【アナリスト水田雅展の銘柄分析】朝日ラバーは下値固め完了感、16年3月期の大幅営業増益予想を評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 朝日ラバー<5162>(JQS)は自動車内装照明用ゴム製品などを展開している。株価は年初来安値圏でモミ合う展開だが、4月安値を割り込むことなく推移して下値固め完了感を強めている。16年3月期の大幅営業増益予想を評価して切り返し展開が期待される。

 自動車内装照明関連などの工業用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品(卓球ラケット用ラバー)、医療・衛生用ゴム製品(点滴輸液バッグ用ゴム栓など)、機能製品のRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。

 自動車内装関連の車載用小型電球の光源カラーキャップ「ASA COLOR LAMPCAP」や車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。車載用の「ASA COLOR LED」は高級車向けに加えて、小型車や軽自動車向けにも採用が拡大している。

 シリコーンゴムや分子接着技術をベースにした製品開発力が強みだ。新製品では分子接着技術を活用した機能製品RFIDタグ用ゴムの増産を進め、医療分野の新製品プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットの量産も開始した。

 またNEC<6701>のポータブルDNA解析装置向けマイクロ流体デバイスについては14年10月に量産を開始した。マイクロ流体デバイスは分子接着技術を活用した製品で、NEC向け以外の複数案件も商談が進行中のようだ。

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)14億85百万円、第2四半期(7月~9月)15億40百万円、第3四半期(10月~12月)15億21百万円、第4四半期(1月~3月)15億13百万円、営業利益は第1四半期55百万円、第2四半期1億01百万円、第3四半期50百万円の赤字、第4四半期8百万円だった。

 売上面は概ね順調に推移したが、プロダクトミックスの悪化や役員退職慰労引当金繰入額の計上で期後半の営業損益が悪化した。15年3月期の配当性向は18.0%、ROEは14年3月期比4.4ポイント上昇して9.6%、自己資本比率は同1.3ポイント上昇して39.3%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期比7.9%増の65億40百万円、営業利益が同2.9倍の3億30百万円、経常利益が同2.5倍の3億円、純利益が同42.2%減の1億90百万円としている。配当予想は前期と同額の年間13円(第2四半期末3円、期末10円)で予想配当性向は31.1%となる。

 売上面では、期前半は得意先における品質総点検による新車販売の後ろ倒し影響、在庫調整ならびに新規製品への切り替え時期が重なるため、自動車関連製品、機能製品、医療製品とも伸び悩むが、期後半には自動車関連製品の「ASA COLOR LED」や、マイクロTAS事業の開発製品の販売が増加する見込みとしている。

 利益面では、増収効果やプロダクトミックス改善効果に加えて、役員退職慰労引当金繰入額計上という特殊要因も一巡して、営業利益と経常利益は大幅増益見込みだ。純利益は特別利益の一巡で減益見込みとしている。

 14年5月発表の第11次3ヵ年中期経営計画(V-1計画)では、20年3月期を見据えた長期ビジョンを「AR-2020VISION」として、前半3ヵ年(15年3月期~17年3月期)を第1ステージ「V-1計画」、後半3ヵ年(18年3月期~20年3月期)を第2ステージ「V-2計画」としている。

 中期経営方針は、既存事業の質・量の継続的成長(国内事業は質的成長、海外事業は量的成長)、新市場・新分野への事業展開、20年に向けた事業基盤の強化・整備としている。

 そして第1ステージ「V-1計画」の目標数値として、17年3月期の売上高80億円(自動車分野37億円、医療分野13億円、ライフサイエンス分野16億50百万円、その他13億50百万円)、営業利益8億円を掲げ、設備投資計画は3期間累計で24億50百万円としている。成長分野への積極投資で中期的に収益拡大基調が期待される。

 株価の動きを見ると、調整局面が続いて年初来安値圏でモミ合う展開だが、4月の直近安値1010円を割り込むことなく推移して下値固め完了感を強めている。

 6月23日の終値1064円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円78銭で算出)は25~26倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS794円03銭で算出)は1.3倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、13週移動平均線が下向きから横向きに転じてきた。下値固めが完了して調整の最終局面だろう。16年3月期の大幅営業増益予想を評価して切り返し展開が期待される。

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