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マーチャント・バンカーズはモミ合い上放れ、22年3月期1Q黒字転換して通期再上振れの可能性
- 2021/8/30 08:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーチャント・バンカーズ<3121>(東2)はマーチャント・バンキング事業の不動産投資事業や企業投資事業を展開し、成長ドライバーとしてブロックチェーン・テック事業を強化している。22年3月期は大幅増益予想としている。第1四半期はマーチャント・バンキング事業の成長が牽引して黒字転換した。通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価はモミ合いから上放れの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開
マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。21年3月期の営業利益構成比(調整前)はマーチャント・バンキング事業が127%、オペレーション事業が▲27%だった。オペレーション事業は新型コロナウイルスの影響を受けた。
■不動産・企業投資
マーチャント・バンキング事業では不動産投資事業および企業投資事業を展開している。
不動産投資事業は、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有(21年3月期末時点で全国に25棟の不動産賃貸ビルを保有)し、年間約7億円の賃料収入を安定的に確保している。賃貸用不動産取得・入替によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保にも取り組む。
20年8月には柏舟投資(香港の柏舟国際諮詢の子会社)と日本での不動産開発や不動産投資に関して業務提携、20年10月には香港の中港日有効發展有限公司と日本における中国・香港・ベトナムの富裕層向け投資用分譲マンションの開発・販売で業務提携、20年12月には特別目的会社MBK医療投資を設立、21年4月には香港証券取引所上場会社のL&A社と業務提携した。
企業投資事業は投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。
■成長ドライバーとしてブロックチェーン・テック事業を強化
成長ドライバーとして子会社MBKブロックチェーンのブロックチェーン・テック事業を強化している。STO(Security Token Offering)によって決済・送金等の金融サービス、不動産流動化、資金調達などを展開する。不動産などの資産に裏付けされたMBKトークンによって安心・安全・透明な取引が可能になる。
具体的には、エストニア暗号資産交換所のANGOO FinTech関連事業、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームの不動産テック事業、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム事業、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)プラットフォーム事業を強化する。
19年5月エストニアで仮想通貨交換所CRYPTOFEXを運営会社するCR社を買収、19年7月仮想通貨交換所のブランド名をANGOO FinTechに変更、20年2月ANGOO FinTechサービス開始、20年5月MBKブロックチェーンがANGOO FinTech運営業務を受託した。
20年7月には、日本でセキュリティートークン関連のソリューション事業に取り組んでいるレヴィアスと、セキュリティートークン発行取引プラットフォームシステム関連業務での業務提携に基本合意した。また大手暗号資産交換所運営会社IDCM社と資本提携、および全世界での暗号資産関連業務での業務提携に関するMOUを締結した。
20年10月にはバルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH社)に対する出資比率を引き上げて子会社化し、ANGOO FinTech運営を移管してエストニアでの事業統括会社と位置付けた。エストニアを起点として、ブロックチェーン技術を活用した金融サービスや決済プラットフォーム事業を展開する。21年2月にはBFH社が、エストニアで暗号資産交換所「bitbaazi」を運営するinterakt techsol社と業務提携した。
21年3月には子会社MBKブロックチェーンが、Interaktと共同開発したブロックチェーンベースの不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」をリリースした。
21年3月には香港の子会社MBK ASIA LIMITEDにおいてトークン「MBK COIN」を発行するとともに、不動産売買プラットフォーム「MBK Realty」の海外投資家専用不動産取引プラットフォームを構築した。さらにエストニアの子会社EJTC社が、米国Nasdaqがバルト3国で運営するNasdaq Tallinn証券取引所に上場した。
21年4月には子会社MBKブロックチェーンが不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」を応用して、お宝グッズのNFT(非代替可能性トークン)化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」運営事業を開始した。
21年5月には、暗号資産のハッキングやマネーロンダリングに対するセキュリティ技術を手掛けるStudioMakyuと業務提携し、決済手段としての暗号資産を活用または検討する企業に対して、アドバイザリー並びにシステム販売・開発事業に取り組むと発表した。また子会社MBKブロックチェーンがシステム開発受託事業を強化するとリリースした。
