、今期予想PER(会社予想のEPS98円01銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約4.0%、前期実績PBR(前期実績のBPS520円77銭で算出)は約1.4倍、時価総額は約100億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る