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フライトホールディングスは急反発、22年3月期1Q黒字転換して通期上振れの可能性
- 2021/8/30 09:16
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
フライトホールディングス<3753>(東2)は電子決済ソリューションを主力としている。22年3月期は大型案件の納品完了、マイナンバーカード対応案件や無人自動精算機向け決済端末の拡販などで増収・黒字転換予想としている。第1四半期は顧客都合で前期から期ズレとなっていた大型案件の納品が完了して黒字転換した。通期予想は上振れの可能性がありそうだ。なお20年9月にりそな銀行と締結したコミットメントライン契約を更新し、変更後の契約期限を22年9月としている。株価は年初来安値圏から急反発の動きとなった。出直りを期待したい。
■電子決済ソリューションが主力
子会社のフライトシステムコンサルティングがシステム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、子会社のイーシー・ライダーがB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。
21年3月期のセグメント別売上高構成比はC&S事業が22%、サービス事業が72%、ECソリューション事業が6%だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。
■サービス事業は電子決済ソリューションを展開
サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを主力として展開している。
ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。
Incredistシリーズは、EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドの認定が完了している。
国内電子マネー決済では19年7月にSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了し、21年春からは近畿圏でスルッとKANSAI協議会が展開しているPiTaPaにも対応している。
戦略製品として、据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist TrinityおよびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。またIncredist Premiumの後継機としてマイナンバーカード読取に対応した次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱを21年1月から販売開始した。マイナポイントや健康保険証のマイナンバーカードへの統合などで需要拡大が期待される。
Android携帯を決済端末に変える小・中規模事業者向けTap to PhoneソリューションTapion(タピオン)は、21年後半から市場投入予定である。
自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するため、マルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。
■電子決済ソリューションはキャッシュレス化や非接触が追い風
電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となる。改正割賦販売法施行によって磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられたため、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となっている。また国策として非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)の普及促進が図られている。さらに非接触が新型コロナウイルス対策としても注目されている。
こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。
18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。さらに中堅カード会社との接続など決済パートナーの拡大を推進する。
19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始した。GMO-FGを通じた決済ソリューションとして自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を推進している。
19年7月には、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOVの車内決済システムとしてincredist Premiumが採用された。
またキャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速している。
■ロボット関連も強化
C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。
ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。
■22年3月期1Q黒字転換、通期も黒字転換予想、さらに上振れの可能性
22年3月期連結業績予想は、売上高が21年3月期比14.5%増の39億円、営業利益が2億80百万円の黒字(21年3月期は2億69百万円の赤字)、経常利益が2億50百万円の黒字(同2億75百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が2億10百万円の黒字(同2億82百万円の赤字)としている。
サービス事業において納期変更となった大型案件の納品完了、マイナンバーカード対応案件や無人自動精算機向け決済端末の拡販などで増収・黒字化予想としている。有望案件が目白押しであり、中期的に収益拡大を期待したい。
第1四半期は、売上高が前年同期比18.8%増の10億67百万円、営業利益が1億84百万円の黒字(前年同期は1億17百万円の赤字)、経常利益が1億79百万円の黒字(同1億16百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億38百万円の黒字(同1億17百万円の赤字)だった。
C&S事業は売上高が54.9%増の1億89百万円で、営業利益が15百万円の赤字(同1億09百万円の赤字)だった。前期にプロジェクト損失を計上した反動で赤字縮小した。サービス事業は売上高が8.6%増の8億17百万円で、営業利益が3.3倍の2億75百万円だった。顧客都合で前期から期ズレとなっていたマルチ決済装置Incredistの大型案件の納品が完了した。ECソリューション事業は売上高が2.6倍の60百万円で、営業利益が4百万円の黒字(同6百万円の赤字)だった。増収効果で黒字転換した。
通期予想は据え置いた。サービス事業における大型案件の納品完了、マイナンバーカード対応案件や無人自動精算機向け決済端末の拡販などで増収・黒字転換予想としている。第1四半期の進捗率は売上高27.4%、営業利益65.7%である。通期予想は上振れの可能性がありそうだ。有望案件が目白押しであり、中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は急反発
株価は年初来安値圏から急反発の動きとなった。マイナンバーカード関連が材料視されたようだ。底打ちして出直りを期待したい。8月27日の終値は585円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS22円21銭で算出)は約26倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS45円33銭で算出)は約13倍、時価総額は約55億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)