21年6月には香港の子会社が発行するMBK ASIA LIMITEDについて、エストニアの暗号資産交換所ANGOO FinTechでの取り扱いを開始すると発表した。
21年7月には子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」にNFTコーナー「K&L#NFT」をオープンし、お宝グッズのNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」とともに、MBKコインを活用したシナジーサービスの提供開始を発表した。
21年8月には、エストニアの子会社EJTC社と連携し、エストニアの企業に対して、日本企業を対象とした投資やM&Aに関するアドバイザリー事業を開始すると発表した。第1号案件として、遠隔医療システム開発のVIVEO Health社の日本市場進出ための日本企業との資本提携に取り組む。また第2号案件として、医療関連アプリ開発のCognuse社の日本企業への投資に取り組む。
■オペレーション事業は活性化を推進
オペレーション事業は岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。なおホテル運営は撤退した。
連結子会社のケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化している。持分法適用関連会社のアビスジャパンはLED照明・節水装置の製造・販売・設置工事を主力として、空き家対策事業、電力小売事業、非接触式AI検温システムの販売も展開している。
20年7月には人工知能分野のiFLYTEKの日本法人AISと日本市場でのマーケティングで業務提携、20年11月にはアスミ建設と業務提携、21年3月には反社会的勢力データベース「minuku」のセナードと業務提携して企業のリスクマネジメントやコンプライアンスをサポートするシステムの企画・販売を開始、21年5月には邦徳建設(千葉県松戸市)と業務提携した。
■新中期経営計画で24年3月期営業利益10億円目標
21年6月発表の新中期経営計画「Develop the New Market」では、最終年度24年3月期の目標値として、売上高27億円(マーチャント・バンキング事業の不動産投資13億円、企業投資3億円、ブロックチェーン・テック4億円、オペレーション事業7億円)、営業利益10億円、経常利益9億円、経常利益率35.0%、当期純利益5億80百万円、ROE10%以上、自己資本比率30%以上、配当性向30%以上、1株当たり配当金7円を掲げている。
不動産投資事業およびオペレーション事業で得られる安定収益をベースとして、企業投資事業とブロックチェーン・テック事業(不動産テックプラットフォーム、メディテックプラットフォーム、NFTプラットフォーム)の拡大を目指す方針だ。
■22年3月期1Q黒字転換、通期予想は再上振れの可能性
22年3月期連結業績予想(6月28日に上方修正)は、売上高が21年3月期比62.1%増の26億50百万円、営業利益が2.0倍の4億50百万円、経常利益が2.6倍の3億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億30百万円(21年3月期は44百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の2円(期末一括)である。
第1四半期は、売上高が前年同期比4.0倍の12億28百万円で、営業利益が3億01百万円の黒字(前年同期は39百万円の赤字)、経常利益が2億87百万円の黒字(同57百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が2億17百万円の黒字(同64百万円の赤字)だった。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引して大幅増収となり、各利益は黒字転換した。
マーチャント・バンキング事業は5.8倍増収で6.5倍増益だった。賃貸不動産収益の安定的推移に加えて、営業投資有価証券(CN Innovations Holdings)の売却、および不動産投資物件(函館市の福祉施設)の売却で投資収益が大幅に増加した。オペレーション事業は41.7%増収で赤字縮小した。新型コロナ影響が和らいだ。
第1四半期の好調を受けて第2四半期累計および通期の連結業績予想を上方修正した。通期ベースでは従来予想に比べて黒字幅が拡大する見込みとした。なおANGOO FinTech関連の米ドル連動型ステーブルコインの売上計上は業績予想に織り込まず、現金化の都度、売上計上する予定としている。
修正後の通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が46.3%、営業利益が67.0%、経常利益が82.1%、純利益が94.5%と高水準である。通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。
■株価はモミ合い上放れ
なお17年9月発行の第15回新株予約権については行使期間を21年9月22日まで延長している。7月12日発表の自己株式取得(上限12万株・3600万円・取得期間21年7月13日~21年8月20日)は、8月16日時点で累計取得株式数が11万3000株となって終了した。
株価はモミ合いから上放れの動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。8月27日の終値は335円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円24銭で算出)は約41倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS123円80銭で算出)は約2.7倍、時価総額は約93億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)