【どう見るこの相場】9月相場は実りの秋か事変の予兆か?硬軟両様ならプラスαの株式分割銘柄に優先順位
- 2021/8/30 11:33
- 今日のマーケット
いよいよ9月、秋相場である。この季節は、諺が「天高く馬肥える秋」と教えている。上空は澄み渡り空気は爽やかで食欲は旺盛となって実りの時節到来を讃えるものだ。株式相場も、ぜひ「株高く投資家肥える秋」と願いたい。
しかし、この諺は、もともと中国ではまったく逆の意味合いを持っていたと諺辞典にはある。中国(漢)の隙を窺っていた北方の異民族が、馬が肥える秋に季節が移ると必ず中国に侵入してきて事変が起こることが繰り返されており、これに警告を鳴らしていたのだという。株式相場も、この中国の昔、昔の故事通りにこの諺をネガティブに解釈するべきなのか、それとも現在の日本流にポジティブにとらえるべきなのかは、これから出てくる材料やその落ち着きどころの相場環境次第となりそうである。
まず相場環境として月初には、国内政局動向がある。自民党の総裁選挙の日程が、9月17日告示、9月29日投開票と決定されたが、立候補者が岸田文雄前政調会長ら続出が観測されている。昨年9月の安倍後継では、菅現総裁の圧勝となったが、このところの国政選挙や横浜市長選挙などは連敗で、新型コロナウイルス感染症対策の不手際などから内閣支持率も過去最低となっており、そうした逆風下、菅総裁の再選があるのかないのか、その場合、任期満了に伴う衆議院選挙で与野党の勢力図に変化が生じるのかに生じないのかによって株価も変動を受けることになる。
ここまで株価は、内閣支持率の過去最低への急降下にも横浜市長選挙の大敗にも鈍感で、下値抵抗力を発揮しむしろ上値を試す展開となった。しかし自民党の総裁選挙以降の政局動向によっては、巷間ハヤされる「政界の一寸先は闇」で黄色信号が灯らないとも限らず、それなりの下準備は怠れないはずだ。
後半には、9月21日に開催されるFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)が控えている。心配された前週末27日のジャクソンホール会議のパウエル議長の講演では、同議長は、テーパリング(量的緩和の縮小)の前倒しも利上げの早期化にも言及しないハト派的な内容で事なきを得て、ダウ工業株30種平均は242ドル高と急反発、週明けの東京市場も、追随してジャンプ・アップのスタートが予想される。しかし9月のFOMCでは、テーパリングの前倒し、利上げ早期化の発言を繰り返すタカ派の連銀総裁も少なくなく、揺り戻しは想定範囲内となる。
■「安心・安全」を目指す攻めと守りを両立させる投資スタンスで
ということから、9月相場は、バットをフルスイングする「硬」か、クセ玉で打者のタイミングを外す軟投投手の「軟」か気迷いが強まるとしたら、「安心・安全」を目指す攻めと守りを両立させる硬軟両様の投資スタンスが望ましくなる。幸いなことに、この9月末は、3月期決算配当の中間配当などの権利付き最終日となる。インカム・ゲインを図りつつ、キャピタル・ゲインも狙う投資戦術も、あるいは可能としてくれるかもしれない。いやキャピタル・ゲイン狙いが頓挫しても、配当利回りが下値をサポートしてくれることも期待できる。
例えば日本郵船<9101>(東1)である。同社株は、今3月期業績のすでに2回目の上方修正と年間700円への増配を発表し、上場来高値8570円まで急騰して7170円安値まで調整したが、前週末には再び最高値を窺った。配当利回りが、8%台央と東証第1部配当利回りランキングのトップで、PERも、わずか2倍台と超割安となっていることがベースとなっている。
そこで今週の当コラムでは、全員参加型の日本郵船にならってというのは畏多いものの、9月末に株式分割の権利付き最終日を迎える銘柄に注目することにした。該当する銘柄は、8月末現在で、TDK<6762>(東1)、トヨタ自動車<7203>(東1)の主力大型株や9月16日を基準日にするグローバルウェイ<3936>(東マ)を含めて27銘柄を数える。TDKもトヨタも投資採算的には割安であり、なお上値トライの余地は残しているのは違いないが、なにせ株価が動意付くのは市場全体のボリュームが大きく盛り上がる必要がある。硬軟両様の投資スタンスでいえば、フルスイングの「硬」である。
一方、守りつつ攻める「軟」となれば独自に動く中小型株、それも株式分割に業績の上方修正や増配などの「プラスα(アルファ)」付きなら申し分ない。これに該当する銘柄は、すでに年初来高値まで買い進まれ人気化しているケースもあるが、まだまだ投資採算的には割り負けが目立つ。分割権利取りでも、分割権利落ち後でも一定程度の値幅効果を期待して満を持したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)